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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章 釣りバカ異世界生活 夏

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第43話:大討伐クエスト! デイス周辺大捜索網 上




「間違いない……。これはあの子の戦羽だわ……」



 日が傾きかけた頃、ようやく見つけたコトノさんお気に入りの場所。

 辺りには焦げ跡が点在し、鋭利な何かで斬られた草木が散乱していた。

 そして、転がった空っぽの郵便配達袋と、一面に散らばるガラスのように美しい羽根

 コトノさんの戦羽だ。


 戦羽……。

 ハーピィなどの鳥人種が備える戦闘用の羽毛である。

 固い芯に鋭い毛が生え揃っており、手裏剣のように飛ばして戦うことができるのだ。

 人によっては、刺さった先で毒を出したり、爆発させたりすることも可能らしい。


 この状況、どう見ても休憩中を何者かに襲われ、応戦の末連れ去られたか、もしくは……。

 嫌な予感を振り払うように、辺りの藪を切り払い、彼女の姿を探す。

 ミコトも、コトノさんの友人(エルフィンと名乗った)も、同じように彼女の名を呼び、藪を払う。

ふと、足元に何かが当たった……。

 半端に固く、それでいてふさふさとした物が付いている……。

 ギョッとして飛び退き、恐る恐る藪を払うと、そこにあったのは人の亡骸であった。


 黒髪の男……コトノさんじゃない……!

 よかった……。

 いや、良くはない!



「おーい! 男の人が死んでる! コトノさんの失踪と関係あるかもしれない!」



 早急に2人を呼び、供養の黙とうを捧げた後、彼の身体を弄る。

 最初は裸かと思っていたが、よく見ると衣服がピーラーで引かれた根菜の皮のように剥がれている。

 同時に体中に深い裂傷が走っていて、死因は出血多量と思われた。

 バラバラになっていた服を元の形に組み立てると、黒に銀の刺繍が入ったローブが出来上がった。

 この胸の紋章は……邪神教徒!!



「この服の損傷具合……間違いなく戦羽の乱舞を食らったものだわ……。コトノを襲ったのはこいつらよ!」



 邪神教徒が……?

 なぜ!?

 連中にコトノさんを襲う理由なんて……。



「理由より今はコトノさんの安否っスよ! 一刻も早くギルドに報告して、邪神教徒とコトノさんの捜索をしてもらうっス!」



 ミコトが俺の肩を叩く。



「そ……そうだな! 急ごう!」


「私はもう少しここを探してみるわ。ごめんなさい……力になってくれてありがとう!」


「それはコトノさんが無事見つかってからにしましょう! くれぐれもお気をつけて!」



 俺とミコトはエルフィンさんをその場に残し、デイス城門前へテレポートした。




////////////////////




 暢気に絡んでくるジールさんを華麗にスルーし、ギルド本部に駆け込む。

 人影はまばら……。

 生憎、まだ出張中の冒険者勢はあまり戻っていないようだ。



「緊急事態です! この街に出入りしてるハーピイ便のコトノさんが行方不明です! 邪神教が関係しているみたいです!」



 受付窓口に噛り付き、あの男が来ていたローブの切れ端を見せつつ、状況を取り急ぎ通達する。

 幸運にも、既にハーピイ便の組合から捜索願いが提出されており、話は早かった。

 国が敵対勢力と認定した者が関わっている案件は、問答無用で国が依頼人の「大討伐クエスト」になる。

 要はクエスト受注さえすれば、紹介料を支払う必要もなく、誰でも参加可能で、解決の暁には貢献度による差異こそあれ、参加者全員に報奨金が支給されるクエストである。

 冒険者からすれば参加するだけで金が貰え、しかも解決すれば国に名を売ることができるという、うま味しかないクエストだ。


 一応ギルドからは「信頼のおける冒険者」認定されている俺達の報告なので、受付のお姉さんは迅速にクエストの稟議を回してくれた。

 俺達の度重なるラッキーパンチもあるが、やはりシャウト先輩の一党というネームバリューが大いに生きたようだ。

 今この場にいなくとも、先輩には助けられっぱなしである。


 ものの数分で、クエストの依頼張り紙が大討伐クエストに張り替えられ、それを知らせるラッパの号令がデイスの街に鳴り響く。

 それに誘われ、冒険者達が受付前に集まってきた。

 いつもに比べてずっと少ないが、邪神教徒襲撃事件の日よりかはずっと多い。

 見れば、同期やこの間の新米くんチームなど、顔見知りの連中もチラホラいた。



「大討伐クエストですが、今回は行方不明者の捜索がメインなので少々地味です……。しかし! 行方不明者は皆さんお馴染みのハーピイ、コトノさん! しかもこの件には、先日この街を襲った邪神教の一味が関わっています!」



