第12話 王宮にて
ソティアスは、父リキドに頼まれて王宮に行く事にした。
4等級地区の武器屋の前を通る時にミールとエストが言っていた刀の事が気になり店の中を覘く事にした。
「おはようございます。いらしゃいませー」
「おはようございます」
「本日は何をお求めですか?」
「刀を見せて下さい」
「はい……此方になります」
「同じ刀でも安いのと高いのかあるんですね?」
「はい、高いのは有名な名工が作られた一品です。安いのから普通の刀は、修行を終えた刀鍛冶から一人前になった刀鍛治の品です」
「有名な名工のには刀に名前があるんですね」
「ええ、東の国の王が認めた名工だけが刀に名前を付ける事が許されているみたいです」
「成程……切れ味は、変わりますか?」
「腕にもよりますが……名刀で大岩を力を使わないで真っ二つに斬る事が出来るそうです」
「凄いですね……この”氷河”をください」
「有難う御座います。名刀氷河でよろしいですね……八百万マルテになります」
「魔石でよろしいですか?」
「はい、構いません」
「銀魔石で2個でお願いします」
「はい、この大きさなら大丈夫です」
「有難う御座います」
「有難う御座いました。またのお越しをお待ちしております」
ソティアスは、刀を指輪に収納し、再び王宮へ歩き始めた。
2等級地区に入ると前日の王都憲兵に見つかってしまった。
「お早う御座います。フォルティス大将軍のご子息さま、お会いできて光栄です」
「おはようございます。そんなに畏まらないで下さい」
「ハッ! で、本日はどちらへ?」
「王宮へ……父が病気の為休む事を伝えに参ります」
「そうでしたか……本日もご案内させて頂きます」
「いえ、一人で大丈夫です」
「私達が御一緒でしたら他の兵に余計な質問をされる事は御座いません」
「……昨日みたいになるのは少し困ります」
「……ならないようにします」
「分かりました。よろしくお願いします」
「{ハッ!」
ソティアスは、また王都憲兵の二人をお供に王宮へ向かった。
王宮に到着し入口にいた王宮警備隊に話し掛けた。
「初めまして、ソティアス・フォルティスと申します。父リキド・フォルティスの代理で参りました」
「大将軍のご子息様ですね! 御用はなんでしょうか?」
「……本日、父リキドは、体調不良の為に休みをとらせて頂きたく思います」
「ハッ! 連絡をしてまいりますので暫くこちらへお待ちください」
「は、はあ……いえ、分かりました」
王宮警備隊が報告に行った後に王都憲兵がソティアスに話し掛けてきた。
「どうかされましたか?」
「いえ、何となく嫌な予感がします」
「ハァ! 嫌な予感ですか?」
「気のせいならいいんですけど」
ソティアスが王都憲兵と話をしていると報告に行っていた王宮警備隊が戻って来た。
「ソティアス様、お待たせ致しました」
「いえ……なぜ、そんなに畏まっているのですか?」
「そのような事は御座いません」
「……で、では、失礼致します」
「お待ち下さいソティアス様、国王がお会いになります」
「!? なぜ、国王様が僕とお会いに?」
「私は、存じ上げません」
「このまま帰る訳に行きませんか?」
「お止め下さい。私の首が飛びます」
「……分かりました。お会いします」
「有難う御座います」
ソティアスは、謁見の間に通された。謁見の間には王、王妃、各貴族、魔術師、将軍等かなりの人数がその場にいた。
「お初にお目に掛かります。リキド・フォルティスの息子ソティアス・フォルティスです」
「うむ、わしがイストリア国国王ハイマート・レイノ・イストリアじゃ」
「イストリア国王妃マリー・レイノ・イストリアです。ソティアス殿、よしなに」
「はい、よろしくお願いします」
「ソティアス殿、私からよろしいかな?」
「はい」
「私は、イストリア国筆頭宮廷魔術師のオスター・グリフです。そなたの父フォルティス大将軍が常日頃から息子自慢をするものでな……一度会ってみたいと思いこの場を用意した」
「父はなんと?」
「読み書き、算術、剣術は一流、魔術は超一流、将来は世界一のS級魔術師になると言っていた」
「……それは、大袈裟です。父は親馬鹿ですから息子に対する評価が甘いのです」
「謙遜しないでよい先日は盗賊を70名ほど捕まえたそうではないか」
「私一人で捕まえた訳ではありません。姉二人と捕まえた事です」
「盗賊達から聞いた話では、姉二人と捕まえたの者もいるみたいだか……ほとんどの盗賊が黒髪のガキ一人にやられたと報告している」
「……黒髪が珍しいからそう思い込んでいるだけではありませんか?」
「そうかな?」
「……」
