04 ラストダンジョン
「つまり、僕は今『勇者』たちに追われる身なんだ。移動中に雷の魔法を受けてね――あ、僕の家に着くよ。続きはそこで話そう。」
神様になったという話の次が、魔王になった、とは。現実離れした話ばかり。
ここはやっぱりゲームの世界なんじゃなかろうか。ネオはここを現実と言っていたが、自分で確かめる方法はないかな。
そんなことを考えながら、ネオの指さすほうを見た。行先を聞いていなかったが、ネオの家だったのか。
いつのまにか険しい山々は飛び越えていたのだろう、低い山に囲まれた盆地の上空にオレたちはいた。
ネオは、山の一つを指さしているのだが――
頂上のあたりに、円柱形の塔が四隅に生えた、長方形で石造りの建物があった。そしてそれは、三重の石壁に囲まれている。中央に近い石壁ほど背が高いようだ。
「家というより、お城に見えるんですが。」
「このブラックドラゴンと一緒に住んでいる城だよ。誰も住んでいなかったから、使わせてもらっているんだ。」
ドラゴンが急降下をはじめる。
体が浮くような感覚に襲われ、思わずネオにしがみついた。
ネオは微動だにしない。慣れているな。
ゲームですらドラゴンに乗るなんてチートはできないのに、どうやったら……ん、チート?
そうか、もしこの世界がゲームなら、やってはいけないことがいくつかあるはずだ。
流石に、チートはできないが――
ドラゴンは、山の頂上に見えた建物の前に降りた。
ネオは素早く降り、下からこちらに手を差し伸べてくる。紳士だ。
オレはその手を取って地面に降り立ち、そのまま逆の手でネオの手首を掴む。
不思議そうな顔したネオをよそに、オレはその腕を引っ張り、
ネオの手のひらを自分の左胸に押し付けた。
ぐりぐり。
ネオの手はゴツゴツして固いが、それを押し付けられている胸のほうは、変形はするが全く痛くはない。『マコ』の防御力が高いからだろうか。
あたりまえだが、気持ち良くも無い。触られているという感覚がするだけだ。
4、5秒くらいで、不思議そうな表情のまま、ネオの顔が真っ赤になった。
そして、勢いよく手を引いた。
「ななな何をするんだっ!マコちゃん!」
「BANは無いのかなと思ってですね。」
――『BAN』。ゲームのなかでチートなどの不正行為をすると強制的に接続を切られるのだ。
『スプリームファンタジー』は猥褻行為も禁止されていて、卑猥な言葉を連呼するだけで、しばらくゲームができなくなる。
もう期待はしていなかったが、やはりBANすら無さそうだ。いや、胸を触る程度では猥褻行為に含まれないのかも知れないが、これ以上はオレがしたくない。
「ここは現実だって言ったじゃないか!」
照れているのか怒っているのか、どちらかは分からない。
「ネオさんの話が現実離れしすぎてるから、自分で確認したくなったんです!」
とりあえず、原因はネオにあるということにしておいた。
「うう。と、とにかく中に入ろう。」
勝った。ネオは建物の入り口のほうへ早足で行ってしまった。
なんたる純真さだ。からかいたい衝動に襲われるが、まだ色々聞きたいことがあるのに、機嫌を損ねてはよくない。
おとなしく、玄関までついていこう。
足元は石畳だが、割れたところもある。今更、自分が裸足であると気づいた。
建物に近づいていくと、かなり古い建物であることが分かってくる。
壁はところどころひび割れていて、だいぶ苔むしている。
窓もあるが、ビンゴゲームのカードのように規則正しく穴が開いているだけで、ガラスも装飾も無い。蔦が壁を伝って、窓から中に入っていってしまっている。縦にならんだ窓の数からすると、三階建てだろうか。
2メートル強ぐらいの高さの両開きの扉の前で、ネオが待っていた。
段差もひさしもなにもない入口だ。
城に、ドラゴンと、魔王。ゲームならばここがラストダンジョンということになるのか。
こういった、機能性だけを考慮した建物は嫌いではないし、蔦と苔に覆われている石壁の雰囲気は結構好きだ。
でも、せっかくのファンタジー世界なのだから……
「もっと豪華に飾って、『ここがラスボスの居る城だぞ』って雰囲気を出しましょうよ。」
「だから、この世界はゲームじゃないんだってば!」
とりあえずお約束(?)。お城は、ロンドン塔をすごく簡素にしたものをイメージしました。




