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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章 釣りバカ異世界生活 夏

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第45話:大討伐クエスト! 連れ去られた二人を救出せよ




 ブアートさんに教えられた、邪神教徒を名乗る窃盗集団が走り去った先。

 そこはお馴染みドロアンコウの生息地「フラウンド森林」の方角であった。

 思えば最近、あの辺行ってなかったな……。

 確かに、地形だけを考えれば身を隠すのにうってつけかもしれない。

 まあ……。

 地形だけを考えれば……。



(雄一さん……無茶苦茶臭いっスよここ……!)


(だろ……? こんなんだから夏は誰も寄り付かないんだよ……)


(ひょっとして時々風が変な臭い帯びてるのってここが原因っスか……?)



 フラウンド森林は夏になると、森の中に点在する底なし沼が激烈な異臭を発生させるのだ。

 風向きによっては、稀にデイスまでその臭いが届くこともあり、半ば夏の風物詩と化している。

 それ故、誰もがこの森を捜索範囲から無意識のうちに外していたのだ。

 かく言う俺もそうである。

 それほどに臭いのだ、ここは。


 繁茂した背の高い草の陰に隠れ、風の音に紛れながらゆっくり、ゆっくりと前進していく。

 空を覆うように生えた森の木々が上空からの視界を遮るので、飛行スキルでひとっ飛び偵察とはいかないのだ。

 感知スキルには微弱ながら、俺達に危害を加え得る者たちの感があり、その反応から察するに、最低でも15人は居る。

 そして、こちらには全く気付いていない。



(二人の存在を確認次第、即テレポートで連れ帰るぞ)


(了解っス。町まで直は厳しいっすけど、近くまでは飛べるはずっス)



 あとは……。

 コトノさんとユーリ君の安否が問題だ……。

 仮にこの先に二人が居るのなら、コトノさんは捕えられてから一晩と半日以上、ユーリくんは3時間あまり経過している。

 野蛮な連中にかかれば、既に命を奪われていても不思議ではない。

 命を奪われていなくとも、他の色々なものを奪われてしまっている可能性だってある。

 急がなければ……。

 不意に、草木を揺らす生ぬるい風の音に、人為的な音が混じり始めた。

 それは、何者かが低木を踏みしめる音であったり、何か固いものを叩く様な音であったり、話し声であったり。

 そしてその中に一つ、聞きなれた声が……。



「や……やめろ!! 僕の村の食糧を……!! 許さないぞ!! うわあ!! 痛い! 痛い!!」



 ユーリくん……!

 思わず身を乗り出した俺のベルトを掴み、ミコトが制止してくれた。

 それが無ければ俺は次の瞬間にでも敵のど真ん中に飛び込んでいただろう。

 今、ユーリくんは何らかの苦痛を伴う拘束を受けているに違いないのだ。



「やめてください! そんな小さな子供を虐めて何が楽しいのですか!?」



 彼の悲鳴に続いて聞こえてきたのは、コトノさんの絶叫だった。

 すぐにでも救出に向かいたい心をグッと抑え、二人の声がする方向へ密かに忍び寄っていく。

 もうほんの10mというところで、短距離テレポートで頭上の木の枝へと瞬間移動し、彼らのキャンプ地を上から覗き込んだ。

 ……!!


 目に飛び込んできたのは、沼の淵に開けた小さな広場の隅で檻に入れられたコトノさんと、沼に突き出た木の幹に縛られたユーリくんの姿。

 そして、彼の眼前で、村から奪ってきたと思われる食糧に貪りつく男たちだった。

 その数、想定の倍に迫る23人。

全員が裸ないし半裸。

 黒いローブを御座代わりにして座り、ユーリくん目がけてゲラゲラと下衆な笑いを飛ばしている。

 両腕を木の幹に縛り付けられ、かかしのような格好で拘束されたユーリくんの肌には、痛々しい傷が多数残されていた。



「やめ……ろ……! みんなで頑張って作った野菜を……お前たちが食べるなぁ!!」



 尚も吠えるユーリくん。

 しかし、男たちはそんな彼の勇気を嘲笑いながら、辺りに転がる石ころを投げつける。

 その度にユーリ君は悲鳴を上げ、コトノさんが必死に辞めるよう嘆願する。

 それを面白がった連中は弓矢を持ち出し、ユーリくん目がけて狙いを定め始めた。

もはや猶予はない!



(ミコト!)


(分かってるっス!)



