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トロフィーヒロイン・モンスターガール  作者: タカリ
第一章 トロフィーヒロイン・モンスターガール
14/50

14 噂の男?

 最近、ちょくちょく視線を感じることがある。


「……なあ、例のあれって……」

「実習の時も……で……だから……」

「その……本当……?」


 今も学生寮の食堂で朝食を取っているのだが、こちらを見て何かヒソヒソ話をしている集団がいた。気分が悪い。

 急いで食事の残りをかきこみさっさと席を立ったが、日に日に視線が増えている気がする。

 一体何が……まさか。


(俺と紅雪の――声が漏れていたとか……?! 隣近所の連中に聞かれていた?!)


 元々がただのビジネスホテルだ。壁は薄いと思う。

 もしも本当に周りにバレていたのなら……。


 俺はそそくさと部屋に戻った。

 今日は学校に行きたくない……引き籠りてえ……。


 ■


 さすがに学校が目と鼻の先なのに仮病で休むこともできず、朝っぱらからどんよりした気持ちで登校する。

 周りの目が痛い。

 なるべく目立たないように存在感を消して歩き、教室に入ってほっとした時だ。


「おはよう、堂島くん」

「……おはよう」


 普段は挨拶なんかしてこないクラスメイトの男子が声をかけてきた。

 名前なんだっけ。


「堂島くんって中学校違うよね? どこの学校だったの?」

「……俺は隣の県の中学から来ているから、言ってもわからないと思うよ」

「あ、そうなんだ。なんでこっちに?」

「……家庭の事情かな。いろいろあったんだ」

「あ……ご、ごめん。変なこと聞いて」

「……別にいいよ」

「う、うん。ごめんね」


 クラスメイトが愛想笑いを浮かべながら離れる。

 あまり人に言いたくない話だというのは本当だが、このくらいで気を悪くしたりはしない。

 名前を憶えていないと気がつかれる前にさっさと話しを切り上げたかったのだ。


「清水。どうだった?」

「いや、それが……」


 他の生徒と話をしているのを耳をそばだてて聞いた。

 清水。

 あのクラスメイトの名前は清水だ。

 名前がわかってスッキリしたが、またすぐ忘れそうな気がする。


 ■


 清水くん以降も休み時間の度にクラスメイトから声をかけられるようになった。全員名前を知らないのを悟られないように受け答えに苦労した。

 もう昼休みだがクラスメイトに捕まらないようにさっさと移動してしまう。


 昼食はいつも学食で取っている。

 この学校は値段の安い学食が一つ、そこそこの学食が一つ、ちょっと高めの喫茶店が一つと全部で三つも昼食を食べる場所がある。さらに校内に購買もあってパンも売っている。

 俺が通っていた中学校は普通の公立校だったので最初は慣れるまでちょっと大変だった。今はその日の気分で食べる場所を変えている。


「疲れたしちょっといいもの食べようかな」


 普段はあまり利用しない喫茶店に入り、ランチを注文した。

 喫茶店は値段がちょっと高めなだけあって利用客も少ない。周りの目も気にせずにゆっくりできるから最高だ。

 洒落た感じに盛り付けられたハヤシライスをゆっくりと味わった。


「堂島勝ってお前?」

「……誰?」


 食後のデザートまで堪能し、ゆっくりと紅茶を飲んでいたところで見知らぬ男子から声をかけられた。名乗りもせずに勝手に席に座りしゃべり出した。


「俺は五組の加藤。【格闘家】だ」

「……」


 だから何だよ。俺のランチの邪魔をするな。


「で、【魔物使い】の堂島ってお前だろ。ハイゴブリンを連れて歩いてるっていう噂の」

「……噂?」

「なんでもすごい美少女らしいじゃん。ちょっと見せてくれよ」

「嫌だ」


 嫌に決まってるだろ。

 噂とやらも気になるが、こんな図々しい奴に紅雪を見せたくない。


「はあ? 何でだよ、ちょっとでいいんだよ。噂が本当が確かめるだけだからさ」

「ダンジョン以外の場所でモンスターを出すと警察に通報される。それくらいこの学校の生徒なら知っているだろ」

「そんなのちょっとだけなら大丈夫だって、なあ、固いこと言うなよ」


 ダメに決まってるだろ……。ちょっとだけでもアウトだ。

 というか友達でも何でもないのに馴れ馴れしいな……。

 不快感が物凄い勢いで溜まっていく。


「ダメなものはダメだ。絶対に見せない。断る」

「ちっ、まあいいや。じゃあ週末に俺らダンジョンに潜るから堂島も付き合えよ。その時に見せてくれればいいからそれでいいだろ」


 何言ってんだコイツ……?

 週末にダンジョンに潜るから、俺に付き合えだって……?



 ――週末にダンジョンに入る。実はこれは学校が認めている行為だ。

 ダンジョン実習でダンジョンに入る時の班には学校側がいろいろと制限を加えている。人数は三人まで、前衛後衛を必ず一人はいれる、などのルールが決められていて、それに反する班は認められない。

 週末探索はこの制限が撤回される。友達同士で自由にパーティを組めるし人数だって何人いても問題ない。力量に差のある相手を連れてパワーレベリング紛いの方法をしてもいい。

 更に週末探索で得たアイテムを学校側に提出すると通常授業と同じように成績評価に加えてくれる。週末探索に行くか行かないかで成績に差が出るのだ。


 そういうわけなので俺も当然週末探索に行くつもりだったが、他の生徒とパーティを組むつもりはなかった。

 いわんや目の前の失礼な奴と一緒のパーティを組んで潜るなど天地がひっくり返ってもあり得ないだろう。


「いきなりそんなこと言われてもな。こっちはパーティを組む気はないから断る」


 これ以上絡まれるのも嫌だったのでそこで話を切り上げ席を立った。


「あっ、おい! まだ話は終わってないぞ!」

「そんなの知らないよ。もう二度と話しかけないでくれ」


 あいつがぎゃあぎゃあ喚くせいで店内の客が全員こっちを見ていた。

 せっかくのんびりしていたのにあいつのせいで台無しだ。

 嫌な気分を引きずったまま教室に向かった。

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