表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
00  作者: 佐々木 青
序章 彼方の夢
12/23

夢絶える者 4

 何軒か06は宿を訪ねるが、天候が急に雨になったこともあり宿は全て満室だった。

「どうするかなぁ…。」

 06は眉を顰め、頭をポリポリ掻く。その反動でミツルがずり落ちそうになったので、慌てて06はミツルを抱え直す。このままでは恐らく野宿になってしまう可能性もある。それを危惧した06はミツル用に毛布とタオルを買っておくことにした。

 店に入ると、06の服の汚れを気にしているのか店員がちらちらと06を見ていた。06はその視線を物ともせず、ミツルを店の待合スペースに下ろし、手際よく毛布とタオルを買うと再びミツルをおんぶし、外に出た。

 雨はなかなか止まない。06はそれにうんざりしながら、再び歩き始めた。

 黒髪が濡れ、雫が頬を伝う。06にはその感触が鬱陶しくて仕方がなかった。そしてその感触を味わう時、06はいつも思う。ハカセはどうして髪を機体につけたのだろう、と。

 06にとってハカセは変な人間だった。機体を人間の見た目に似せて作るわりに、いざ人間のような振舞をし始めたら途端に怯えるように自分から遠ざける。その象徴が機体03だ。

 機体03は機体の中でも一番人間に近い存在だった。それ故にハカセは03を人間の養子にして自分から遠ざけた。人間という種の集団に突然放られた可哀想なヤツ。それが06の03に対する印象だった。

 そんなことを思い出して、06は立ち止まって首を傾げる。

 ハカセは人間だったが、06が唯一興味を持たない人間だった。だからこそ自分がハカセについて思い出すようなことは無いと思っていた。しかし、今06の脳に映し出されているのはハカセの姿である。

 06は一度ハカセに聞いたことがある。どうして自分だけが人間に対して興味を持つのか、ということを。その時ハカセは「そう作ったから」とにこやかに答えた。そして06は立て続けに、人間であるハカセに興味を自分が持たないのは故障しているからなのか、とも聞いた。そしたらハカセは「06がボクの本質を見抜いているからだ」と返してきた。

 その時の06はその言葉の意味が理解できてなかった。そして今もそれを理解できていない。しかし06はそれ以上、踏み込もうとは思わなかった。ハカセの本質なんて微塵も興味がなかったからだ。

 06はなぜ今になってハカセのことを思い出したのかわからなかった。機体も人間も興味がないものを突然思い出したりすることはない。大抵、そのものやそれに関連するものに興味を持ち始めてようやくそのことを思い出すのだ。だからこそ06にはなおのこと理由がわからなかった。

 ふと06の頬をミツルの横髪が掠る。

(…そういえば、よく見るとハカセとミツルって顔立ちが似てるな。)

 だからかもしれない、と06は納得する。そうしてまた歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