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パタフルの剣~魔王を倒し、世界を救え~  作者: 高いところに在る橋
第二部 旅立ち
19/21

18.恐怖と覚悟

「負けたぁぁぁ」


 ペップが地面に倒れながら、叫んだ。ペップの敗北は、これで8回目である。ピッポはペップを助け起こし、土の上に転がったデラスツールを拾おうとしたが、


「今日は十分だ。三人とも良くやったよ。……もう夜も遅い。私が見張りをしているから、君たち三人は休むといい」


 アランが言った。ピッポ、ペップ、ポット―は頷いた。剣の練習は楽しかったが、三人ともとんでもなく疲れていた。三人は無言で地面に寝転がった。


「明日一日歩き続ければ、終焉の大森林を越えることができると思う。大森林を超えれば、ベッポン街はすぐそこだ。今日はよく眠り、明日に備えるんだ」


 アランはそう言うと、低い澄んだ声で、唄を歌い始めた。


 町が、木々が燃えるその日

 民が危機に陥るその日

 人々は燃える剣を見るだろう

 強き剣士を見るだろう

 その名は……

 彼こそが世継ぎに相応しき者、

 アルデマンドを統べるべき者。

 手には燃える剣を握りしめ……

 

 その落ち着いた歌声によって、ペップとポット―はあっという間に眠りへといざなわれていった……


 

「……ただの伝説の唄だよ。民の多くは燃える剣……炎剣を持つ剣士の登場を、待ちわびているようだがね」


 数分後、歌い終えたアランがピッポに言った。二人とは異なり、全く眠れないでいたピッポは言った。


「そうなんですね」


「眠れないようだね、考え事か?」

 

 ピッポは頷いた。アランは微笑むと、自身が座っていた切り株の隣に座るよう、ピッポに促した。ピッポは無言のまま立ち上がり、アランの隣に座った。


「君の考えていることはだいたいわかるよ……自分がペレンの子孫でなかったら、こんなことは起こっていなかったのに、そう思っているだろう」


 ピッポは自分の思いが見透かされていることに驚いたが、こう答えた。


「その通りです……結局僕はふつうの農民なんです。こういう旅にはふさわしくない」


「だが君は魔王の子に相対し、強い覚悟を示し、パタフルを離れた。そうではないのか」


「……確かに僕はゲルシュニッヅの誘いを断り、自分の意思で逃避行を始めました。でもそれは、パタフルの仲間たちに危害を与えたくなかったからだ。もちろんエレンさんの言っていたように、僕には潜在的な可能性があるのかもしれない。でもそれは潜在的なのであって、今の僕は、どこにでもいるパタフル人に過ぎない……正直に言って、僕は怖いのです。恐れているのです。魔王、その子供たち、そしてゼズノゴール」


 ピッポは近くで寝息を立ててぐっすり眠っているペップとポットーを見た。


「……それから、僕についてきてしまったこの二人に危害が及んでしまうのも怖い。そして協力してくれたあなたにも申し訳ない」


「なるほどね……怖い、か」


 アランは再びブローチに刻まれた炎の文様を撫でた。そして言った。


「どれだけ君の助けになれるかはわからない。むしろ君をより怖がらせてしまうかもしれない。だがそのうえで言わせてもらおう……私だって怖い」


 ピッポは顔をあげた。


「私だってゼズノゴールは怖いさ。奴らは何をしてくるかわからない、恐怖の国家だ……それに私にはほかの恐怖もある。議長の息子としての期待。これに応えられないことへの恐れだ。残念ながら私には才能があまりないようでね、兄と比べて戦績も、アルデマンドへの貢献度も大幅に低い。民の期待を背負うには、私は弱すぎるのではないか。そう思うと、私だって怖くてしょうがないのだ」


 アランは寂しそうにこう言った。ピッポは驚いていた……魔獣からピッポたちを守ってくれた時のあの太刀筋、そして剣技を教えてくれたときのあの表情は、自信にあふれているように見えた……だが、彼も恐れていたのだ。ピッポは尋ねた。


 「でもそれでも、あなたは戦っている……僕たちのことも助けてくれた。どうしてです?その意志の力は一体どこから」


アランは笑った。そして答えた。


「……人々を守り、助けるためだ。それ以上の理由などないさ」


 炎が一瞬ぱちぱちと爆ぜ、男の顔を照らした。寂しげだが覚悟に満ちた、その顔を……ピッポは身動きもできず、彼を見つめた。



                            ー-----


 『まだ捕まらぬのか、ピッポ・ポップスは……』


 終焉の大森林から遠く離れた、ゼズノゴール・シティ中心部の謁見室にて。低く轟く声が、こう問いただした。


「バルガロスの策では、終焉の大森林で行き倒れにしたところを捕らえ、連行することになっておりましたが……確かに遅いですな」


 豪奢なマントに身を包んだ男……魔王の側近ジルベスターが答えた。苛立たし気な声が、謁見室を揺らす。だがジルベスターはひるまず続けた。


「協力者が現れたのかもしれませぬ。終焉の大森林にも怯まない、強力な協力者が。」


「……エレン・ベナードが合流した可能性はないか?」


 ジルベスターの隣に立つ、大柄な男……カイドーが言った。


「それは有り得ぬでしょう。ベナードはすでに終焉の大森林を越えている。エルバッドとゲルシュニッヅがエレンと戦闘し、膠着状態となって逃げられたそうだ。彼によれば、ベナードは間もなくアルデマンドに入るだろうとのこと。協力者は別にいる」


 ジルベスターが答えた。


『もしそうであるのなら、その者は殺さなくてはならぬ……いよいよゼズノゴール軍の用意が整った。まずはベナードとポップスを確実に捕らえる』


 ……ゼズノゴールも、新たな一手を打つべく動き始めていた。

 

 

 


 


 

 

 


 

  

 

 


 


 


 



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