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凛の剱は折れていない!  作者: 池見航海
第2章 激突!穂希田南高校vs豪木町高校
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穂希田南高校vs豪木町高校

ついに始まった練習試合。互い一歩引かないまま試合が続いていく。その中でそれぞれの思いが交錯していくのであった…。

 雨の降りそうな曇り空の中、穂希田南(ほまれだみなみ)高校の体育館1F剣道場にて豪木町(ごうきまち)高校との練習試合が始まった。白い胴着と袴の穂希田南(ほまれだみなみ)高校に対し、豪木町(ごうきまち)高校は白い胴着に黒い袴の組み合わせで統一されている。


 両者試合場の中央で対面し、礼と「よろしくお願いします」の掛け声から始まる。


 試合は時間は3分。5人制の団体戦。


 審判は両校の顧問と豪木町(ごうきまち)高校の控え選手の3人が受け持った。


先鋒


穂希田南(ほまれだみなみ)高校 

2年 高杉 風見(たかすぎかざみ) 

  

  対 


豪木町(ごうきまち)高校

2年 宮部 由利(みやべゆり)


 両者試合場に立ち、竹刀を構え蹲踞をし、試合の開始を待つ。


「始めぇ」


 豪木町(ごうきまち)高校の顧問、梅田先生の合図で試合が始まった。


「先輩、相手の宮部先輩ってどんな人なんです?」

「あぁ、ゆりゆりは相当強いぞ。選手層の厚い学校の中、2年でレギュラーを取ってるからな」


 凛の疑問に薫はそう答えた。


「だが風見も強い。これは俺が保証する」


「小手ぇ!」


 風見は由利の面を打とうしたところ出鼻をくじき小手を放つ。


「小手あり」


 3人の審判は風見側の審判旗を上げ、一本であると告げる。そしてこの一本が決定打となり、時間切れで風見の勝ちとなった。


「さすが我らの先鋒。いい仕事をする」

「たまたまよ。実際私とゆりゆりは五分五分だもの」


 風見は薫の労いにそう答える。

 五分五分とはいいつつしっかり勝ちを取ってくるあたり、さすがだと薫は感じている。


次鋒


穂希田南(ほまれだみなみ)高校 

1年 榊原 音穏(さかきばらねおん) 

  

  対 


豪木町(ごうきまち)高校

3年 三木 洲桃(みきすもも)


 この試合は完全に経験差が表れた。音穏(ねおん)自体は決して弱くはない。しかし相手が格上だった。一本は取り返したものの、1-2で負けてしまった。


『すみません』

「しゃあない。さすがの常勝校の強みが出たな」


 音穏(ねおん)は自分の不甲斐なさを謝ったが、薫は要稽古という形で慰めた。


中堅


穂希田南(ほまれだみなみ)高校 

3年 坂本 涼子 

  

  対 


豪木町(ごうきまち)高校

3年 北添 春香(きたぞえはるか)


豪木町(ごうきまち)高校のナンバー2ね」

「古鷹さんに次いでの実力者だ」


 薫と風見は、後輩たちにそう解説する。

 涼子自身も自分が勝てる相手出ないことは分かっていた。


「だが先輩の強みはそこじゃない」


 薫はそう話す。


 完全に格上な相手。涼子は、高い壁に物怖じせずに立ち向かう。自分の間合いをきちんと理解し、相手の好きなようにはさせないように立ち回る。事実、相手選手も攻め手にかけていた。そして、3分間の試合時間が終わり、引き分けとなった。


