第65話 魔法剣の製作
次の日の朝食時。
俺は3人に気付かれないように、ステータスコマンドを実行してみた。
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名前:ジェームス
年齢:16歳
性別:男
経験値:5525
レベル:16
冒険者ランク:D
体力:444/445
魔力:3/3
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ジムのレベル16は、予想以上だった。
体力もレベルに対して高い。
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名前:エミリー
年齢:16歳
性別:女
経験値:679
レベル:11
冒険者ランク:E
体力:68/68
魔力:358/358
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エミーはレベル11だ。
魔力持ちだけあって、俺たちの値とは桁が大きく違う。
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名前:ミラベル
年齢:16歳
性別:女
経験値:677
レベル:11
冒険者ランク:E
体力:56/56
魔力:512/512
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ミラは魔力がエミーより高い。
やはり俺の経験値だけ異常だった。
スタンピード時に一気に入ってしまった可能性が高い。
「パーティにジムが加わったことで、魔物討伐の効率が上がっていると思う。これまでの依頼より少し上の依頼を受けてみようと思うんだけれど、みんないいかな?」
「パーティランクもCランクに上がったしね」
「魔物運び、ジムがいるから楽になる」
「おう、俺に任せろ!」
皆が同意し、これからはCランクの依頼を受けることにした。
「これなんかどうかな?」
「レアンの村の近隣にオークが時々出現……と」
「オーク討伐」
「やるっきゃないでしょ!」
「じゃあこれ受けるね」
以前に魔道科の修業旅行で通ったレアンの村の近くに、オークが出没して困っているという村長さんからの討伐依頼だ。
ルノザールからレアンの村までは馬車で2日の距離だ。
最初は定期馬車で行こうかとも考えたが、冒険者用の馬舎に行って屈強そうな馬を2頭借りた。
馬には二人用の鞍を取り付けている。1頭にはミラとジムが乗って、もう1頭にはエミーと俺の相乗りだ。
「アル君も馬に乗れるんだね」
調査隊に同行した時に、騎士団長さんにお願いして練習したことを説明する。
「へー、そうなんだ。なんだか楽しいな」
「俺も、エミーと一緒に馬に乗ることができて嬉しいよ」
「ふふっ、私も」
隣を見ると、ミラたちも楽しそうに馬に乗っている。2人乗りの馬を借りたのは大正解だ。
◇
レアンの村の代官を務めるのはヘンリー・ウェリントンという男爵様だった。
最近、アイアンリッジまでの森の道の途中にオークが出没し、商人を困らせているのだという。
代官に挨拶を済ませると、早速俺たちはアイアンリッジに続く道の探索に出かけることにした。
「へぇー、そりゃあ凄いなー」
「サーチ範囲は10キタール程度なんだけどね」
俺はジムに携帯型魔道レーダーの説明をした。改良を重ねた結果、探知範囲は以前の十倍にあたる10キタールまで広がっている。
「これがそうか?」
「オークだろうね」
魔道レーダーに反応した大きめの点は、他の小さな点とは明らかに異なり、大物だと判別できる。俺たちはレーダーを頼りに反応点の近くまで移動した。
「俺に行かせてくれないか」
「多分大丈夫だとは思うけど、危なくなったら加勢するからな」
ジムは俺に任せてほしいと言い出した。力試しをしたいのだろう。
「じゃあ、いくよ。用意はいい?」
「おう」
二人の魔術師が得意魔法で先制攻撃を行う。
「サンダーボルト!」
「ファイアボール!」
二つともオークに命中した。しかし、2発の魔法を受けてもなお突進してきた。
「ぶおぉぉぉぉー!」
オークは、持っていたこん棒を振り回しながら、怒り狂って迫って来る。
「とっとと来やがれ!」
ジムは持ってきた両手剣を構えて俺たちの前に立ち塞がった。
そこに、オークの持つ棍棒が振り下ろされる。
ジムはその棍棒の動きに、見事にタイミングを合わせて剣で左に逸らした。
「その程度か!」
ジムは振り下ろされた棍棒を逸らすことには成功したが、かなりの衝撃を受けたようだ。加勢しなくて大丈夫かなと思ったが、次の瞬間には右に移動しながらオークの左足を剣で切りつけていた。
「ぶおぉぉぉぉ!」
