↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/43

第19話 最初の実技は、遭難者救

 金曜日に行われた最初の実地巡回は、思っていたよりもあっさりと終わった。集合は十九時。第六十三号ダンジョンの一般開放区を、学校から指定されたルートに沿って四人で巡回する。

 途中で魔物との戦闘もあったが、特に問題はなかった。樫村さんがダンジョンに潜ること自体が初めてだったようで、かなり緊張していたが、後衛だったので特に影響はなかった。


 翌日。

 8時42分。集合時間は、9時。

 ダンジョンの入り口には、すでに何人か集まっていた。


「おっ、後藤君!」

 ベンチに座っていながら、何か食べている堂本から声がかかった。

「おはようございます」

「おはようさん。食う?」

 差し出されたのは、コンビニのサンドイッチだった。すでに袋が開いている。

「大丈夫です。食べてきたので」

「そうか」

 断っても特に気にした様子はなく、堂本さんは残りを口に入れた。


 少し離れたところには樫村さんもいる。

 今日はスーツではない。動きやすそうな服の上から装備を着け、足元にギアバッグを置いている。堂本とは挨拶を交わした後で、少し離れていたようだ。


「後は成瀬君やな」

 堂本さんが言った直後。

「いますよ」

 後ろから声がした。

「いつ来たん?声かけてや」

「今来て、今声かけました」

 成瀬はさらりと言って、視線を外してスマホをいじり出したが、すぐに顔を上げて前を見る。視線の先からは話し声にしては大きな声が聞こえてきた。


「本日はいよいよ、実技課題に取り組むことになりました。夜間学校がテーマでしたが、実技課題は土曜日の朝から行うようです」

 喋ってるのはB班のメンバーだ。


「なんやあれ、騒がしいの」

「B班には現役の DTuber がいるんですよ。久賀直人と瀬川美月。それなりに人気ですよ」

 成瀬が説明してくれた。


「それでは、はりきってやってきます」

 スマホを向けられている若い男が久賀なのだろう。万人受けするような癖のない顔立ちと、愛想のいい笑顔をしている。

 スマホを持って撮影しているのが瀬川だろう。こちらも容姿がいい。


「よく知ってるんですか?」

 なんとなく成瀬に聞いた。

「まあ。それなりに。企画は結構面白いですよ」

 企画か……。少しだけ嫌な気持ちになる。柾木の笑顔と久賀の笑顔が重なる。あの手の笑顔は苦手だ。


「なんかイマイチなんだよな。もっと面白くなるかなと思ったんだけど、結構普通だよな」

 そう言って、久賀はスマホの画面を見ている。多分、先ほど撮った動画のチェックをしているんだろう。柾木がよくやっていた。


「学校なんてそんなもんでしょ。でも、数字自体はそれなりに伸びてるから、とりあえず様子見ね」

 瀬川はそういってスマホをいじくる。

 久賀はその発言になぜか不満げな顔を浮かべて、スマホをポケットにしまった。


「課題で何か面白いことあったらいいけど、一般開放区だからないかな」

「そうね、予定通り最速クリアが無難でしょうね。今後のことはその後の反応を見てから決めましょう」

 瀬川も言って、スマホをポケットにしまった。


「頼みますよ、三浦さんに竹中さん」

 久賀はそう言って、他の2人のパーティーメンバーに笑顔を向けていた。笑顔の切り替えが早い。やっぱり似てるな。


「おい、聞いたか?後藤くん、最速クリア言うてる。えらい気合入ってるな。こっちも気張っていかんとな」

 そう言って、堂本は笑顔を向けてきた。


「別に競争しなくても大丈夫ですよ。学校なんて、淡々と課題をこなしたら問題ないんですよ。」

 成瀬がスマホから目を離さずに言う。

「なんや、やる前から冷めとんな」

 成瀬は面倒くさそうに顔をそむけた。堂本は樫村にも同意を求めるように視線を向けたが、樫村は既に巻き込まれないようにスマホに視線を移していた。


 その時、ダンジョンの入口付近から声がする。

「実技参加者、集合してください」

 集まっていた生徒たちが、一斉に動き始める。朔たちもその流れに続いた。


 前に立った教官が、手元の端末を確認する。

「今日の実技課題を説明します」

 周囲の話し声が止まった。


「本日の課題は、一般開放区内で発生した遭難事故を想定した救助活動です。各班には、要救助者の位置と最低限の状況だけを伝えます」

 黒瀬は続けた。

「現場へ入り、状況を確認し、安全を確保した上で要救助者を発見してください」

 そこまでは普通に聞こえた。


 だが。

「なお――」

 黒瀬が、皆を見回した。


「要救助者が、最初に聞いた場所にいるとは限りません」

 そういった黒瀬の口元が一瞬動いたように見えた。いままで感情が見えない人だと思っていたが、一瞬だけ感情が漏れた。なんだか嫌な予感がする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。