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第80話 ルナ迷宮最深部

 46階層のコカトリス、47階層のサラマンダーは初めて対面する魔物だけれど、俺が持っている魔道レーダーによって先に探知し、魔道ライフルによる先制攻撃が可能だから問題なく対処する事ができた。


 そして、俺たちはその日のうちに50階層まで来てしまった。


 50階層のボスはサイクロプスとミノタウロスを両側に従えたバシリスクだ。大型の魔物を両脇に従えた蜥蜴の魔物だけれど存在感がある。

 中央で身動きせずに鋭い目でこちらを見据えている姿は、さすがに魔物の王と言われるほどに威圧感がある。


 この鋭い目で睨みつけられれば石化が始まるというのも頷ける。しかし、皆のレベルが魔物を上回っているからなのか、召喚獣の効果なのかは分らないが石化を免れているのは事実だ。


「えっと、ミラは右のミノタウロス、エミーは左のサイクロプス。俺とジムは真ん中の蜥蜴とかげでいいよね」

「「分かった」わ」

「うん」


 「アタック」の掛け声で皆が一斉にトリガを引くと、迷宮内に木霊する射撃音が鳴り響く。ボスたち魔物は成す術もなく、直立したまま後ろに前にと倒れていった。


「え、もう終わっちゃったの?」

「ここのボスは、冒険者ギルドの記録を見たんだけど、最高ランクのパーティで5時間かかったんだってよ。もう10年前の話らしいけど」

「私たち、5秒くらい?」

「火力、ちょっと強すぎかなー。はい、予備のマガジン」



 通常討伐に5時間かかるのを5秒ほどで倒してしまったので、俺はこれでいいのかなぁと一瞬思ったが、用心することに越したことはない。

 魔道トートバッグにしまっていたアサルトライフル用のマガジンをみんなに配った。


「まだ大丈夫だと思うけど」

「フルオートにしていると、どのくらい撃ったか分からなくなるから早めに換装しておこう。戦闘中に魔石の魔力が無くなれば撃てなくなるから」


 マガジンは魔石の魔力を太陽光で充電することを可能にして、宿泊所のベランダで予備を充電中だ。1日で使うマガジンを交互に充電しつつ、十分なマガジンをバッグに詰めて贅沢に使用している。


「次は51階層ね、どんな魔物が居るのかしら」

「51階層はワイバーンとグリフォンだね。上空を飛んでくるだろうからショットガンモードで撃ち落として、その後にフルオートモードに切り替えてとどめを刺すってな具合でいいかな?」


 今回みんなに持たせた魔道ライフルは、空を飛んでやってくる魔物に対してフルオートモードで対応できない事は無いが、いかんせん命中率が悪い。

 そこで、ショットガンモードにすることで複数のファイアボールを広範囲に撃てるので命中率が上がる。


 致命傷には至らないが、翼を傷つけると彼らは落ちてくる。落ちてきたらフルオートモードに切り替え、ゆっくりと近づいて狙い撃つというのが俺たちの戦法だ。


 ワイバーンにしてもグリフォンにしても、向こうから攻撃される前に先手を打てるので今のところ、こちら側には何の被害も出ていない。

 暫く51階層で無難に狩りを続けた後、52階層を目指すことにした。


「52階層はアースドラゴンがいるらしい。アースドラゴンの皮は硬くて厚いから、魔道ライフルではきついかも知れない。そこで、これから先は魔道ビームライフルに持ち替えてもらう事にするよ」


