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第38話 魔力探知

 今回の魔術科の研修で、エミーたちの行方が分からなくなったことが、俺にはとてもショックだった。

 そして、自分に近しい存在が危険に晒されたとき、少なくとも場所が特定できれば打つ手が考えられるとも思った。


(あの時サマンサ先生は、『魔力探知を使っている』と言っていたよな……)


 範囲は不明だが、サマンサ先生はある範囲内で魔力を探知する魔法を使っていたはずだ。その時に発現した魔法陣を解析することができれば……。


 しかし、魔法陣の存在には気付かなかった。もしかすると、探知魔法の魔法陣は発現しないのだろうか? それとも、目に見えない魔法陣なのだろうか?


(うん、これは本人に直接聞いた方がいいな)


 俺はサマンサ先生の部屋を訪ねた。



「今回の討伐研修では、アルフレッドさんには随分とお世話をかけましたね」

「いえ、大した事はしていませんので。それより今回の件、原因については何か分かったのですか?」

「今、王宮騎士団が現場に行っていますよ。原因はまだ分かっていませんが、何か異常が見つかると思います」


 あの後、魔道学園から北西の森は立ち入り禁止になった。

 通常は現れない魔物が確認されたことで、王宮騎士団が森を閉鎖して調査を行っているが、学園を退学した元生徒の目撃情報もあったとの事。


「ところで、エミリーさんはもう大丈夫ですか?」

「あの後は落ち着きを取り戻しました。でも、もっと前に危険を検知できていれば、彼女たちを危険に晒すことは無かったなって思ったんです」


 丁度いいから、サマンサ先生に魔力探知の魔道具を作りたいことを話して、協力をお願いしてみる。


「そこで今日先生を訪ねたのは、先生が魔力の探索をされていたのを思い出しまして。その探知魔法を発現する魔道具が作れたら、役に立つんじゃないかって思ったんです」

「そうですね。『サーチ』のような魔力探知を行える魔道具は、現在開発されていませんね。結構難しいのではないでしょうか」


 探知魔法も基本魔術の1つなので、魔法陣が発現すれば解析が可能だと思うのだ。


「先生がその探知魔法を使うとき、魔法陣って発現しないんでしょうか?」

「発現しますよ?」

「えっ? でも、俺には見えませんでしたよ」

「フフフ、見えないでしょうね。サーチ魔法の魔法陣は地面より下の方に発現するので、見えないのです」


(地面の下かー、それは想定外だった。参ったな)


「先生、何とか地面の上に魔法陣を発現させることはできないのでしょうか?」

「できますよ。 ……私が椅子の上とかの高い所に立てばいいんですよ」

「なるほどー」


 思わず感心してしまった。


「でも探知の魔法陣は結構複雑ですからね、簡単には写せませんよ。私もそう長くの時間は発現させられないですからね」

「どのくらいの時間発現させられるんですか?」

「そうですねー、10秒くらいの時間だったら何とか」

「それだけあれば十分記録することが可能です」

「……冗談、ですよね?」


 先生は俺の返答に、お疑いを持たれているようだ。無理もない。


「ダメだったら諦めますが、それでもやってみたいのです。なんとかお願いします」

「10秒以上は出来ませんからね」

「はい、分かっています。でも、どうしてもお願いしたいです」

「分かりました。でもここは狭いので、隣の棟の屋内練習場に行きましょう」


 説得を重ねて、何とかやってもらえることになった。


 魔術研究棟と女子寮の間に建っている、魔術の屋内練習場にやって来た。

 魔術科長室にあった丸椅子を持参しなければと思っていたら、『もっといいのが屋内練習場には有りますよ』と言われた。来てみればなるほど、脚立の上に棒が立っている。


(いったい、どういう練習に使っているのだろう?)


「私の探知魔法の魔法陣の直径は4マタールほどになりますが、大丈夫ですか?」


 直径が4mということは、半径2mか。このくらい離れればいいかな。


「はい、大丈夫です。準備できました」


 そう言いながら、MR装置の動画記録をONにする。


「では、早速いきますね。サーチ!」


 薄青色の奇麗な魔法陣が脚立の周りに発現した。魔法陣が回転しているから、俺はその場に立ったままで全ての魔法陣が記録できた。


「はい、すべて記憶できました」

「えっ、もういいのですか? まだ5秒も経ってませんよ?」

「はい、全て記憶しました」


 サマンサ先生は、訝しげに俺を見ている。記憶というのは、頭ではなくMR装置に記憶させたのだから嘘ではない。だから、嘘をついている様には見えないだろう。


「あなたの目と頭は、いったいどうなっているのでしょうか?」


(「興味が湧いたから割って中を見てみたい」とか、どうか言わないでほしい)


「サーチの魔道具、出来たらお見せしますね」

「そんなに自信満々に言われると、何だか期待してしまいますね。でもこれが出来れば大変な事ですよ? でも、あまり期待はしないようにしておきますからね」

「はい、お任せします」


 俺は魔道科研究棟に用意された自分の研究室に入り、早速サーチの魔法陣の解析に取りかかった。


「ふむふむ、ここは発信でここが受信か。その他にも変調や検波に相当する様な所もあるし、やはり、地球にあるレーダー装置のような感じかな」


 サーチの魔道具にも地球の知識が応用できそうだ。


 サーチ魔法は、雷魔法と風魔法の応用形だ。雷魔法で魔力が反応する電気のような物を作り、それを風魔法で振動させて遠くまで飛ばしている。


 そして、魔力に遭遇すると反射して戻ってくるという性質を利用し、それをまた雷魔法で検知して方向と距離を割り出しているのだ。


 俺は、アンテナを魔道モーターで回転させながら全周囲の魔力を検知し、表面の円卓上に緑色のサーチ結果の画像が表示されるような装置を考えた。

 かなり前の、航空管制塔のレーダー装置みたいな感じだ。

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