「此方には、そなたの各種ランクの情報が来ておるのだが……6才とは思えない能力だな」
「……ありがとうございます」
「本日、この後はお時間ありますかな?」
「はい、ありますが……何かご用でしょうか?」
「ソティアス殿の魔術のお力をお見せ頂きたい」
「力ですか? どのような方法でですか?」
「対戦方式で頼みます」
「対戦者どなたですか?」
「対戦者は、宮廷魔術師第二位、次期筆頭魔術師のオネスト・コルカールだ。試合場所は宮廷の庭、試合方法は魔力の差が一番わかる下位魔術の初級のみの使用で気絶させた方が勝ちだ」
「……了解しました」
国王、王妃を筆頭に全員が王宮の庭に移動する。ソティアスは、集団の一番後ろを歩いている時に話し掛けられた」
「よお! リキドの息子」
「!? はじめまして」
「ああ、俺は、リキドと同じ四人の大将軍の一人リュセ・ロータスだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
「今日は、リキドに騙されてきたんだろ?」
「はい、何が企んでいるとは思いましたが、まさか……こんな事になるとは」
「ははは、今回の事は、リキドが悪い……何があるとうちの息子は凄いとか自慢話ばかりしていたからな」
「! 父様……」
「父親の尻拭いと思え」
「はぁー……ロータス大将軍」
「ん! なんだ?」
「この試合は、負けた方がいいのですか?」
「何故だ?」
「対戦者は次期筆頭ですよね? それに……おそらく大貴族ですよね? 僕が勝ってしまったらどんなことになるが分かりません」
「……成程……自慢するだけあって頭はいいみたいだな……気にしないでいい、次期筆頭は才能あるのをいい事にやりたい放題で皆が困っている」
「困っている?」
「才能があるし将来有望で……顔もいいから……女にモテる」
「……」
「未婚の女に手を出すのはいい……だが……奴は、既婚の女にまで手を出す」
「そうなんですか?」
「ああ、それも身分や年齢に関係なく手を出す。……平民の娘や奥さんから貴族のお嬢様から奥様まで手を出しているから……各種方面の男性から苦情・陳情が毎日のように来る」
「……もしかして、ロータス大将軍も……ですか?」
「……ああ……俺の所は……娘二人に妻にまで手を出された。奴が手を出さないのは王妃だけだ」
「大将軍のお立場で何とかできないのですか?」
「……身分で言えば、大将軍より次期筆頭魔術師の方が上なんだ」
「何故ですか?」
「この国では、筆頭魔術師は、内政の全ても取り仕切っているからだ」
「では、今の筆頭魔術師が言えばいいのでは?」
「才能だけで言えば今の筆頭より上なんだ。奴が筆頭になりたいと言えば今のは、辞めさせられて、尚且つ下で働かされるようになる」
「それは大変ですね……で、なんで僕が試合を?」
「……奴の伸び切った鼻をへし折ってほしい……上には上がいる事を教えてやってほしい」
「……本当に勝ってもお咎め無しですか?」
「本当だ……殺さない程度にやっつけてくれ」
「……分かりましたけど……あまり期待しないで下さい。僕は相手の事を全く知らないのですから」
「それでいい……頼むぞ」
ソティアスとロータス大将軍が話をしながら移動していると二人以外の人は、庭に到着したみたいで立ち止まって待っていた。
「お待たせ致しまして申し訳ありません」
「気にしないでいい……準備をしなさい」
「はい」
「準備が出来たら真ん中の印の所で待機を……対戦者はもう来ている」
ソティアスが真ん中の印に向うと相手が来ていたが大勢の女性に囲まれていた。それを見ていた男性達は、無言で睨んでいた。
「ソティアス殿、準備はよろしいか?」
「はい、大丈夫です」
「杖はどうした」
「杖は、持っておりません……杖で魔術を使うと相手を殺してしまいますから」
「そ、そうか……無いなら構わん……オネスト・コルカール、時間だ準備をしなさい」
「はいはい……皆さん、少し離れて見ていて下さい」
「「「「「はーい」」」」」
オネスト・コルカールが女性達を離れて見るように言った後、ソティアスを見て、一度溜息を吐いて話し掛けてきた。
「俺の相手がこんな子供ですか? 冗談でしょ?」
「オネスト・コルカール……冗談ではない彼が対戦相手じゃ」
「ハッ! 国王様」
「なら準備をせよ」
「ハッ!」
「試合形式を確認する。試合は、下位魔術の初級のみの使用で気絶させた方が勝ちだ……両方よろしいか?」
「「ハッ!」」
「君……リキド大将軍の息子の……ソティアス君と言ったかな」
「はい」
「俺は、こんな事に時間を掛けたくないので、早めに終わらせるけど悪く思わないでね」
「はぁ」
