夢絶える者 6
06と女性が一階に下りると、男性が強張った表情で06を見た。
「あなた…?どうしたの…?」
男性の様子がおかしいことに気付いた女性がおずおずと尋ねる。男性はしばらくの間、沈黙を貫いていたが、やがて口を開いた。
「…君、機体06だろう。」
男性は06に向けていた視線を鋭くさせる。06は表情を即座に取り繕ったが、かなり動揺していた。
「…なにかの間違いなんじゃないでしょうか。」
06は困惑した表情で男性に言う。
「ハッ!あくまでシラを切るつもりなんだね。…本当に小賢しい奴らだ。」
苛立たしげに男性は吐き捨てる。そして机に置いていた新聞を手に取ると、06に突きつけるようにして、ある紙面を見せてきた
「たまたま新聞に機体の写真が載っていたものでね。見ていたら、君と同じ顔をしている機体があるじゃないか!凄く驚いたよ。」
意外そうに男性は言うが、その視線はやはり冷たい。
「君が知ってようが知らなかろうがどっちだって構いやしないが、生憎この地域では機体は見つけたら解体する、と条例で定められているんだ。」
06は先程から喋らない女性の方をちらりと見る。そこには06から距離を取り、怯えたような表情で殺人鬼を見るかのような視線を06に向けている女の姿があった。
「君達機体は人間のことを微塵も考えない。自分達がどれだけ残酷なことをしているのか考えもしない。君達はもっと自分達の犯してきた罪を知るべきだ!」
男性は声を荒げる。
「…そうだ…これは正義なんだ…使命なんだ…君達を壊すことが世界平和に繋がるんだ…」
ブツブツ呟きながら男性は自身の頭を掻きむしる。一種の防衛本能のようなものが働いたのか06は男性から逃げるようにして後ずさる。男性の目には生気が宿っていない。
「ど、どうせ、あの子供もあんたがどこかから攫ってきたんでしょ…!きっとそうだ…!そうに決まってる…!」
突然女性がヒステリックに06に叫ぶ。その言葉に06は動きを止めた。
「あの子もなんて可哀想!機体みたいな悪魔に目をつけられて!」
女性は耳に響く声で06とミツルのこれまでのことを好き勝手捏造して06を罵倒する。06は「それは違う!」と否定したかった。どれだけ自分が色々言われようとどうでもよかったがミツルとの出会い、関係を否定されるのは嫌だった。
男性がフラフラとした足取りで、近くに置いてあった斧を振りかざす。06はその斧を辛うじて避けるが、如何せん小屋は広くない。移動範囲は限られている。更に言うと男性も女性も、恐らく何も考えず06に突っかかっている。そのため動きは愚鈍だが、次どこから攻撃を仕掛けてくるのか非常に予測しづらかった。
「…ざ、懺悔、懺悔しろ…機体みたいな…ゴ、ゴミが、なに、なにのうのうと…!」
斧を避ける。次はどこに行けば…と06が辺りを見渡した時、女性の姿が見えなくなっていた。
(…!うしろか!)
06が後ろを振り向いた時、女性が掲げた重石が06の頭目掛けて振りかざされた。
06はそれを見て、失敗した、と思った。