急戦開始
「チッ、 なんで分かったの? 五百年前の魔族戦争で活躍した教科書にも載らないエルフの名前を知っているなんてあなた何者なの?」
ラミレーナはすでにお嬢様口調から普通の女口調となり不機嫌な顔でカリュゲドゥスを睨みつけてきた。
「お前、偽の賢者ルイマンの同類か?」
急な表情の変化と口調の変化ににカリュゲドゥスはいきなり態度を変えた偽物の賢者ルイマンの事を思い出した。
「チッ、ジェクーあの子何をしているの? もしやと思ったけど、あなた遠雷の魔王カリュゲドゥスね? ゼーガ王国のサルラン砂漠の闇闘技場に貴方の魂を観測してジェクーが張り切って始末に向かってたから覚えているわ。 そして一週間前に帰って来た時に、報告であなたは死んだって聞いたから今度は私がセルト冒険者学院に潜入してテルミシアの動向を監視と学生達の成長妨害をしようと思ったけど失敗ね」
髪をかきあげながら偽物のラミレーナはカリュゲドゥスを見てくる。
「どうするの? 呪詛魔力を持ってるあなたでもわたしとやるのはきついんじゃない?」
偽物のラミレーナは指パッチンすると足元から赤い魔法陣を発生させて魔法陣からまるで蛇の様にうねる鎖を生み出した。
「これ見た事あんでしょ? ジェクーが笑いながら出してた奴と一緒。 情けで教えておくけどこれは人の魔力を封じて、魔法陣の使用者の魔力回復も行える禁術の一種スカーレット・ドレインチェーン。 これ以上は教えてあげない」
「そうかありがとう礼を言う。 ついでに言うとこのまま帰っていただけると嬉しいのだがどうだ?」
カリュゲドゥスは冷や汗を流しながらもトラウマというべき赤い鎖に足が震えながらも己を奮い立たせて目の前の倒すべき敵を見据えた。
「いやよ」
偽物のラミレーナは手を突き出すとスカーレット・ドレインチェーンが一斉にカリュゲドゥスに対して襲って来た。
「うおぉぉぉぉぉ」
咄嗟に魔力を贅沢に消費してシルガを八枚ぐらい重ねて合わせてスカーレット・ドレインチェーンの進行を防ごうとしたがカリュゲドゥスのシルガを貫通して今にもカリュゲドゥスの命を奪わんと迫って来た。
「嘘だ!?」
カリュゲドゥスは目の前に広がる光景を信じられず絶句して慌ててシルガを解除して右に飛んで鎖の直撃を回避した。
「魔力ご馳走様」
偽物のラミレーナは舌なめずりしながら今度は手の平に炎の球を発生させながらカリュゲドゥスに近づいて来た。
「おい、スカーレット・ドレインチェーンは使わなくていいのか?」
迫る脅威にカリュゲドゥスは、苦笑いを浮かべた。
「別に? もうお腹いっぱいカリュゲドゥスの坊やから魔力いっぱい貰ったから別にいいわ。 さよなら」
「ふん!!」
偽物のラミレーナの放った炎をカリュゲドゥスは全力で殴り炎を霧散させた。
「あら。 すごい腕力ね?」
「なっ!?」
カリュゲドゥスが炎を霧散させると目の前には偽物のラミレーナが五人ぐらいに増えており絶句した。
ウェイラと比べると三人少ないがシルガで魔力を消費したカリュゲドゥスには悪すぎる戦況だった。
「さぁいくわよ?」
「ラジュ」
「ビキバガ」
「トムド」
「ユターブ」
それぞれの偽物のラミレーナが炎、雷、風、氷の魔法を放ちカリュゲドゥスの命を奪わんとした。
「くっ」
カリュゲドゥスは魔力消費を抑えるべく避けようとしたが足が動かなかった。
「なっ!?」
なんと右足にスカーレット・ドレインチェーンがいつのまにか巻きついておりその場を動かなかった。
「終わりよ」
カリュゲドゥスの命を奪わんと魔法が迫る。
それをなんとか防ごうと雷の魔法やシルガを出そうとするが小石程度の大きさの雷と魔力の盾しか出ず、足に力が入らなくなりそのまま地面にへたり込んだ。
「うわぁ」
カリュゲドゥスは目の前の光景が信じられず頭が真っ白になったその時だ。
「まちぃや」
「ラトニヤ!」
「シルガ!」
目の前が灰色と緑一色に染まる。
「カリュー君無事!?」
「ほんまギリギリやったで全く」
「無事!?」
「ウェイラ? ロッド? ラーシャ?」
カリュゲドゥスの目の前にいきなりウェイラとロッドそしてラーシャが現れてカリュゲドゥスは驚きのあまり瞬きをした。