「両方、準備が出来たようなので、試合を始めます。国王に宣誓を」
「「国王様の御前で正々堂々戦うことを誓います」」
「よし……オスター・グリフ、試合の合図を」
「ハッ! ……両方、正々堂々と力の限り戦いなさい……試合開始!」
試合開始とともにオネスト・コルカールは、詠唱を始めた。
「火の精霊よ汝の力の一部を我に貸し目の前の敵を倒す力を与えたまえ・・・”火玉”」
オネスト・コルカールは、”火玉”を放った瞬間に勝ったと思いソティアスに当たる所を楽しそうに見ていた。
「もう、防ぐのは間に合わないだろう」
ソティアスの目の前に”火玉”が飛んで来たが”風壁”を唱えた。オネスト・コルカールは、一瞬驚いたがその後に馬鹿にし始めた。
「この距離で魔術を唱えたのは驚いたが火魔術に対して風魔術で防ぐなんで無理だ……そんな事も知らないとは、やっぱり子供だな」とオネスト・コルカールが思った瞬間……”火玉”が”風壁”に跳ね返されて自分の横を通り過ぎて行った。
「な、なにー」
”火玉”を跳ね返したソティアスは続いて”水玉”を放った。驚きもそれに気が付いたオネスト・コルカールは、防ぐ為に詠唱を始めた。
「土の精霊よ我に汝の力を貸し与え彼の者の敵意を防ぎたまえ・・・”土壁”」
”水玉”が当たる前に”土壁”を完成したが防ぐ事が出来ずに”水玉”は、”土壁”を破壊しオネスト・コルカールの鳩尾に当たり後方へ吹き飛ばした。
オネスト・コルカールは気を失ってしまった。
「勝負あり! 勝者ソティアス・フォルティス」
「「「「「おおおぉぉおおおおおおおおおおおおお」」」」」
「「「「「キャ――――――――オネスト様、大丈夫ですか――」
女性達がオネスト・コルカールの傍へ駆け寄って行ったが……女性達は後ろに後退してしまった。
オネスト・コルカールは鳩尾に”水玉”をぶつけられて……吐いてしまっていた。それを見た周りの男性達はさらに歓声をあげた。
「おおおお――っしゃぁぁああああぁああぁあぁぁぁ――――――ざまぁーみろー」
「「「「「おおおおおおおぉぉおぉぉおぉおお」」」」」
「ソティアス殿、よくやった」
「リキドが自慢するだけの事はある」
「うむ、ソティアスよくやった」
「は、はぁ……何故、皆ここまで喜ぶのですか?」
「うむ、オネスト・コルカールは、才能と人気があるから失脚させる事ができなかったのじゃ」
「!? 失脚ですか? 失脚の手伝いをさせられたのですか?」
「心配しないで大丈夫じゃ……今回失脚させる訳ではない……今後、不真面目な仕事、女性関係での苦情・陳情が来た場合の為にじゃ」
ソティアスが困った顔をしていると倒れていたオネスト・コルカールが起き上って来て怒鳴り迫って来た。
「まて――――――――――――! インチキだぁ――――――――――――! 杖も使わず、魔術の組み合わせによる得手不得手を無視しての勝負……無効試合だぁ――――――――――! やり直しを要求する」
「……インチキとはどういった事でしょうか?」
「魔術の得手不得手だ。火魔術は風魔術で防げるはずないのに跳ね返し……土魔術で水魔術を防ぐ事が出来ずに俺に当てた。杖を持たない魔術師など俺は認めない」
「魔術の得手不得手ですか? オネスト・コルカール様は、魔術は学校で習ったのですか?」
「ああ、そうだが……それがどうした」
「なら、習ったと思うのですが……下位4属性魔術に得手不得手はあるが絶対的魔力差ではこの限りではないと……僕が杖を持たないのは、杖で人に魔力を抑えない魔術を放ったとしたら相手を殺してしまうからです。オネスト・コルカール様に放った”水玉”もかなり魔力を抑えたので気を失う程度で済んだのです」
「俺の魔力総量がお前の様な子供より下だと言うのか」
「……そう言う事になりますね」
「な!?」
「いい加減にぜよオネスト・コルカール……お前の魔術師ランクは?」
「私は、魔術師ランクDです」
「ソティアス・フォルティスは、魔術師ランクBで、魔術を唱えるのに詠唱は必要無い……全て無詠唱で唱える事ができるのじゃ」
「えっ!?」
「わかったか? ……上には上がいるのじゃ……お主は、自分には才能があると思い女遊びばかりし精進を怠り能力の向上もせずランクを上げる事もせず……子供に負けるとインチキと大声で叫ぶとは情けない……」
「……」
「オネスト・コルカールよ……もう一度、宮廷魔術師最下位からやり直せ」
「……ハッ!」
オネスト・コルカールの姿を見た女性達は、離れて行った。
「「「「「カッコ悪い」」」」」
「「「「「オネストさま、さよならー」」」」」
それを見た男性陣は笑いを堪えるのが大変そうだった。




