第十二柱 「戦女神アテナちゃんの神界物語」
神界の朝は、静かに始まる。
パルテノン神殿の窓から差し込む光が、白い床をやわらかく照らしていた。
「……ふぁ……」
小さなあくび。
机に突っ伏していたアテナが、ゆっくりと顔を上げる。
「……寝ちゃってた」
周囲には、整理された資料と、いくつかの巻物。
その合間に――
「……漫画もある」
神霊メイドが、無言でそれを持ち上げた。
「うっ」
「お仕事中に読むものではありません」
「ご、ごめんなさい……」
しょんぼりと肩を落とすアテナ。
だが次の瞬間。
ピカッ、と腕輪が光る。
「……あ」
「来ましたね」
アテナは、ふっと表情を変える。
「うん」
ゆっくりと立ち上がる。
「行ってくる」
その声は、以前よりもずっと落ち着いていた。
「いってらっしゃいませ」
――神界の空。
アテナは翼を広げ、軽やかに飛び立つ。
眼下には、ユグドラシルの街並み。
遠くには、神々の神殿。
そしてそのさらに向こうには――人間界。
「……ちゃんと、流れてるかな」
ぽつりと呟く。
けれどすぐに、微笑んだ。
「大丈夫だよね」
腕輪の光が、優しく導く。
その先にある、小さな“揺らぎ”。
アテナはゆっくりと降り立ち、手を伸ばす。
「大丈夫」
優しく語りかける。
「ちゃんと、帰れるから」
光が、揺らぎを包み込む。
それはもう、迷いのない動きだった。
――少し前まで。
彼女は、“知っている”神だった。
けれど今は違う。
理解し、寄り添い、導く神。
それが今の、アテナ。
「……よし、次!」
くるっと振り返り、また飛び立つ。
その姿は、どこか軽やかで。
そして、少しだけ頼もしい。
神界という世界の中で。
今日もまた、小さな感情が流れていく。
そのすべてを見守るように――
知恵と戦略の神は、今日も空を舞う。
これは、そんな彼女の物語。
神界で紡がれる、日常と成長の記録。
――「アテナちゃんの神界物語」
ここから先も、きっと続いていく。
ここまで読んでくれてありがとうございます。




