↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/264

第68話 帰郷1

 ルナの町。

 その定期馬車の発着所に降り立った俺たちは、まず最初にどこに行くかを決めていた。

 言わずもがな、俺たちが育った孤児院である。


「あ、ミリアさんお久しぶりです。マデリーンシスター長はいらっしゃいますか?」


 孤児院は以前と変わらず、子供たちの声で活気があった。


「ああ、エミリーさん、ミラベルさん、それにジェームスさんとアルフレッドさんも! うわあー、皆さん何だか暫く見ないうちに立派になられましたねぇ」


「ミリア先生もお元気そうですね」

「はい、元気にしておりますよ。実はですね、マデリーン様は昨年で退役されていまして、今年から私がシスター長の任務を仰せつかっているんですよ」


 暫くいない間に、孤児院も変わってしまっていた。


「ええー、そうだったんですか、それは失礼しました。ごめんなさい」

「いいんですよー。私もまだシスター長といっても名ばかりで、子供たちからそう呼ばれると、まだこそばゆい感じがしますからねぇ」


 マデリーン元シスター長は、俺たちが孤児院を出た時には結構お年を召していらした。あれから6年が経っているのだから、色々と変わっていてもおかしくない。


「シスター、コホン。マデリーンさんは、今はどうされているのですか?」

「元気にしておられますよ。町の北側の静かなところに家を買われていましてね、その家の庭にハーブ園を作ったとかで時々ハーブ茶を持って来てくださるんですよ」

「お元気であれば何よりです。マデリーンさんのハーブ園も訪ねてみたいですね」

「ぜひ、行ってあげてください。喜ばれますよ」


 退役をされたあとはハーブ園の世話など、お元気そうに過ごされている様で何よりだ。みんなで訪ねてみたい。

 エミーに目を向けると、やはり行きたそうな顔をしている。彼女の目を見ながら、俺は頷いてみせた。


「これからマデリーンさんの所に行ってみたいな。みんなもいいよね?」

「ああ、いいぞ」

「うん」


 みんなも行きたそうだ。


「ああ、行こう」


 俺も頷いた。

 ミリアさんには、俺たちが今後この町で活動することを伝えておかなければ。


「それから俺たちは、冒険者としてこの町を拠点にルナ迷宮の探索を行う事にしています。孤児院の方にも、いずれお世話になるかもしれません。その時は宜しくお願いします」


「冒険者になられたんですか。では、万一お怪我などなされたときはぜひ教会をお尋ねください」


 ミリアさんはエミーたちが魔術師になって、ヒールが使えることを知らないのか。エミーは、申し訳なさそうに視線を伏せている。


「えっと、ミリアさん。いえ、ミリアシスター長。実はエミーとミラは魔道学園を卒業して魔術師になっています。エミーとミラ二人とも治癒魔法のヒールを習得しています」


「え、エミリーさんとミラベルさん二人ともヒールを……すごいです! それでは私のヒールなんか必要ないですね、ハハハ」


 ミリアさんは肩を落としてしまった。ここでエミーはエリアヒールも出来るなんて言ったら、ミリアさんがもっと落ち込んでしまいそうだ。


「ミリアさんは前シスター長と同じように、孤児院や町の皆さんを助けてあげてください。私たちもそうしてみんな元気に育ってきたんですから」


「そうですよね。私はここにいる孤児院の子どもたちを、元気に社会に送り届ける使命があるんですものね」

「是非そうしてください」

「ふふ、皆さん……心も大人になられましたね。私も嬉しいです」


 ミリアさんもシスター長になったばかりで色々と大変なんだろう。少しやつれ気味なところが気になったが、エミーたちが時々行って力になりたいって言ってるから多分大丈夫だろう。



