【第17話】複雑なヒロイン達
布団の上で青白い光を放つ画面と、少女は睨めっこをしていた。
……なんで素直になれないんだろう。
そんな気持ちが溢れかえり、泣きそうになる。
結月は、昔から朝霧のことが好きだったが、朝霧の前でその気持ちを素直に伝えたことがなかった。
嫌われたくないという気持ちと、更に仲良く恋人としていたいという気持ちが葛藤を起こす。
──行き場のない感情。
葛藤の末、自己嫌悪が起こる。だが、そんな少女の気持ちはどこにも放つことができず少女を更に苦しめる。
「公安委員会の子、誰か誘わないと……」
だが、少女はそんな気持ちに振り回されている暇はなかった。
朝霧に公安委員会の子を誘ったと宣言した以上、少なくとも1人くらいは来させないと……。
無料トークアプリで公安委員会のグループを開き『明後日海に行ける人いる?』と、送信する。
次々に返信がくるが、『明後日は無理』とか『ごめんね』などという返信しか来ない。
少し諦めかけていると『私いけるけど』と返信がくる。
だれ!? この際誰でも良い!
だが、画面のユーザー名を見た瞬間背筋が凍りつく。いや、その場が凍りついたといった方が正しいかもしれない。
──黒崎 氷花。
そんな名前がそこにはあった。
こいつは……。
だが、このチャンスを逃せばハヤテと二人っきり……。つまり魂胆見え見えの展開になることは火を見るより明らかだ。
返信の言葉は決まっていた。
『じゃあ明後日よろしく』
そう打ち布団の中に潜り込む。
これじゃあ私がハヤテと黒崎の仲介役になるようなもんじゃない!
イラつきが虚しさへと変わり、涙へと変換される。
……はぁ。
結月がそんな感情に陥ってる頃、黒崎は、部屋のテーブルにスマホを置き眠りにつこうとしていた。
明後日が早く来るようにするためにも寝るのが一番と考えたからだ。
──夕霞さんが海に一人で行くはずがない。
つまり朝霧がくるであろうということに黒崎は感づいていた。
黒崎は朝霧のことが好きであったが、祖母の雪華に『あやつだけは認めん!』と強く言われ、以来自分の気持ちを押し殺して生活していた。
だが、それでもたまに、能力を持てない彼が……辛そうな顔もせず、逆に楽しそうに生活しているのを見ると、惚れてしまう。
──自分には出来ないことをしている人に惚れるという説は本当だった。
黒崎は、雪華の言うとおりに生活を送っている。
だから自分の気持ちを押し殺すというのに慣れている。
だが、慣れていても辛いことは辛い。
朝霧を好きになれないというのは辛さの限界に達するほどだ。だからこそ今回の海の件は見逃せなかった。
朝霧と一対一で行くとなれば雪華も止めるが、夕霞という付き添いがいれば話は変わる。
──これが反抗期ってやつなのかな?
そんな疑問を抱きながら、黒崎は、深い眠りについていく……。




