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ハート恋ントス  作者: 雨尾 秋人
番外編
11/13

「ばんがいへん」 真夜中の太陽

なんか一番読者が多いので、短編の一つでもあげようと思いました。

◆1

 九月二日。今日で夏休みという長期休日が終わるのだけれど、あたしは机と睨めっこうを朝からしていた。正確には、宿題。「おわんねーよ」思わず嫌味を漏らす。思わず机の端側へ置いてある携帯を手に取り、愛に「宿題終わんない」とメールを送ると、すぐさま「知らないです」と返って来た。

 「さすがなだな優等生」絶望に浸っていると再度、携帯が音を立てた。なんじゃ、と苛立ちを覚えながらメールを開くと、愛から「今日の夜お祭りなんだけど、行かない?」という内容だった。先程送ったメールちゃんと読んだか?、と遊ばれている様な感覚を覚える。


「いや、宿題だから」そう送ると、すぐさま返信が来た。

『一緒に来てくれるなら、宿題手伝うよ?』


 一瞬で私は笑顔になる。


◇2

 結局私は鴨よりも多くの宿題をやらされ、宿題が終わった時は何故か私の方が達成感に身を浸かっていた。でも、鴨が「愛があたしと友達で良かったー!」と喚きながら抱き付いて来たので思わず紅潮し、自分に良くやったと褒めた。

 私もまだ甘いなあ、と息を吐く。私もまだまだ甘いなあ。


◆3

「やっぱりあたしの学校カップルいるんだろうねー」


 あの先輩にどっぷりな同級生とか、とあたしの脳内に浮ぶ。愛は「そ、そうだね」と何故かぎこちなかった。何を今更緊張する事があるのだろうか。どうやら今のあたしの発言に照れている様だった。何故だろうか。

 首から掛けているカメラを持ちながら、愛が「一枚いいですかね」と訪ねて来た。「可愛く取るならな」あたしも気取りながら鼻を高くしてピースサインを取る。カチャ。

 ここの夏祭りは毎年、駅前で行われており、あらゆる屋台が並んでいてなかなか規模が大きい事で有名だった。「それじゃ、いろいろ回りますか」「そうですね」

 



 屋台に挟まれた道を優雅に歩いていると、いろいろな匂いが鼻に付いた。リンゴ飴だとか、綿菓子。いろいろ匂いが混ざった香りが、充満していた。「お腹減りますなー」あたしがそう呟くと、愛も「ますなー」と真似ながら言い返して来た。


「いらっしゃいやせー」


 若い男性の声が聞こえ、左にあった屋台を見ると、塩が振られたキュウリが割り箸に刺さって並べられていた。「一本漬けなんてどっすかー」

 そう吐いている店員の方へ目をやると、金髪の男性がキュウリに塩を振っていた。何故か瞼を閉じており、開く気配すらない。いろいろ大丈夫なんだろうか、と脳裏で呟くと、心が読まれたのか「ちゃんと見えてるよ」と返して来た。「キュウリ、食べる?」

 仕方なくあたしは「じゃ、じゃあ一本」と二百円を財布から取り出し、渡した。「あ、私も欲しい」愛があたしの横に並び「一本ください」と財布を取り出している。


「まいどー。宿題は終わったかい?」

「まぁナントカ」

「僕の子供は今も家で頑張ってるよー。名前はマコトって言うんだけど。知らないよねえ・・・?」

「知らないです。大変ですね」


 何故だか、愛が仲良くなってしまった。それから「もう一本ください」と新しいキュウリを加えながら愛が戻って来た。「愛って、そんな人だったっけ?」

 愛は「最近からかな」と意味深っぽく、嬉しそうにそう吐いた。


◇4

 あの日鴨がシュートを決めてから、鴨は暗い表情を見せなくなった気がする。私はその鴨を見ていると、何故か気楽になった。心から笑える様になったと思うし、鴨と一緒にいる、という事にワクワクもするし、ドキドキしている。煩悶も爛れる様に剥れて行き、こうして鴨と祭りを回っている。

 「最近さ」鴨がリンゴ飴を咥えながら私の顔を覗いて、こう訊ねて来た。「愛、幸せそうだね」唐突にそんな事を突かれ、一瞬困惑したが、すぐに頬が緩む。「そうかな?」

 それは鴨のお陰なんだよ、とは言わない。正確には、言えない。たとえ眩しい日が私に差したとしても、そんな事を吐くのは躊躇してしまう。それが私なんだな、と素直に認める事にした。


「鴨もじゃん」

「あ、分かってた?」


 私より前の位置を歩いていた鴨が微笑みながら振り向いて来た。その隙を狙う様に私はカメラのレンズを覗いた。


◆5

 それは愛のお陰なんだよ、とはあえて言わない。何せそんな事を真剣に吐いたら、確実に変な境界線が生まれる筈だ。あたしと愛は友達だ。保育園の頃から一緒に過している、親友だ。あたしはそう信じている。

 愛の方へ首を曲げたら、また撮られた。「あたしは世界一のカメラマンだからね」と大それた事を嘯く。あたしはそんな愛を見ながら、戻って来たなあと安堵を得た。


「そうだね」

「そうだよ」


 今年の夏休みはもう終わるけれど、愛と過せたこの時間。この瞬間だけで、満足だった。バスケットボールが舞う。息を吸う。空を見上げ、息を吐く。

 

「来年も、こんな奇麗な星空を見たいね」


 もちろん、二人で。                 END 

 

はい。ちなみにキュウリ漬けの店員は、魔法少女の方で出てくる椎名さんです。 でもあの作品とは世界が違いますので、パラレルワールドでの椎名さんです。

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