それを受けてオークは、痛さを堪えきれずに膝をついてしまう。
「もらった!」
すかさずジムは両手剣を上段に構え直してオークの首に振り下ろすと、オークは断末魔の呻きをあげながら前のめりに倒れていった。
「ふうーー」
「お疲れ!」
「こん棒は、結構な衝撃だな」
こん棒の衝撃を、この剣で受け止めるのは大変そうだ。
「前に言ってたけど…… ジムの武器、大剣に変えた方が良くない?」
「そうしたいけど、まだ筋力が追い付いてないんだ」
「じゃあ、今の筋力で扱える大剣があれば持ってみる?」
「ハハッ。そんなもん、あんのかよ」
そう、俺は大剣を魔道具化しようと考えている。
「オークの討伐は一応終わったから、一旦村に戻って報告しよう。そしてその後にアイアンリッジまで足を伸ばしたいんだ」
「アイアンリッジ?」
「魔道科の修業旅行の場所ね?」
エミーたちは、アイアンリッジが鍛冶の村だというのを知っている。
「もしかして……」
「うん、ジムの魔道大剣を作りに行く」
◇
そして俺たちはアイアンリッジに来た。
「ほうほう、久しぶりだのうアル坊」
とうとう、ガルッグ親方にも『アル坊』と呼ばれるようになった。
「お久しぶりです、親方。彼らは、同じパーティで活動中の俺と幼馴染の3人で、ジム、エミー、ミラと言います」
「ほうほう、アル坊の幼馴染かのう。わしはこの工房をやっとるガルッグだ。宜しくのう」
「「「宜しくお願いします」」」
返事がいいと、ガルッグ親方も喜ぶ。
「それはそうとアル坊がこの前に来た時のう、重ね板バネちゅうもん作らせたじゃろう? その後にのう、王都から大量のバネの注文が入って大変じゃったわい。ワッハッハッ!」
最初に王宮からの注文が、名指しで入ったのだそうだ。多分メグの仕業だな。
「大変じゃったが、がっぽがっぽ儲からせて貰ったわい。ワッハッハッ!」
「それならよかったです。それで今日はまた願いがあって来ました」
儲かってくれたのなら良かった。
「ほうほう、お前さんの望みだったら何でも聞いてやるぞ?」
「ありがとうございます。実は魔道大剣を作りたいんです」
「ほう、魔道大剣とな?」
俺は、魔道大剣について考えていることを詳しく親方に伝えた。
「それは新しい武器に分類されるじゃろうて、騎士団に届出をせんといかんじゃろうな」
「それは分かっています。ルノザールの領主様を通じて届けを出そうと考えています」
それを聞いて安心した親方は、さっそく大剣の製作に取り掛かってくれた。俺はと言えば柄の内部に仕込む魔法陣の開発をその間に行っておく。
「随分と親切にしてくれる親方さんだね」
「前に学園の修業旅行で来たんだけどさぁ、馬車の振動が大変だったから車輪と荷台の間に取り付けるバネを作って貰ったんだよ」
「ああ! あれってアル君が発明した物だったの?」
「実はそうなんだ。それから王都の王宮やら馬車工房やらから結構な量の注文が親方に入ったようだね」
「メグも言ってたわ。早く王宮の馬車も改良して、お尻が痒くならないようにするんだって」
やっぱりお姫様は、痒くなるようだ。
◇
それから3日後、ガルッグ親方との合作の逸品、魔道大剣が完成した。
「本当に作ってくれやがったぜ」
「でもね、これはまだ試作品なんだよね。だから未完成という名目でジムに使ってもらって、色んな細かい調整をこれからやる。まずは、ゆっくりとこれを振ってみて」
「おし、分かった……」
ジムは大剣を受け取って、恐る恐るグリップを握って振り上げた。
「おおっと、何だこれ!」
「何かまずい?」
「いや! めっちゃ軽いなこれ!」
「フン! フン! 片手でも振れるぞこれ!」
「どう、そろそろ馴染んできた?」
「うーん、ちょっとだけ重くなったり、動きが1テンポ遅れたりするんだよね」
「分かった。ちょっと貸して」
俺はグリップのセンサー感度や、魔道回路の制御量を再調整していった。女性二人は調整中の俺の方を不思議そうに見ている。
「出来たぞ」
改良した魔道大剣を再度ジムに渡し、再度振ってもらう。
「おおっ! 今度は俺の意志通りに動いてる感じ! めっちゃ気持ちいい」
「それなら、ひとまずはこれで完了かな。これは魔道具だから魔石が必要だけど、鞘に入れている時は魔力を充填するから、魔石の交換は不要だ」
鞘に、太陽電池を貼り付けた。
「それなら、魔物と戦っている時に魔石切れで急に重くなるっていうことは無さそうだな」
「まあそう思うけど、万が一のこともあるから予備の剣は必ず一つは身に着けるようにしてくれ」
「おう分かった。しかしこれ、魔法を発生させる剣だから、魔法剣……だよな」
子どもの時の様に無邪気にはしゃぐジムの顔、久しぶりに見たような気がする。
これでひとまず完了だから、新しい武器の届け出が必要だな。




