夢絶える者 5
かなりの時間、歩いたような気が06にはしていた。しかし宿らしき宿は見当たらなかった。最初の何軒かの宿で全てだったのだろう。まばらにいた人も、もういなくなっていた。
「…運が悪ぃな。」
多分ミツルは既に風邪を引いてるだろう、と06は苦笑する。
(…野宿になりそうだ。)
06は溜息をつき、なるべく街から離れた場所に移動することにした。
一歩一歩、確実に06は進む。街はもう随分遠いところにあった。06が更に進むと、ふと灯りが見えた。それも窓から漏れているような灯りだ。06は後ろの景色を見る。街はもう見えなくなっていた。
06は導かれるようにして、その灯りに近付く。ここまで街から離れている場所なら機体への恐怖心はまだ薄いのではないか、という希望を込めて。
案の定、灯りは小屋の窓から漏れていた。06は大きく息を吸ってドアをノックした。
「…はい?どちら様でしょうか?」
そうしてドアから顔を覗かせたのは四十代ぐらいの人間の女性だった。
「…こんな夜分に申し訳ないのですが、一晩泊めていただけないでしょうか。生憎この雨で宿にも泊まれなくて…。」
06はなるべく丁寧に女性に話しかける。女性は困惑したような表情をしていたが、06の背中にいるミツルを見て
「どうぞ中に入ってください。」
憐れむように06達を迎え入れた。
小屋の中には、女性と同じく四十代ぐらいの男性がいた。男性は読んでいた新聞から顔を上げると、ずぶ濡れの06とミツルを見てギョッとしたような表情で、06に声を掛けた。
「一体どうしたんですか、そんなに濡れて…それに服もかなり汚れているようですし…。」
「いやいや、泊まる場所がなく路頭に彷徨っていたものですから…。」
警戒されないように06は普段よりも優しい声色を出す。そのせいか女性と男性の視線は同情的だ。女性が06にタオルを差し出す。
「ありがとうございます。」
「あの…ずっとおんぶするのも大変でしょう?二階のベッド、お貸ししますよ。」
女性はそう言って06を二階に案内する。
「どうぞ、こちらに。」
柔和に笑う女性に、06は確認をとる。
「この子、服結構濡れてるんですけど大丈夫ですかね?このまま寝かせちゃって。」
「昔、私の子供が使っていた服があるので、そちらをお貸しします。」
ちょっと待っててくださいね、と言うと女性は階段を下りる。06は女性の背中を見送ると、深い溜息をついた。
(疲れた…。)
本来疲れないはずの機体ではあるものの、06は精神的にかなり疲労していた。
「お待たせしました。」
女性は子供用の寝巻とバスタオルを持ってきた。06はバスタオルを受け取ると、ミツルの服を脱がせ、体を拭いてやる。そして女性から寝巻を受け取りミツルに着せて、ベッドに寝かせた。
「本当に助かりました。ありがとうございます。」
06が深々とお辞儀をすると、女性は少し照れたように「いえいえ」と言った。




