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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第8章 八百万が集う、歴史から秘されし島
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第112話 人が為、生まれし摂理

目を覚まし、天明さんとオリンさんの姿を確認した私。


ご本尊らの像は既に元通りの姿へと変わっているが、

頭には、相変わらず仏門の徒?の声が聞こえている。


3対3に別れた後の事を二人に聞いてみると、


「わたしは術メインですからねぇ。

 筋骨隆々の如何にもな大男相手に戦う気はおきませんでしたぁ。

 まあ、攻撃を仕掛けてきていたら、

 それなりに対処しますけど、

 戦う構えを取った後は何もしてこなかったですし。」


天明さんは、術師なので一人で相対した戦いでは不利だった。


なので、自分から仕掛けることはなかったらしい。


そして、あの金剛のような大男は何もしてこなかったから、

お互いお見合いをして事は終わった感じだったそうだ。


そして、オリンさんは、


「我から仕掛ける必要はない。

 身に降りかかれば、対処はするが、

 進化途上のこの地で我に敵う者などそうそういないのじゃ。」


こちらは強者ゆえの余裕で、相手を見極めていたら、

大男からの攻撃はなく結局戦い自体が起きなかった。


何だこれは!

ようするに、私だけ心の余裕がなく戦闘になったらしい。


良く考えれば、相手の威圧感や脅威、そして未知の現象に恐れを感じ、

私の思考は戦闘ありきになっていた。


最初の場所移動に投げられはしたが、

それ以降は常に私のほうから攻撃を繰り返していた。


召使いの刺客から異郷の道での戦闘等、

少し考え方が荒くなっていたのかもしれない。


元の私は、そもそも争いになる前に、

相手の説得や相互理解に努めていたはずだ。


そう思えば、力を得て少し浮足立っていた私がいた。


頭の声が指摘してきた ”力に振り回されている” は、

確かに身に覚えのある事だった。


これでは、相手の主張を力でねじ伏せようとするまがいものと、

呼ばれても仕方がない。


そして、ここは右藤住職たちが大事に守り継承してきたお寺である。


右藤住職たちや参拝者さんが、大切にする中核にあるのが、

このご本尊らなのだ。


私は今でこそ若い姿だが、その実いい歳をした大人なのだ。


物事の本質にいち早く気づけていなければならない立場だった。


”ふうむ、娘よ。猛省するが良い。

そなたは半ば荒魂となりかけていた。”


”人なれば、和を重んじよ。

力のあるなしに重きを置くな。

その考えはあくなき戦の連鎖を呼ぶ。”


”力に溺れれば、その生き方は修羅に堕ちるだろう”


”努々、誠を見る努力を忘れるな。”


寺の社殿の中央を占めるご本尊。


その多くの手が拳ではなく、

人に手を差し伸べるためにあるように感じた。


初めに感じた異様さを今は感じないし、

印象自体が変わって見えた。


”さて、汝らはこの寺の収蔵品について、

調べに来たのだったな。

残念だが、それについては我らも知らぬ。”


”ただ、この国に降りてきた者たちについては知っておる。”


”我らの相手は、古き旧き存在だ。

人に不条理を突き付けるその者に我らは気づいた。

この国がまだ起きる前の事だ。”


”人々は国を築く前からその脅威に晒され、苦行を強いられた。

そして、それらの苦難から救済されることを望み祈り続けた。

結果として、我らのような存在が生まれた。”


”我らはその昔、この地に生きた僧侶である。

歴史では語られぬ者、我らは巫と呼ばれた。

しかし、神々はこの地に降りては去っていく。

この地を支配するあれらは余りに強かった。”


”だからこそ、我らはその力を真似た。

その力の源泉を見定め、人を護るための摂理を作り出した。

だが、その試みすら届かぬ。”


”汝らが探す神々の島はこの地と共生することを選び、

この地で人と共に生きることを選んだ者たちの拠点である。”


”高天原に行く方法は、今はないのだ。”


"あの地へ行くためには、秘されし月の道を見出さねばならぬ。”


その言葉に天明さんが質問を返す。


「月の道、それは異郷の道から行けないのですか?」


”それはできぬと言える。

彷徨いし島に至るには、隠された神なる者が必要だ。”


”我らの盟友殿はそう言っていた。”


私は今一度、整理して疑問に思ったことを口にした。


「そもそも、貴方たちの言う相手とは召使いという対の存在で、

 間違いないですか?

 それと何故彼らはそんなに強いんでしょう?

 神々すら超える力の源泉って?」


”うむ、汝らには召使いと呼ばれているようだな。

あの者らの力が何故古き神々を超えるのか?

それは人の深層にある信念が関係する。

善と悪、男と女、幸福と不幸、持てる者と持たざる者。

いずれも対で表される概念だが、

人はそれを真実としてあらゆる場面で多用する。”


”それはもはや信仰とも言えるのだ。

その概念はあまりに人に受け入れられている。

それは真実と呼ばれ、あらゆる信仰においても重用された。

それは信仰を超えた真理となったのだ。”


”その真理の源こそ、あの者らの力の源泉。

我らや神々を持ってして、この地で敗北を喫した要因である。”


その語る言葉には、苦悩が見える。


善悪が信仰の力として使われている?


もしかしたら、私達が召使いを悪として見ていることすらも、

彼らの力を増大させる源泉となっているというのか?



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