「魔道ビームライフル……あの伝説の武器か」

「別に伝説じゃないから。そしてこれも対空用にショットガンモードを追加しているし、進化してるから」


「これが……」

「ミラも、もういいから行こう」


 ミラの目がキラキラしているのが気になるが、俺たち4人は現時点で最強の武器を携えて52階層へ進んでいった。



 ビームライフル独特の電気音がした後に、バリバリという放電音が鳴り響くと延長線上にいたアースドラゴンは、見る見るうちにその色を黒く変えていった。


「ねえ、これってヤバいんじゃない?」

「アースドラゴンがあっという間に消し炭だよ」


 4年前のスタンピードに使った時から、火力がアップしているのだ。


「安全のために、火力を多めにしてるから」

「それって、気にしたらダメってことよね」


 エミーも順応が速くなってきたな。早くも考えるのをやめたようだ。


 54階層は過去に到達したことがある最深の階層だ。ここに出てくるマンティコアが倒せなくて、到達記録がこの階層に留まったと資料にある。

 しかし、性能アップした魔道ビームライフルの前では、倒せなかったというマンティコアも走り寄ってくる途中で沈めてしまうので噛みつかれる事もなかった。



「55階層からは未踏の階層だから、何が出てくるかは推測しか出来ない。ゆっくりと時間をかけて進んで行くからそのつもりで」


 55階層から下は、マンティコアやアースドラゴン、そしてキメラといった強力な魔物が集団で現れるという、俺たちにとってはこの上なくおいしい狩り場だった。


 そんな感じで、その後2日間をかけて俺たちは60階層までたどり着いた。


 60階層にはメデューサがいた。しきりに石化魔法を唱えているが、俺たちには通用しない。皆で遠くから一斉射撃をすると敢え無く沈んで行った。


 そして、ヒュドラがいると予想されている最後のボス部屋の前だに来た。

 ステータスをオープンさせると、案の定みんながSSランクに到達している。60階層のボスに挑戦する為には、一旦冒険者ギルドでパーティランクの更新を行ってパーティランクSSの確認をとらなければ中に入る許可がもらえない。


「もう、十分にランクがSSランクまで上がったと思うから、一旦冒険者ギルドに向かうよ」

「この2日間で、何度もレベルアップが有ったからな」



 60階層の安全スポットに魔道移転ドアを設置し、冒険者ギルドでギルドカードの更新を受けると、皆が問題なくSSランクになっていた。


(リリアンさんは頭を押さえて暫く唸ってましたけどね)



 さて、とうとうやって来ました60階層のボスの部屋。

 ここまで到達した例が無いため、古いギルドの資料にはボス部屋にはヒュドラが住んでいるらしい(・・・)という記載があるのみだ。

 予想は当たっていて、俺たちの前方には今、うねうねと不気味に複数の頭が動くヒュドラ様が鎮座している。


 ヒュドラは、頭が9つある蛇型の魔物だった。1つ1つの頭は別々の魔法攻撃をしてくるし、1つの首が飛んでも直ぐに再生して元通りになると資料にも書いてあった。

 どの程度の速さで再生するのかまでは書いていない。誰も戦闘した経験がないので分からないのだ。

 再生能力が高くて滅茶苦茶に難易度が高いとは予想できる。さすがにこれは倒すのに苦労するだろう。


「みんな、気を張っていくよ! アタック!」


 4つのライフルからの「ブーン」という電気音の後、次の瞬間には耳をつんざくような放電音と共に発射された4つのビームが、ヒュドラの前で何度も交差する。

 手ごたえは十分で、9つあった首が1つ1つ途中から落ちていくのが確認できる。


「……?」

「ねえ、もう首が1つも無いんだけど?」

「レベルが上がった」

「ああ……本当だ。再生できなかったのかな?」


 すぐに再生すると思っていた首が、魔道ビームの放電で傷口が焼かれたためか再生できなかったようなのだ。


「呆気なかった」

「な、何か可哀そうじゃね?」


 ジムは心に罪悪感を覚えているようだ。いやいや、相手は凶悪な魔物なのだから情けは無用だ。


「とりあえず、先に進んでみようか」

「そうよね」

「魔石」

「そうだった、魔石を回収しないと」


 魔石の回収を忘れそうだったが、トートバッグになんとか入る大きさの魔石を無事回収できた。

 その先に進み、細い通路を曲がると奥にまた部屋が有った。部屋全体が青白く光っているが、その中央にひと際強く光り輝く塊がある。


「これがダンジョンコアってやつね」

「これに魔力が多く注がれ過ぎるとスタンピードが起こると言われているね」

「今は大丈夫なんだよね」

「そうだね、何らかの影響で地脈に変化が起こると魔力経路が変わってスタンピードの要因になるようだから、それを早く察知して対応するだけでいいと思うんだ」


 コアが乗っている岩の内部は、地脈とコアとの間を繋ぐ魔力回路があるようだ。地脈には常時魔力が流れているようだが、今はコアが発する光も安定している。


「定期的にここを見に来るって事?」

「そうだね、その為にここに魔道転移ドアを設置しよう」

「ああ……そういう事ね」


 俺たちはルナ迷宮最深部のコア部屋に、魔道転移ドアを設置した。

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