 大討伐クエスト名物、三白眼お姉さんの煽りが入る。



「魔王の痕跡を蘇らせ、この国に災いをもたらさんとする邪神教徒! 何を企んでいるのかは知りませんが、碌でもないことに違いありません! そんな奴らの野望を砕き! 行方不明となったコトノさんを助け出し! あなた達と、このデイスギルドの実力を見せつけてやりましょう!! 名を挙げるのは誰だー!」



 その言葉と共に、受付が開始された。

 並んでいた冒険者達がウォークライと共に窓口へ殺到し、参加名簿に次々と指印が押されていく。

 クエストの内容は至極簡単。


一つ、行方不明のコトノさんを発見し、保護すること

一つ、関与している邪神教徒の根城を見つけ出し、一人残らず討伐すること


 この二つだけだ。

 どちらかを達成すれば、参加報奨金に加えて、個別でかなりの額の賞与を受け取ることができ、両方を達成すれば、賞与に加えてデイスのギルドから特別褒章が送られることとなる。

 

 俺達も受注を済ませ、急ぎ足で本部から出る。

 ギルド本部前噴水広場は早くもお祭り騒ぎである。

 武器屋や道具屋、薬屋、料理屋がここぞとばかりに出張屋台を構え、常駐組の冒険者のみならず、立ち寄りの冒険者達を呼び込んでいる。



「ユウイチくん! ミコトちゃん!」



 見上げると、エルフィンさんが舞い降りてくるところだった。

 「コトノさんは?」と聞くと、彼女は首を横に振った。



「これはまさか……コトノの捜索のために?」



 彼女はこの喧騒を見て驚いている。

 まさか一個人の捜索で、こんな大騒ぎになるとは思ってもみなかったのだろう。



「おう! ハーピイ便の姉ちゃん! お前の仲間は絶対見つけてやるからよ!」


「この街の皆はいつもハーピイ便のお世話になってますから! 今度はボク達がお助けしますよ!」


「先日の邪神教徒どもの襲来……拙者は遠征中につき支援すること能わず……。この無念、この度必ずや……!」



 行き交う冒険者が、エルフィンさんに温かく、心強い言葉を投げかける。



「み……皆さん……! ありがとうございます! ありがとうございます!」



 思わず目を潤ませ、幾度も頭を下げるエルフィンさん。

 そんな彼女に背を向け、冒険者達は次々と街の外へ走っていく。

 情報屋たちは無償でビラをまき、情報提供を求めて駆け回る。

 冒険者でない街の住民達が、その姿にエールを送る。


 交易の街、デイス。

 かつての戦乱の時代、いかなる勢力にも属さず、大陸最古の冒険者ギルド組織を抱えて絶対中立と絶対不可侵を貫き通したという伝説の上に建つこの街は、冒険者の一大イベントを皆が一緒になって助けるという風潮がある。

 しかも今回のクエストに関わるのが、いつも街に笑顔と郵便を運んでくれていたハーピィと、先日ひどい騒ぎを引き起こした邪神教という、好きと嫌いの両極端にある存在と来た。

 規模こそ小さいものの、この熱狂ぶりはワイバーンやベヒーモスクラスの大物モンスターの大討伐クエストに匹敵するほどだ。

 遥かな昔から培われてきたギルドの、冒険者達の、そして住む者たちの心意気が、一人のハーピィを見つけ、街や国に仇なす邪神教を打ち倒すために動き出したのである。



「ミコト、俺達も行くぞ!」


「了解っス!」



 「ユウイチ様―! 頑張ってねー!」

 「ミコトちゃーん! 気をつけて―!」



 などと、黄色い声援を受けて頬を赤らめながら、開け放たれた城門を駆け抜ける。

 ちょうど城門前で情報屋さんが撒いていたビラの情報を頼りに、俺達は街外れの古戦場跡地を目指して空へ舞い上がった。


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