表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の悪意の物語  作者: 王立魔法学院書記官
2.神さまがおりたつ丘
45/204

17 混沌の祭り 降臨の儀式

 パチパチとはぜる円形劇場の篝火かがりびが、舞台中央のアエデスと、その前に並ぶマルコとアルを照らしていた。

 そして、アエデスから少し距離を置いてとなりでは、神官戦士のドワーフ、ゴードンが棒を何本も背負っている。

 舞台の周りは、剃髪ていはつの神官とドワーフ戦士が何人も取り囲んでいた。


 マルコがゴードンに目をやると、いつもは快活に見開いている目がどんよりと沈んでいる。

「何かあったのかな?」マルコはあやしんだ。


 劇場の観客たちは、いつもとは違う流れに、何が起こるかとかたずを飲んで見守っている。大観衆の注目が生み出す独特の緊張が、舞台の上に集まっていた。

 アエデスがおもむろに声をあげる。


「アルフォンス・キリング!

 そなたの用いる神の善意、グリーの姿を見せよ!」


 その迫力にアルは気圧されて一歩下がり「な、な、なんで?」とうろたえた。

「わしを信じよ!」アエデスが小声でささやく。


 アルは深く一息吐くと、手に持つ杖の先から紐をほどいて、暗い袋を取り外した。

 神の善意、グリーと呼ばれる白い石があらわれ、テンプラムの円形劇場を全て照らすほどに、まばゆく光り輝いた。

 それを目にした観衆は皆、大きな息を吐くと、少しずつ、さざ波のように歓声を上げはじめる。

 一方、舞台外側の神官たちは、一斉に両腕を回し手で印を組みつつ何か唱える。


「見よ! この恩寵を! 我々に希望、幸福、そして力を与える神の恵みである!」


 アエデスが声を響かせる中、グリーから次々と柔らかい雲のような光りが漂い、劇場中に散らばっていった。

 観客はその奇跡に感動し、涙を流す女もいれば、興奮して腕を上げ叫ぶ男もいる。

 無邪気に雲へ手を伸ばし、目を輝かせる幼子もいた。


「次に、マルコ・ストレンジャー!

 そなたが持つ神の悪意、マリスを高くかかげよ!」


 アエデスが「わかっておろう。安心せよ」とささやき、すわった目でマルコを見据える。アルがこれ以上なく目を見開いてこちらを見る。

 マルコはいろんな緊張が混じる中、震える手で、なんとか黒い石を袋から取り出した。ゴードンはそれを見て驚愕し、目を見開いて口をぽかんと開いた。


 神の悪意、マリスと呼ばれる小さな石は、異邦人マルコの指につままれ、舞台の上で高くかかげられた。

 神官の数人が悲鳴を上げその場で崩れ落ちる。他の神官たちは、追われるように早口で詠唱を続ける。

 観衆は、黒い石があまりに小さいので、遠くからだと何がなんだかわからなかった。

 わめくようにアエデスが叫んだ。


「備えよ! この災いに! 我々に邪心、狂気、そして絶望を与える神のあやまちである!」


 そして、黒い石から赤い光りが放たれると状況は一変した。

 赤い光りは鋭い一筋となり、観客席を舐め回すように照らした。光りをまともに見た者は苦しみに悶えて絶叫し、その姿を目にした者は恐怖で動けなくなる。白い雲で光りを防げた者も、かつてない不安に襲われた。


 アエデスが急ぎ詠唱して腕を交差し、そしてこう叫んだ。


「神の恵みとあやまちを混ぜ合わせ混沌を産む!

 出でよ! ディオニソスよ!」


 その時、指でつまむマリスの石が、小刻みに振動するのにマルコは気づいた。

 小さい石は、ブブブブブ……と何かを告げるように震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=371337516&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