プロローグ なぜに俺なのか!夢のお告げに干乾びて
私の名は、七福源治丸(男性 42歳)。
名がダサいって?
知らんわ!
そんなの作者に聞け!
そんなことはどうでもいい、今はな。
さて、とある中小企業で係長になって12年、
あくせく身を粉にして働いてきた私だったが、
今日をもって失職することになった。
理由か?
会社の倒産だ。
未知のウィルスとの闘いでも、
なんとか乗り越えてきた我が社だったが、
2年続く物価高。さらに最近追い打ちをかけるように、
製品の原材料が手に入らなくなった。
もちろん、一中間管理職として、私も従来の取引先だけではなく、
前なら連絡もしなかった㊙にまで問い合わせた。
答えはノーだった。高すぎる、これでは売れても赤字が出るだけだ。
会社のお偉い方は、社の穏便な廃業を決めた。
かなりの負債があったはずだが、
それについては会社の持っていた知的財産権を
他社に譲渡することで免れた。
そんなこんなで、今日、私は無職となった。
「はあぁ、貯蓄はなし。家賃どうするかー」
途方に暮れながら眠りにつく。
ーーーーー夢の中に響く声。
「ふん、なかなか面白い余興だな、この人間にすべてを託すのか?」
「ええ、そのつもりです。人の可能性を見るにはいい機会ですから」
その声に私は目を見開いた。
「なんだ!ここは」
辺りは霧に覆われ、視界が阻まれている。
しかし、少なくとも、自宅であるアパートの一室ではない。
奥を見通せないが、部屋にしては広すぎる。
ばさぁぁぁー、大気が震え、一部の霧が晴れる。
「起きたか、、さて、貴様には酷な話かもしれんがよく聞くことだな。」
背中に大きな蝙蝠のような翼をもつ巨大な何かが現れ、話しかけてくる。
更に白い翼を持つ人型の誰かが、言葉を紡ぐ。
「人の子よ。目覚めたならよく聞きなさい。
今、あなたの世界は、運命の分岐点に立っています。
世界がより神聖なる調和へ進むか、もしくは闇に閉ざされた騒乱へと堕ちるか?
どちらになるかは、あなたの選択と行動にかかっています。」
「ふん、何か言いたそうだぞ、蒙昧たる天の使いよ。
話を聞いてやったらどうだ。」
蝙蝠の羽を持つ、どうみても悪魔だなあ、、
現実感のない風景に気圧されながら、そんな感想を抱き、口を開こうとした私は。
声が出ない、なぜ。
” 話すことを許可しよう ”
頭に響く声とともに、場を実体のない風が流れていく。
「なんだってんだ、あんたらは!
俺には何の関係もないだろ、
明日から職を探さなきゃならないんだ、放っておいてくれ。」
思わず大きな声が出た。
どうやら、今まで色々あったことで
自分でも気が付かない鬱屈した思いを抱えていたらしい。
こんな訳の分からない状況で、自分でもいい度胸をしていると思う。
「くくくくっっっ、わぅはははっ。
うむ、悪くないな。
人間、貴様が望む 職 とは金が稼げればいいのだろう?
貴様に必要な 職 を用意してやろう!」
巨大な悪魔が嗤いながら、天の使い?を促す。
「人の子よ、あなたの 職 は用意されています。
今後1年の間、その 職 で励みなさい。
あなたには、期待しております。」
天の使い?は白い翼を羽ばたかせた。
霧が晴れていく。
辺りは、白い羽の舞い散る幻想的な青空が広がっていた。
なんだ、雲の上なのかっ
その風景に驚く私の頭上に、輝く太陽が落ちてきた。
まばゆい光が全てを飲み込む。
悪魔は楽しそうに笑う。
「人とは、下らぬものに囚われるもの。
使いよ、此度は勝たせてもらうぞ。
しかし、あの者を何故選んだのだ?
少し気の毒ではないか、、」
天の使い?の凛とした声が続く、、
「主の望みを察するのも、我らの務め。
選ばれしものではなく、人の本心を知らねばとのご意向です。
主の考えは、我らの観測すら超える。」
厳かな声が澄んだ世界に響き渡る。
” 今、最後の試練に挑む者に幸あれ ”
” 事成れば、我らは同胞としてこの星の民を迎えよう ”
光に唱和する声が響く
「人よ、至福の時は間もなくです。
試練を超え、星の道へと至りなさい。
今、運命は廻り始めました。」
「「「すべての問いに答えようぞ!」」」
” 我らは、しばしの時を待とう ”
ーーーーー
うん?
目を見開いた私は、勢いよく身を起こす。
現状を確認しようと辺りを見回す。
そこは、よく見知ったアパートの自室だった
冷や汗が止まらない。
「変な夢を見たなあ」
「そうですかぁ」
鈴の音を思わせる声が響く
はっと声が発せられたほうを見る。
そこには、リクルートスーツに身を包む女性の姿があった。
こちらに顔を向けていた女性は、おもむろに挨拶してきた。
「初めまして、天明かぐら と申します。
今日から貴方の秘書官に拝命されました。」
「えっ何のことだ?
それよりあんた、どこから入った、新手の強盗か?」
私が途方に暮れて問うと
「ああ、そこから説明が必要でしたか?
あなたは今さっき、この国の総理大臣に任命されました!!」
突然突拍子のないことを言う天明さん?
「何を言っているんだ、出ていけ!」
「いえ、もう無理です。すべて受理されていますし、
今月分の給料も支払われています。必要ないですかぁ?」
「そんなもん、もらっとらんわ!」
と私が続けると
「そうですか?
ああ、そういえばあなたの会社に振り込んだんでした。
受け取っていないのですか?」
と答えてきた。
うん、あれ、そういえば会社の借金ってどれだけあった?
うちは中小の零細企業だったはず。
知的財産ってあったか?
「まさか!借金返したのって!
俺を売ったのか!あの狸課長がぁぁぁ」
「なんでこんなことに!」
おもむろにスマホを操作しだした天明さん。
「七福源治丸、男性 42歳 会社で皆勤賞を貰うほど真面目
最近はほとんどの日々を残業などに費やす、っと」
「ああ、ありました!今年は42歳の大厄ですね。
神社での厄払いを拒まれたため、神様から訴えられています。」
こちらにスマホを見せてくる天明さん。
訴状:病払いなどの献身的なご加護に対し、未払いが続いている。
債務不履行状態の解消と不払い期間に対し、利子を請求する。
えええええええええーーーー
「今年、厄年だったんですね。
運悪く総理の椅子が回ってきちゃったんですよぉ」
” 諦めてくださいね ”




