「適正」に生きる社会
人工知能もといAIが発展し、現代工学が一新された第三次産業革命の到達点。
それは、人間の適正化。
AIが極端に発達した結果、業種を問わず、多くの人間が職を失う。
再雇用が見込めないこの社会で職を失えば、自然に社会信用や衣食住を失うわけで……行き場を失った人々は身を寄せ合い、スラムのような集落が各地に形成した。
特に、その問題が顕著に表れたのが都心部だ。AIの発達により都市全体の機械化が進み、独自の発達を遂げ続ける都市とは裏腹に、その郊外では数百万人規模という大規模なスラム地帯が形成されていた。
一方で、AIの隆盛に適応した人々は莫大な財を成した。ほぼすべての物流業、製造業、小売り業やサービス業が人間に比べ、圧倒的に費用対効果と時間対効果の両面に優れるロボットに成り代わったのだ。 必然的にそれらの利益は上層部やその関係者に集中する。
また、彼らはこの現状を維持した。自分たちの財が青天井に増していく一方、多くの人々は困窮に喘いでいて、その日の食を確保するにもままならない。彼らはそのたまらない優越感と安心感に浸り続けてしまった。
そして、ある事件を口火に各地で暴動が始まった。
暴徒によるテロ行為は隆盛を極め、その牙は政治家や経営者などの著名人に向かった。
その理由は単純で、財産を保有して、かつ名前や素性が広く認知されているためだ。また、貧富二極化のこの時代、彼らは持たざる者たちから、多くのヘイトを買っていたのも理由の一つ。
数多く勃発したテロ行為に歯止めをかけるべく、彼らは一つの決断をした。
時代の波から、人々が尊厳を失わないよう、彼らは持たざる者たちに職を与えた。
それは、ただの職ではない。出自や能力、人生の履歴などの客観的なデータから個人の潜在能力、いわゆる才能を測り導かれた、何物にも侵害されない適切な職、”天職”だ。
このAIが隆盛する超情報社会だからこそ為せる御業に不満の声が数多く上がるが、その労働に対して等価以上の賃金を与えることで、これを抑制。また、与えられた職に対し、予測通りにポテンシャルを発揮したことで、人々はやりがいという名の充実に浸っていく。
いつしか人々は与えられる既定路線の人生を歩むことに違和感を抱かなくなり……
――そして、何代にも渡って、人々が適正に生きる社会が享受されていく。