 大きく息を吸う俺を見て、ミコトは何をするのか理解したようだった。

 コトノさんの捕えられた檻を見つめ、テレポートの合図を待っている。

 俺もまた、ユーリくんの縛られた枝の上を見据え、魔力を全身に込め……。



「そこまでだ!!」



 大声を上げ、その直後にテレポートする!

 敵の視線が瞬く間に、俺達が立っていた木の幹に向いた。

 しかし、その時には既に、俺達はそれぞれの救出対象の元へ転移していた。

 連中が今度は一斉に立ち上がり、辺りを見回し始めた。

 当然、コトノさんやユーリくんの方を向く察しのいい輩もいる。

 だが、そいつが俺達の存在を叫ぶ前に、俺とミコトは森の外へのテレポートを発動し終えていた。



「大丈夫かユーリくん!!」


「無事っスか!? コトノさん!」



 流石にデイスまで直にテレポートは出来ない。

 魔力を使いつくさず、それでいて敵の追撃を振り切れる位置まで転移し、そこからは飛行スキルを使い、デイスまで二人を護送する算段だ。



「ユーチ……兄ちゃん……!」



 力なく俺を見つめるユーリくん。

 間近で見ると、彼の傷は本当に痛々しかった。

 吊るされる前にも、散々虐待を受けたであろうことがよく分かる。



「僕じゃ……駄目だったよ……村の食糧……守れなかった……」


「君がそんな無茶するんじゃない……! こういうのは、俺に頼んで……」


「駄目だよ!!」



 突然大声で言葉を遮られ、思わずビクッとしてしまう。



「だって……ユーチ兄ちゃんが……また怪我しちゃうよ……!」


「いや……俺で無理ならもっと強い人呼んでさ……」


「そんなことしたら、またユーチ兄ちゃんが強い人のコブンになって働かなきゃいけなくなちゃうよ! そんなユーチ兄ちゃん見たくないもん!!」



 へ!?

 コブン!?

 この子何言って……?



「だって聞いたよ! あれからユーチ兄ちゃんがシャウトっていう乱暴者の先輩のコブンにされてずっとこき使われてるって!」



 盛大にズッコケた。

 どこの誰から聞いた話なんだよそれ!!

 まあ、確かにアレからシャウト先輩との絡み増えたし、この夏入ってから先輩絡みのクエストで助っ人に呼ばれ続けてるのは確かだけどさ……。

 とりあえず、後で事情を説明しよう。


 ミコトの方を見れば、コトノさんは俄然元気だった。

 不意打ちを食らい、戦羽をかなり消耗し、多少の傷は受けたようが、どれもかすり傷程度らしい。



「私は自力で飛べるから、その子を早く運んであげて!」



 と、羽をばたつかせつつ言う。

 うん。

 大丈夫そうだ。

 

 ユーリくんに軽い応急処置を済ませて、俺達はデイス目がけ、飛び上がろうとした。

 その時。



「ん~……逃げちゃうかぁ」



 という声と共に、俺達の周りを黒い靄が覆った。



「うぐっ……!! これは……瘴気っス……!! う……!うう!」



 ミコトが咳き込みながら倒れ込み、苦しみ始める。

 俺には殆ど影響がないので、濃度自体は大したことはないのだろうが、彼女からすれば毒ガスも同然だ。



「だ……誰だ!」


「ん~……ここだねぇ」



 突然、霧の向こうから槍の切っ先が突き出て来た。

 的確に俺の心臓を狙ってきたその槍は、オートガードによって弾かれる。



「ん~……厄介なスキル持ってるねぇ」



 槍が伸びてきた先を見据えるも、人影一つ見当たらない。



「みんな! 敵だ! 早く逃げるぞ!」



 3人に警告を出す。

 しかし、俺が振り返った時、既にコトノさんは翼を槍に貫かれ、地面に倒れ伏した直後だった。



「ん~……逃げられないねぇ」



 今度は地面から槍が飛び出してきた。

 足元でオートガードが発動し、それを弾くが、俺は軽くバランスを崩し、思い切りコケてしまう。

 ちょっと待て……?

 地面から槍……?


 たった今俺を襲った槍を見ると、さらさらと光の粒子となって消え始めていた。

 これは……召喚術!!

 瘴気の闇に包まれた闇の中で、ミコト、コトノさんが行動不能になり倒れ伏す中、俺の人生初となる召喚術師との戦いの火蓋が切って落とされた。


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