第十話 竹取物語 前編
「脱獄なら良いアイデアがありますやで!ここでいつも溶接している機械部品があるじゃないですか。それを外部に輸出する段ボールの中にコッソリ入ってしまえばええんや!」
「そうかその手があったか……。良いアイデアだなナゴミン。僕達はそれで脱出しよう。なあヴォイド、手段はゼロじゃないんだ。僕達と一緒に行こう。諦めるんじゃなくて足掻けるだけ足掻こうよ」
「……やってみるか」
フォーチュン一行は段ボールの輸出部屋へ入り、段ボールの中身を抜き出して、その中へと入る。
「バレないかな……。ちょっと心配だわ」
レイは不安がる。段ボールは車に積まれ、刑務所を出たそのとき、ブーッ!ブーッ!と音が鳴った。フォーチュンは流石に慌てた。
「マズいな……恐らくX線検査で僕達は透視されていたんだ」
箱の中から出ると、すぐそこには刑務所の外があった。だが警備員がゾロゾロと出て来始めていた。
「もうこうなりゃ最後はゴリ押しやで!」
「……ま、簡単に脱獄できないのは俺様は最初から分かっていたさ。むしろこんな状況になった方がよりワクワクするぜ!」
「いやいや。ちょっとは緊張感持ちなさいよ。あたしはもっと安全に脱獄したかったわ!」
すると、ヴォイドは段ボールから何やら武器を取り出していた。非殺傷用ビーム刀だった。そしてヴォイドは眠りに就く。
「ツクヨミ神楽……」
ヴォイドは一瞬で動き、警備員達をあっという間に倒したのだ。フォーチュンはその動きに感嘆する。
「凄い……これがヴォイドの能力……」
フォーチュン一行はそのまま輸送車を盗み月の街まで運転して行った。
「よっしゃあ!俺達脱獄成功だぜ!」
「はーっ。あたしドキドキしすぎて死ぬかと思ったわ。でも思ったより早く出られて助かったわ」
月の街は銀色に輝く都市だった。黄金の金星に比べると質素な感じでそれでも美しさがあった。一行はレストランに着く。そこで、フォーチュンはヴォイドの過去の事が気になった。
「そういえばヴォイドの事、僕達はあまりよく知らないな。よければ話を聞かせてくれないか?」
「……良いだろう。私を月の宮牢獄から脱出させてくれたし、お礼に話してやっても良い」
話は過去へと遡る。ヴォイドは水星の大帝国の秘密基地で突然変異で女性として生まれたクローン人間だった。女性という時点で殺処分の対象になりかねなかったが、様々な検査の結果、潜在能力が高いとされ、特別に生きる事を許されたのだ。
だがヴォイドにとって訓練の日々は退屈だった。それにいつかは兵士として他所の国へ侵略する事になると思うと、ヴォイドは決められた運命を壊したかった。ヴォイドは宇宙船を盗み、そのまま宇宙へ冒険する事になった。
綺麗な星を眺めるのが好きだった。だからこの世で最も美しい惑星とされる地球を目指した。だが着陸が上手くゆかず、不時着となってしまい、外に出るドアが壊れてしまった。そのまま閉じ込められて人生が終わると思っていたそのとき、オッキーナという老人がドアをこじ開けてくれた。ヴォイドにとってオッキーナは命の恩人だったのだ。
恩返しとして、ヴォイドはオッキーナの家業である農業を手伝う事にした。潜在能力を期待されていたクローン人間だったからか、ヴォイドは農家としてとても優秀だった。あっという間に畑を耕し、作物を植えて、水をかけた。
そんな中、農家をやっているヴォイドの美しさが噂となり、彼女に縁談を求める男が殺到した。ヴォイドはオッキーナと農業をしたいだけなので彼女にとっては迷惑な話だった。なので五つの難題を出す事にした。
一つ、身長は百八十cmある事。
二つ、全身が鍛え抜かれたムキムキである事。
三つ、高収入である事。
四つ、コミュニケーション能力が高い事。
五つ、イケメンである事。
これだけ無茶を言えば男も去っていくだろう。そう思っていたヴォイドであったが予想外の事が起きた。この五つ全てを満たすタイムキーパーという男が現れたのだ。約束は約束なので断る事ができず、渋々、ヴォイドはタイムキーパーと友達になってみる事にした。
すると、タイムキーパーは夜の白百合の花畑へと連れていってくれた。
「ここは俺が一番好きな場所なんだ。綺麗な星がよく見えて、花が懸命に咲いている」
「……連れて来てくれてありがとう。私はこの世のありとあらゆる自然が大好きなんだ。この世界は本当に美しい物に満ちている。だから生まれてこれただけで幸せだと思っている。……少し重い話になるがいいか?」
「いいよ」
「……この美しく素晴らしい世界を壊そうとしている人達がいる。大帝国だ……。私はただ自然を眺めて静かに暮らしたいだけなんだ。だが大帝国がそれを許さない。だからきっといつか、世界を歪めている大帝国を私は倒したい。私が強くこの世に生まれたのはきっと悪を滅ぼす為なんだ。だから私はいつか戦いに行く」
「……それ、俺も一緒に戦ってもいいか?」
「……いいのか?命の危険があるぞ」
「俺は君を一目見た瞬間から惚れてしまったんだ。だから大切な人が危険に首を突っ込もうとするなら、俺も一緒に危険な目に遭いたいんだ」
「……ありがとう」
ヴォイドとタイムキーパーは大帝国を倒すという事に意気投合した。その後も、彼女らは動物園に水族館と、ヴォイドが大好きな自然を一緒に観光し仲を深めて行った。ヴォイドは色んな自然を見せてくれたり、自分と一緒に戦ってくれるタイムキーパーの事をいつしか気に入っていたのだ。




