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第18話 昇格試験

 ルナの町は、ルナ迷宮に籠る冒険者のための宿場町として作られた町だ。


 かなり前に、ルノザールの街から南に40キタールほど離れた場所に迷宮が突然発生した。それからは迷宮のお宝や魔石を求めて、方々から冒険者が集まるようになったのだ。


 この国に迷宮は4か所存在しているが、このルナ迷宮の規模がいちばん大きいと言われている。迷宮に隣接したこの宿場町ルナが、ここまで繫栄しているのはその為だ。


 朝の鍛錬と夕方のギルド長との訓練は、その後も休みなく続けている。

 収穫の季節ももうすぐ終わろうとしているが、Fランク冒険者としての義務である薬草採取やゴミ拾いなどの初級依頼も、魔道具屋が休みの日に数をこなしており昇格試験の受験条件を無事クリアした。


 そして俺は今日、迷宮に潜ることが事が許されるEランクにランクアップするための昇格試験を受けるべく、冒険者ギルドを訪れている。


「おはようございます、リリアンさん。今日は昇格試験を受けに来ました」

「おはようございます、アルフレッドさん。ギルド長から聞いていますよ。無事合格できればいいですね」


 受付嬢のリリアンさん。依頼を完遂するための知識が豊富な、とても頼りがいのあるお姉さんだ。


「では、早速訓練場のほうに移動して準備をしておいてください。ギルド長にはこの後すぐに連絡しておきますので」


 この訓練場では、夕方いつもギルド長から訓練を受けているが、今日はまだ午前中だ。しっかり準備運動をしておかなければ体が動かないだろう。

 俺は1周で400mトラックくらいある訓練場の周りを走り始めた。どんな運動でも、走り込みは基本中の基本だ。



「ではこれより、アルフレッド君のEクラス昇格体術試験を始める」


 ギルド長が宣言する。俺は今回、前衛職としての試験を受ける。試験は体術試験と学科試験の両方をクリアしなければならない。


「Eクラス昇格体術試験のクリア条件は、冒険者ランクDクラスの資格者からの模擬剣での攻撃を1分間耐えきれればクリアです。気を失ったり膝をついたりした時点で試験は中止となります。今回は特別にギルド長がDクラスのレベルでお相手をしてくださいます」


「俺はDクラスのレベルがどの位かを体で覚えている。いつもの午後の訓練でやっているようにやれば、1分は簡単に耐えられるはずだから頑張るように」

「では時間を測りますから、ちょっと待ってくださいね」


 リリアンさんは箱から砂時計を取り出した。


「アルフレッドさん、準備はいいですか?」

「はい」


「では、開始してください」


 リリアンさんが砂時計をひっくり返した。


 いきなり! ヴァルターさんが踏み込んできた。

 間に合わない、サイドステップを踏んで横に交わそうとするが、それにも追随してくる!


「がっ!」


 上からの振りおろしを剣で止めようと試みたが、力負けしてしまい脳天に衝撃が走る!


「くっ」


 しまった! 視界がブレる。しかし、何とか踏みとどまることに成功した。

 いきなりかよ、と思ったが、最初から気を抜いていた俺が悪い。この頭頂の痛みで逆に冷静になれた。これからは気を引き締めていくぞ。


 それからは、ヴァルターさんの剣筋をしっかり見て、いなす、いなす、いなす。

 耐えに耐え抜いたが、息はもう絶え絶えだ。


「そこまです! 1分が経過しました。アルフレッさんは立っておられますので、おめでとうございます! 合格です」

「最初でダメかと思ったがよく耐えた、アルフレッド。これで体術試験は合格だ」

「ありがとうございます!」


 1分間は短いだろうと思っていたが、実際にやってみるとかなり長く感じる。


「少し休んでください。その間に学術試験の説明をしますがよろしいですか?」

「ハイ……  お願いします」


 うまく言葉が出ない程、息が上がってしまっていた。


「学科試験は、体術試験の合格後から3週間以内に受けて合格しなければなりません。もし、それまでに学科試験に合格できなかったら、再度体術試験からの受験となります」


(この体術試験が無効になるっていうのか! このタイミングでそれを言うんだ)


