後日談
《クローネ・アイリス》
初めての運搬依頼は、往復ともに見事に成功させた。
ユーロとクローネは、ミディールの商業組合に大層感謝を受けた。是非ともと直接依頼を受け、今度は西地方の拠点アヌにも赴いた。
アヌはミディールとキアンの中間地点で、そう遠くなかったものの、荒野の風に吹かれながら旅をすることになった。
その依頼もまた成功させた結果、ミディールの商業組合からは大きな信頼を得て、次は東のネヴァンへと頼まれたが、それはユーロが断った。
「さすがに忙しい」
との事だった。実際、クローネも二連続の運搬任務で足がパンパンだった。
「でも、ずいぶんと稼げたな」
『ポルカ』でいつも通りの食事をしながら、ユーロが呟いた。最初は生活費の不足から始めた運搬任務だったが、今では四回分の報酬で、ちょっと豪華な食事を毎日しても足りるのではないかという額になっている。と言っても、怖くてそんなことは出来ないのだが。
「これからどうしよう? もうしばらくはお金は大丈夫だよね?」
「そうなんだが……」
ユーロは妙に歯切れが悪かった。
「この金の使い道なんだが、ちょっと相談があるんだ」
「?」
「でも、その相談の前にひとつだけ、言っておきたいことがある」
なんだろう。今日のユーロは、何か変だ……そう思った瞬間。
「クローネ、俺の専属パーティーになってくれ」
「――え?」
聞き間違いか、と思った。だってそれは、前に一度……
「一度断っといてなんだけど、あらためてこっちから頼みたい。俺の夢を一緒に追うと言ってくれたクローネには、ずっと仲間でいて欲しいんだ」
クローネは、以前に断られたときの言葉を思い出そうとした。
――専属となると、人生一個分を背負うことになるからさ。俺は君をなんとしても食わせていかなきゃいけなくなるし、君だって常に俺に縛られることになる。
そう言っていたはずのユーロが、今度は自分から専属パーティーになってほしいと頼んでいる。それはつまり……。
「い、いいの?」
気付けば、ほとんど泣き声になっていた。
◇
「ああ」
「だ、だって……じ、人生を、って……人生一個分だからって……だから……」
「ああ。背負わせてくれ」
「う、うぅっ……うわあああああ!」
自分が今『ポルカ』にいることも忘れ、クローネは大声を上げて泣いた。
何回目だろう、こうやってユーロに泣かされるのは。
だけど、これ以上に嬉しい涙を流すことは、きっともう無い……クローネはそう思った。
※プロポーズではありません。




