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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第3章 その献身は、誰が為
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第46話 輝ける未来と立ち塞がる壁

あれから1週間が経った。


私は、まだ朝早い時間、トレーニングウェアに着替え、

長い髪を一括りに纏める。


時刻は、午前4時50分。

最近は早くから、外が明るくなった。


私は、玄関から外へと向かい、

目の前にあるアパートに常設された駐車場で準備運動を行う。


少しすると、隣室の扉が開き、見知った金髪女性が出てくる。

彼女もトレーニングウェアを着ていた。


「アテナさん、おはようございます。」


「おはよう、七果。」


朝の挨拶を終える私達。


あれから、クランベリーさんとの距離が縮まったのか、

彼女から本名で呼べばいいと言われた。


もともと、クランベリーという姓は、

彼女とその関係者が使うものであり、

彼女本来の名ではないのだそうだ。


そして、私のほうも身分証明書などに違和感は持たれないが、

通常の場面では、女性らしい行動が求められるみたいだ。


私は、年齢はおろか、性別すら変わっている。

しかし、七福源治丸という存在そのものであり、

今の私は、そこから進化した姿。


霊的存在が、限られた人にしか認識できないのと同じで、

他の一般人は、私の変化に気づけないそうだ。


見えていても、それに疑問を持つことが出来ない。

よくは分からないが、そういう状態らしい。


ただ、一般的な常識に外れた行動は、

他の人にも感知できる。


例えば、今の私を元の名で呼ぶとする。

七福源治丸は、どう読んでも男性の名という印象だ。


なのに、私の姿は少女である。

そこに一般的認識の齟齬が生じる。


身元の証明を求められたら、マイナンバーカードなどを出せばいい。

例え写真の顔が変わっていても、一般人は認知できない。


しかし、それも限度がある。


こういう認識のズレは、人間の精神に負荷をかけることになる。

なので、常識外れの行動は慎むべきだと教わった。


その結果が、七果ななか という呼び名だ。


ごく一般的に外で呼ぶ時の愛称として使うことで、

要らぬ詮索を受けないようにする。


認識の齟齬で、一般の人の頭を悩ますことが無いように。


もちろん、外では女性らしい行動をすること、

それもまた、自分の為だけではなく一般の人の為でもあるのだ。


さあ、走るとするか!


朝のひんやりとした清々しい空気の中、

私とアテナさんは、いつものコースを走る。


全力疾走ではないので、

一日の始りを告げる風景を楽しむ余裕もある。


以前は、3kmも走れなかった私だが、

今は10kmを楽々走破できる。


身体が軽く、走ることが楽しい。

私は、今、身体を動かすことがとても楽しいのだ。


自宅であるアパートに戻ってきた私たち、

少し感じる疲れも、今は心地良い。


帰ってきたら、竹刀を使って素振りをする。


私の得物は、太刀である。


まあ太刀と言っても、今で言う刀の形ではなく、

古代からある直刀だ。


いつでも呼び出せることは、感覚的に分かるが、

それで練習すると、銃刀法違反で捕まってしまう。


身分証明書等は誤魔化しが効く。

これは、何度も言う様に本人だからだ。


だが、この日本で長い刀剣類を振り回していたら、

どんな姿でも捕まるのだ。


それが法律というものだ。


そこで、アテナさんが訓練用に竹刀を持ってきた。


木刀は、少女の姿では違和感があるそうだ。


さて、ここまでが私の日課となっている。


いつもの天明さんの無茶ぶりは、まだない。


天明さんの名を呼ばないのかって?


うーん、彼女はまだまだ何かある気がするのだ。


それなりに長い付き合いであるアテナさんが、

いまだ、彼女のことを 監査官殿 と呼んでいる。


そう、名前で呼んでいるところを見たことがない。


天明さんは、明るく人懐こいムードメーカー的な存在だが、

その実、結構な謎を抱えていると思うのだ。


それは、プロジェクトを進めていけば、明かされるのか?

今の私には、分からない。


ちょっとした考え事に気を取られていた私、

もちろん、素振りは続けている。


中々にスペックが高いのだ、今の私は。


そんな私に、アテナさんが声を掛けてくる。


「ふむ、七果。

 身体能力は十分なようだな。

 しかし、トレーニングは毎日行った方がいい。

 日々の鍛錬は、自分を裏切らないからな。」


「それとは別なんだが、

 実践的な訓練もやってみないか?」


うん?

それは一体どういう意味ですか?


そう疑問を呈する私に、


「うむ、今まで出会ったモンスターほどではないが、

 そういうモノが頻繁に出る場所があるのだ。」


「私達は 魔境 と呼んでいるのだがな。」


”どうかな?”


と、ファミレスに誘う様に聞いてくる彼女。


ううむ、、、




ーーーーー




アメリカ合衆国 ロサンゼルス

メルカバール・カンパニー 総合エンターテイメントビル


ミカエル・メルカバールは、会長室で報告書を読んでいた


「はあ、何とか手に入れたか。」


夜遅く、テレビ会議が行われている最中だ。


会議中、他の参加者も皆、疲れた顔をしていた。


「で、どうなんだ?