「学科試験には魔物に関する知識、迷宮探索での規則、算術問題などが出題されます。そして学科試験はいつでも受けることが出来ます。勿論、今日でも可能です。どうされますか?」

「はい、今日受けます」


 この日のために、時間があれば資料室にこもって知識を身に付けてきたのだ。 あ、もちろんMR装置は装着しての話。


「では、午後からの試験になりますので、休憩後に2階の教室まで来てください」


◇◆◇


 そんなこんなで、俺は今、Eランク冒険者のギルドカードを手にしている。

 学科試験は難なく合格することが出来たのだ。



 昇格試験を受けた次の日、魔道具屋の仕事を終わった俺はガレットさんの鍛冶屋を訪れた。ルナ迷宮に潜る準備をするためだ。


「剣は、両手剣がいいですね」


 冒険者ギルドでは、両手剣での練習を続けてきたのだ。盾と片手剣というスタイルもあるけれど、魔物相手の場合は両手剣が一般的だ。

 中には剛腕が必要な大剣を持っている人もいるくらい、迷宮の魔物は結構固いのだという。


「だろうの。して、長さはどのくらいにしようかのう」


(柄は腰に下げるから、右手で簡単に抜き差しできる長さといえば60cmくらいか?)


「6テール位がいいんじゃないかな?」

「いいや、アル坊には5テール位がちょうどいいサイズじゃろ。これからもっと体は大きくなるだろうが、その時には下取りで買い替えればよいのだ」


「それでお願いします」


 それから、魔道ライフルを少し小型にしたものを持ち歩きたいと考えている。


「ガレットさん、これは俺専用の小型魔道ライフルの設計図です。魔道ライフルは先日騎士団にて正式な武器として登録されたと聞きました。剣にも大小あるように、魔道ライフルにも大小あっていいんですよね?」

「そうだの、原理や基本構造が同じであれば、同類とみなされる。どれどれ…… これだったら同類とみなされるはずじゃの」


(良かった、形が変わればダメって言われないか気になっていたんだよね)


「これは俺専用の武器にしようと考えています。この部分の製作をまたお願いしたいんですが」

「よし分かった、また1週間ほど時間をくれるかの」

「大丈夫です、宜しくお願いします」

「あと、これはわしからのEランク昇格祝いじゃ」


 お、腰に巻くタイプの小物入れか。基本魔石が必要なだけだから、大きなリュックとかは必要ない。魔石入れとして、大きさ的には丁度良かった。


「ありがとうございます。このサイズだと俺にぴったりです」


 有難く頂戴した。



 ちょうど1週間後に専用ライフルの筐体は出来上がった。体格に合わせてグリップとトリガーの位置を調整したのと、真っ直ぐに飛ばすためのバレルは風魔法で実現しているから実は長さもさほど必要がない事が分かった。


 あと、バックプレートからグリップまでの距離も少し短くしたので全体的にこじんまりした感じになった。


「ガレットさん、ありがとうございます。 って、だいぶ軽くなっていますね」

「ああ、アル坊には出来るだけ軽い方がいいと思っての、材料を替えてみたのじゃ」


(アルミ合金みたいな感じかな?)


「鉄じゃあないようですが、この金属は何ですか?」

「それはの、ミスリルじゃ」


(ミスリル! キマシター!)


「えっと、もしかして魔力を帯びることが出来る材料ですか?」

「よく知っとるの、その通りじゃ。まあ何も細工せんかったら鉄より軽く、そして鉄より硬いというだけじゃがの、魔道回路で細工をする魔道具に使うにはもってこいの材料になると思うがの」


(なるほど、魔道回路の魔力通りが良くなるのかな。いろいろ試し甲斐がありそうだ)


「ミスリルって高いんじゃないですか?」

「まあの、アル坊には儲けさせて貰っとるからの、これくらいは恩返しせんとのう」

「ありがとうございます。これからもまた、宜しくお願いします」

「程々に頼むの」


 それから更に1週間かけて、自分専用の魔道ライフルが完成した。

 ミスリルで強度が確保できた分だけ肉厚を薄くできたので、プラスチック製水鉄砲とまでは軽くはないが、構え歩きをしても腕が凝らなくなった。

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