過去との決別
凛の様子がおかしいと感じた薫は、中村芳乃との関係のこじれが原因であると考える。そして、稽古は進み、午後は豪木町高校との練習試合になった。
穂希田南高校と豪木町高校の合同練習が始まった。
粛々と稽古が行われていく中、凛の様子がおかしいと薫が気にかけ、近くにいた桃香に尋ねた。
「河上さんの様子がおかしいがなにかあったか?」
「はい…、豪木町高校の中村芳乃さんという人と話してからずっとこんな感じです」
「そうか…」
薫は怪訝に思い、休憩時間に豪木町高校主将の古鷹千鶴を尋ねた。
「古鷹さん、ひとつ聞いておきたいことがあります」
「なに?」
「1年生の中村さんの件なんですが――」
薫は千鶴と話し、凛の不調の疑問が解けた。
芳乃が凛と同じ佐々木剣友会に所属していたこと。凛の様子から、芳乃自身に強く当たられていたのだろうと薫は考える。
「どう?謎は解けた?」
「思ったより事態は深刻だな」
心配そうな風見に薫はそう告げた。
「不安になってる後輩は~、先輩の私たちが守る」
話を聞いていた涼子は唐突にそう話す。
「誰だってそんなことあるよ~!だからこそ守らないと!」
涼子は熱弁し、凛を呼び寄せる。
「だから、凛ちゃんも自分一人で抱え込まずに頑張って~」
「あ…ありがとうございます」
涼子に唐突に頭を撫でられたのと、急に下の名前で呼ばれたことに驚いた凛だが、稽古中、自分の頭の中に渦巻いていたものが少し和らいでいるように感じた。
「あー!涼子先輩ずるい!俺が一番最初に親しみを込めて後輩たちを下の名前で呼ぼうと思ったに!」
「桃香ちゃん、音穏ちゃん、いったん集合」
薫を尻目に風見も後輩を下の名前で呼びつつ、この場に集合させた。またも抜け駆けを許した薫は、悔しがっていた。
「午後から、豪木町高校と5対5の団体戦の練習試合があります~!っていうことで今回のポジションです」
涼子は午後の練習試合の説明をし、同時にポジションを発表した。
穂希田南高校
先鋒 2年 高杉 風見
次鋒 1年 榊原 音穏
中堅 3年 坂本 涼子
副将 1年 河上 凛
大将 2年 芹沢 薫
「久しぶりに5人そろったわね」
「おぉ、腕が鳴るぜ」
風見と薫はそれぞれの感想を述べる。
『不足はないです』
「私は応援頑張ります」
音穏はそのようにスケッチブックに書き込み、桃香は応援に徹することにした。
(副将…)
凛は内心思う。
奇しくも4年前の最後の試合と同じポジションである。先輩たちに自分の悩みを寄り添ってもらい、自分自身を見つめなおし、凛はそのことは考えずに稽古に集中しよう思った。
しかし、事態は思うようにはいかなかった。
午後の練習試合のお互いのポジション表がホワイトボードに貼られる。
豪木町高校
先鋒 2年 宮部 由利
次鋒 3年 三木 洲桃
中堅 3年 北添 春香
副将 1年 中村 芳乃
大将 3年 古鷹 千鶴
副将、中村芳乃。
この事態を見かねた風見は凛に問う。
「凛ちゃん、このままで大丈夫?」
「いけます。このままやらせてください」
剣道を再び始め、かつての仲間と対峙する。そして弱かった自分を超えていくために。
(今までの自分とは…決別する)
凛はそう心の中で誓った。