 マデリーン元シスター長の住所も聞いたので、その後すぐに会いに行った。

 彼女は60歳を過ぎて孤児院を退役したあと、街の北側の小さな家を買い、開墾した庭の畑で様々なハーブを植えて楽しんでいた。


「まあまあ、6年も経つとみんな大きくなるのだわねぇ。それぞれが違う道を歩んでいくのだと思っていましたが、またこうして集まって仲良く活動しているのを見ると、私も嬉しいですよ」


 彼女は、自慢のハーブティーをご馳走しながら、俺たちが孤児院時代の思い出を楽しそうに話してくれた。

 シスター長の時には鋭い目つきをしていた彼女が、今では柔和で穏やかな目をしているのが印象的だった。

 いろんな意味で『ありがとうございました』と頭を下げて、マデリーンさんのハーブ園を後にした。


     ◇


「さて、先ずは拠点にするための宿を決めないとな」

「宿っていえば、あそこしかねえんじゃねえか?」

「あそこしかないよね」


 ジムとエミーが「あそこ」しかないと言う。


「他にもあるけど古い」

「そうだな、あそこに行くしかないよね」


 ここは冒険者の為に作られたような町だ。なのに、冒険者の為の宿屋が『あそこしかない』と言われている。

 皆が「あそこ」と言う宿泊所が、フェアリーナイト宿泊所だ。


 前々回のスタンピードで、この町は壊滅的な被害を受けている。

 フェアリーナイト宿泊所は、その時にいくつもあった宿屋を一つの大きな建物にした集合住宅のような宿泊所だ。


 部屋数がなんと300以上もあって、大型ホテル並みの規模だ。


 俺たちは早速、部屋を借りて部屋を見てみた。


「小さいころから見慣れた宿泊所だけれど、一度泊まってみたかったのよね」

「中がどうなっているか、見た事なかったもんな」

「意外と狭い」


 ここフェアリーナイト宿泊所は、二人部屋か4人部屋かのどちらかしかない。俺たちは二人部屋を2部屋借りて、男女に分かれることにした。

 そして、二人部屋の広さは、魔道学園の寮に比べてかなり狭かった。


「まあ、こんなものじゃないか?」


 部屋の中にはベッドが二つとテーブルが一つ。ベッドと反対側の壁には小さな物置とクローゼットがある。

 そして驚いたことに、入り口の横には水場とトイレがあるのだ。まるで地球のホテルと同じように。


 風呂桶やシャワーこそないが、予め水を溜めておくことで、押したら水が出る魔道具が各部屋に配置してある。トイレも水で何処かへ流れていくようになっている。


「各部屋に水場があるのはいいよね」

「水が出せる魔術師にとっては有難いわね」

「アルに覗かれる心配もない」

「なんで俺?!」


(ミラのは冗談だと分かるのに、エミーさん何で目を細めて横目なの?)


 小さな宿泊所では洗い場が男女共同だったりする事があるので、女性の冒険者には敬遠されることが多い。しかし、ここはその心配もないようだ。

 宿泊料金は、1部屋1泊で銀貨2枚だ。一カ月単位で借りれば、大銀貨3枚と大変リーズナブルな料金になるのである。


「晩飯はどこで食う?」

「私、魔法の花園亭がいい!」


 やっぱり、女性に人気の居酒屋らしい。


「俺はやだよ、龍の鱗亭がいい」

「えー、あそこ男ばっかり」


 男ばかりしか行かない所もダメだ。


「じゃあ、勇者食堂にするぞ」

「……わかった」

「うん」

「……そこでいい」


 フェアリーナイト宿泊所の1階は食堂街となっており、いくつもの食べ物屋が軒を連ねている。

 勇者食堂は、冒険者の客も多いが一般の人もよく利用する大衆食堂兼居酒屋である。食堂街の中で一番大きな食堂だ。


 夕食を食べながら、2日目の行動をどうするか話し合った。その結果、それぞれにお世話になった場所を訪ねることが決まった。

 俺は、マルコさんとガレットさんを訪ね、ルナの町に戻って来たことを報告しようと思っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。