 ラファエル。

 サリエルは、メタトロンの装備を使ったようだが、

 船は動かせるのか?」


その問いに、


「それは、もう分かっているでしょう。

 使ったのは、主砲のひとつ。

 元々から移民船の護衛武装にそこまでの出力はないのです。

 現在もメインリアクターは停止中。

 メインエンジンが動かせない以上、

 今の軌道を維持するのが精一杯です。」


落ち着いた男性の声が丁寧に説明を返す。


「そうなると、サマエルの奴が取り返してくれて良かった。

 日本側との交渉はどうだろうか?」


ミカエルの質問に、


「それは順調です。

 このまま進めれば、かの国に現存する船を借りれるでしょう。」


”彼らも思いは同じですから”


そう答えたラファエルと呼ばれた男性は、会議の終了を告げた。


その後、目を閉じ、思考の渦に身を任せるミカエル。


取り留めもなく、昔のことがその脳裏に蘇る。


科学と霊性を同時に発展させていった彼らの種族は、

やがて、光の制限を突破することに成功した。


確かに多くの困難を彼らは乗り越えた。


そして、観測によりこの地球という星に文明があることを、

知っていた。


彼らは、大型の移民船とその護衛用の艦船を造り、

この地球へとやってきた。


彼らにとっても、これが知的生命とのファーストコンタクトだった。


しかし、当初観測されていた高度文明の持ち主は、

この星を去っていた。


幾つもの痕跡を発見したし、その後に残された今の人類とも邂逅した。


当時の人類は、今の社会を凌駕する文明を持っていたし、

異星から来た彼らとの融和も、穏便に進められた。


長く続く安寧、千年続いたその関係だったが、

ある時、それは打ち砕かれた。


他の世界からの来訪者が、発端だった。


それは、この星に二つの観念を齎した。


善と悪、光と闇、有と無。


相反する観念は、やがてこの星の法則となっていく。


来訪者は2人。

しかし、その存在が齎した観念に誰もが囚われた。


この危険に一早く気づいたミカエルたちの一族は、

来訪者を力によって排除する主戦派と

話し合いによる解決を図る穏健派の二つに分かれた。


早急な対処が必要だったが、前例のない事柄であり、

彼らも答えを急ぎすぎていた。


彼らのリーダーは、来訪者に話し合いを提案するが、

来訪者はそれを断ったうえで、こちらに服従することを迫る。


なぜ?

そんな疑問に答えはなく、主戦派と来訪者の戦いは始まった。

当時、地球にいた人類もまた、この争いに巻き込まれた。


人類もまた、来訪者の危険性を理解していた。

当時の人類も霊的エネルギーを集める方法は知っていた。


先駆者たちはそうやって他の宙へと向かったのだから。

来訪者のそれは、その法則自体が信仰として機能しており、

それを成すだけの力を来訪者はもっていた。


戦いは熾烈を極めた。

ミカエルたちは、それでも勝利一歩手前まで来訪者を追い詰めた。


しかし、それを嘲笑うかのように、

眩い閃光が、彼らの護衛艦を襲う。


母船より幾分か小さいその船は、

ミカエルたちの主戦力だった。


もともと、平和を築いてきた彼らにそれほどの戦力はない。


だが、仮にも未知なる領域を旅するための船であり、

その船はその旅の脅威を排除するためのモノ。


生半可な存在に敗れることはないはずだった。


航行に支障がでた護衛艦が、戦線を離れる。

ミカエルたちの一族のリーダーもその船に乗っていた。


仲間の安否を憂いながら、

それでも、母船による戦闘行動を続けようとしたミカエルたち。


その目前に、光と闇が現れた。


光、それは中心に眩い光を抱き白い翼持つ人型の何か。

闇、大きな蝙蝠のような翼をもつ巨大な何か。


”人よ、我らの祈りに答えたその行い、大儀であった”

”汝らに、常世に巡る世界を与えよう。”

”皆の可能性を求めるその姿に、我らも答えよう”


その言葉と共に、鋭い光が、母船を襲った。


その後は一方的だった。

数多い光、そうそれはそう例えるしかない何かであった。

それらは、ミカエルたちや地球の人類を席巻した。


人類の文明は衰退し、原始へ時を戻された。

ミカエルたちは、その圧倒的な存在の前に跪く。

仲間の半分は、それでも抵抗するため地下に潜った。


ミカエルも、それを良しとしたわけではない。


彼らのリーダーは月の裏へ逃れた。

それを隠すため、何時の日か再起するため、

今は膝を屈することが必要だった


彼らの切り札である戦艦を修復するために。


この戦闘で母船は動力部を損傷。

多くの仲間は、地上へ向かった。


歯痒い想いを胸に、反抗の機会を覗うミカエルたち。


そこに、古えに地球を離れた神々が帰還した。

そう、ミカエルたちがついぞ会えなかった高度文明の主たち。


伝承で、その遺跡で、その強大な力を覗えるその者たちの帰還。


今、解放の刻はやってきたのだ!

第3章終了です。ここまでお読みいただき、本当に有難うございます。

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