「どんなに強い相手でも引かずに立ち向かい、一本を取らせない。涼子先輩のすごいところね」

「ただ、押されてるときに勝ちきれないのが玉に(きず)なんだよなぁ」


 称賛する風見に対し、薫は欠点を続ける。


「ははぁ~…よくご存じで」


 その事実を自分でよく知っている涼子は心にぐさりと刺さった。


 薫はそうも言うが、高校生から剣道を始め、剣道の経験が長い相手に対し、自分の剣道で立ち向かうのはすごいことだと内心思っていた。


 豪木町(ごうきまち)高校サイド


「新しいチームだがよくやるじゃない。去年までとは大違いだ」

「すまない千鶴。私がしっかり勝ち切っていれば…」


 中堅の北添春香(きたぞえはるか)が千鶴に主将の古鷹千鶴(ふるたかちづる)に謝る。


「それだけ相手が強かっただけのことさ。それに最初から少し流れが向こうに傾いてたのもある」


 千鶴はそう伝え、由利に目を向けた。


「しっかり稽古して必ず勝てるようにします」

「その前に由利を薫に差し出すか」

「それだけは勘弁してください~」


 千鶴にそう話す由利であったが、薫に差し出すという言葉に拒否反応が走った。由利自身。薫のことは戦友としてみているが、度々いたずらの標的に晒されているため参っていた。


 そんなやり取りの後、千鶴は相手チームの涼子へ目をやった。


 薫と風見が入るまでは、今までの穂希田南(ほまれだみなみ)高校の先輩同様、抜けたところがあった。そこから部長にまでなり、チームをまとめるまでわずか2年でやってのけている。よく成長していると千鶴は感じていた。


「彼女らの剣道に対する強い気持ちに充てられたのもあるかな」


 千鶴はそう独白した。


 審判サイド


 穂希田南(ほまれだみなみ)高校剣道部顧問、山崎進介(やまざきしんすけ)

 自分のチームが押しているという事実に驚く一方、自分の力のなさに嘆いていた。


(芹沢と高杉はよくやっている。俺がいないところで初心者だった坂本をここまで育てたのは紛れもなく彼女らだ。それに対し、俺は指導者としての経験も浅い…)


 そして、過去を思い出す。


「剣道部の顧問ですか?」


 4年前にこの学校に異動した際、剣道部の顧問に指名された。確かに剣道の指導資格である3段は保有していた。しかし、教師としての職務を全うするため、剣道を離れていた。

 

 当時は前任者の顧問が有名だったこともあり、公立高校でありながら人が集まり、インターハイ出場もしていたという。最初こそは、強い選手もまだ残っていた為、それなりの成績を残していたが、次第に地方予選の突破もままならなくなった。


 次第に自分の指導方法が明確に定まらず、縮小していった。


 そして今日の合同練習の昼休憩にて


「山崎先生、またうつむいてますよ」

「すいません」


 監督室で昼食をとっている最中に豪木町(ごうきまち)高校顧問の梅田から山崎に指摘した。山崎自身も梅田の指導方針等を学び、助けられていた。


「この高校に赴任して、4年も時間が立っているのにまだ答えが見つからないんです」

「そうですかな?山崎先生はうまくやっていると思いますよ」


 弁当を食べながら、できていないと山崎は自分を否定しようとするが梅田が続ける。


「別に剣道をうまくやろうとするだけが剣道ではないんですよ。内面の成長だって十分剣道につながりますよ」


 若く行動力のある山崎をそう評価した梅田だった。


 そして中堅戦まで終わり、試合中であったが山崎のもとへ薫と風見が駆け寄った。


「どうですか先生?結構いけてるでしょ」

「そうだな。芹沢と高杉のおかげレベルも上がった」


 薫に対しそう感想を述べる山崎。


「えっ…でも、前回の大会で豪木町高校に負けた時、俺と風見のミスを指摘してくれたの先生じゃん」

「そうでうよ。そこからビデオを見返して修正したんですから」


 山崎の返答に対し、薫と風見そう答え、試合中であるためその言葉を残し、それぞれの持ち場へ戻った。


(僕の…指摘…)


 山崎が内心そう思う中、対面側でそのやり取りを見ていた梅田はこう独白する。


(山崎先生、それでいい。指導者を長年やっているわたしでさえぶつかる壁があるのだから)


(生徒である彼女たちからも学べる。そして彼自身も深く勉強している。今は大会で結果が残せなくても大きく花が開けますよ)


 声には出さなかったが、梅田は山崎にそうエールを送った。


 そして、副将戦。凛と芳乃の戦いが始まろうとしていた。


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