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世界はレアアイテムであふれてる  作者: とびー
第五章 「風花」編・表
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実験

《フラン・ネフェシウム》


 ユーロが持ってきたのは、おもちゃの風車(かざぐるま)だった。


「ずっとこいつの使い方がわからなかったんだ」


 店の奥の作業スペースで、実験の準備を進める。

 作業台には、水の張った容器と、ミニチュアの船。

 ユーロの指示通りに用意したもので、船はなるべく本物に近い構造を再現した。


「風車は風を受ければ回る。それだけの単純な構造で、それ以上に何ができるとは思えなかった。俺はそれ以上考えずに放置していた」


 ユーロは風車に紐を巻きつけていく。軸の部分に、一周ずつ丁寧に。


「それを、どうやらミナとリエルが考えてくれてたらしい。物凄い単純な話だった。あっけなく発見されて、言われた俺もポカンとしたよ」


 巻きつけた紐を一気に引っ張ると、風車の羽は勢いよく周り、そして、ユーロの髪がたなびいた。


「風を受けると、回る。なら逆に、回せば、風が起こる。なんて単純な話だ。どうして俺は気付かなかったんだろう」


 嬉しそうに、ユーロが言う。

 フランは呆れて、


「わかったから、実験とやらをしてよ」


 そう言うとユーロはまた風車に糸を巻き付け出す。その手つきがあまりにもぎこちないので、フランは横からひったくった。


「はい、こうでしょ」


 素早く糸を巻きつけて、ユーロに渡す。


「うおっ、さすが早くて正確だ」


 ユーロは感心しながら、ミニチュアの船に開けておいた穴に、その風車を固定した。糊を使って向きが変わらないようにする。


「では実験開始」


 ユーロは左手で船を支えながら、右手で糸を勢いよく引っ張る。

 風車が回っているのを確認して、左手を離した。

 自由になった船が、ゆっくりと動き出す。


「見ろ。風と反対に船が押されている。ちゃんと風の反動はあるみたいだな」


 確かに、船自らが生み出す風で、船を動かすことはできそうだった。

 この風車が風花(かざはな)だと考えれば、考えている汽船の原型にはなりそうである。


「でも、だいぶ遅くない? 船だってこれ、本物より何倍も軽いし。大丈夫かな」


「それは風花のパワー次第だけど、ダメなら何個も並列させればいいんじゃないか?」


 そういうわけで、汽船の実験はひとまず無事に終了した。

 あとは実際に風花を採取してみるしかない。


 ◇


 ユーロによると、風花は「確か西にあった」とのことらしい。

 フランの出身地であるネヴァンとは反対側、荒野の街キアン。そこに行けば手に入るのだろうか。

 最初、フランは自分ひとりで行くと主張したのだが、


「こういうのは冒険者の仕事だろ。俺が行くよ」


 ユーロはその意見を一蹴した。


「ごめん、今回に限ってはあたしの問題だから。あたしに行かせて」


「何言ってるんだ。お前、魔物と戦えるのか。冒険の基本を心得てるのか。そもそも冒険者の証を持ってないじゃないか。だいたいフラン、店の外に出るのも怖いはずなのに、どうやってキアンまで行けるっていうんだ」


「お父さんが持ってきた魔物の鈴がまだ置いてあるから。冒険者とは違って荷物も無いし、なんとかキアンまで行ければいいだけ。城門は夜こっそり乗り越えれば――」


「悪いが、無茶すぎる」


 ユーロは首を振り、


「どうしてそんなに自分が行くことにこだわるんだ? さすがにおかしいぞ」


「だって……」


 フランは滅多にない逡巡を見せた。


「ユーロくんにはさ、守るべき人たちがいるじゃん。ユーロくんが大切に思ってる皆がいて、その皆もユーロくんのことを大切に思ってて。それなのにさ、あたし一人が横から急に出てきて。大事なユーロくんをどっかに送りとばすなんてできないじゃん」


「なら、クローネたちも加えて向かえばいい」


「それこそ、できないよ!」


 フランは頭をぶんぶんと左右に振った。


「どんな顔して、頼みに行けっていうの。あたしが。クローネさんに」


「……」


 ユーロはしばし無言になったが、


「フランって、意外と対人能力低いのか?」


 そんなことを口走るので、フランの全力のチョップが炸裂したのだった。


 ◇


 期限があるとは言え、とにかくその日はもう動くべき時間帯ではない。

 ここは大人しく寝ておいて、次の日に考えようということになり、解散した。


 したのだが。

 事態は、急激な進展を迎えることになる。

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