表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アテナちゃんの神界物語  作者: れんP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

第九柱 「感情の核と知恵の答え」



 


ドクン――


 


空間が脈打つ。


 


巨大な影が、ゆっくりと形を変えていく。


 


「……来る!」


 


アルテミスが即座に矢を放つ。


 


ヒュンッ――!


 


だが。


 


矢はやはり、影をすり抜けた。


 


「やっぱり効かない!」


 


「うん……“存在”じゃないから」


 


アテナは冷静に観察する。


 


巨大な影は、周囲の感情を吸い込みながら膨張していく。


 


怒り、悲しみ、不安――


 


あらゆる負の感情が渦となり、核へと集まっている。


 


「これ……このままだと神界に溢れる」


 


「そんなの、絶対止める!」


 


アルテミスが叫ぶ。


 


だがアテナは、一歩も動かない。


 


じっと、“核”を見つめている。


 


「……違う」


 


ぽつりと呟く。


 


「え?」


 


「これ、“敵”じゃない」


 


アルテミスが目を見開く。


 


「何言ってるの!?」


 


「見て」


 


アテナが指差す。


 


影の中心。


 


そこに、かすかに見える“光”。


 


 


「……泣いてる?」


 


アルテミスが小さく呟く。


 


 


「うん」


 


アテナは頷いた。


 


 


「これ、溜まりすぎて形になった“感情”……でも、本質は――」


 


一歩、前へ出る。


 


「“助けてほしい”っていう声だ」


 


 


巨大な影が、うねる。


 


威嚇するように。


 


拒絶するように。


 


 


だがアテナは、逃げない。


 


 


「ねぇ」


 


静かに語りかける。


 


 


「あなたは、ここに閉じ込められてるんだよね」


 


 


反応が、止まる。


 


 


「誰にも気づかれなくて、整理もされなくて……」


 


 


一歩、また一歩と近づく。


 


 


「苦しくて、形になっちゃった」


 


 


影が、わずかに揺れる。


 


 


「……でも、それは“間違い”じゃない」


 


 


アテナは手を伸ばす。


 


 


「ただ、行き場を失っただけ」


 


 


腕輪が、優しく光る。


 


 


「だったら――」


 


 


その光が、影へと触れた。


 


 


「私が、道を作る」


 


 


瞬間。


 


光が、広がる。


 


 


影を包み込み、ゆっくりと“分解”していく。


 


 


怒りは鎮まり、

悲しみは薄れ、

不安はほどけていく。


 


 


「……すごい」


 


アルテミスが息を呑む。


 


 


「“消してる”んじゃない……」


 


 


「うん」


 


アテナは微笑む。


 


 


「“戻してる”の」


 


 


やがて――


 


巨大な影は、完全に崩れた。


 


 


そして、中心に残ったのは。


 


 


小さな、淡い光。


 


 


「……これが、核」


 


 


アテナはそっとそれを包み込む。


 


 


「大丈夫。ちゃんと帰れるよ」


 


 


光は、静かに輝いた。


 


 


その瞬間。


 


空間全体が、安定し始める。


 


 


裂け目が、ゆっくりと閉じていく。


 


 


「……終わったの?」


 


 


「うん。たぶん」


 


 


アテナは小さく息を吐いた。


 


 


「原因は、“溜まりすぎた感情”だった」


 


 


「でも……どうしてこんな場所が?」


 


 


アルテミスの問いに、アテナは少し考える。


 


 


「たぶん、神界と人間界の“隙間”」


 


 


静かに答える。


 


 


「流れきれなかった感情が、ここに溜まってたんだと思う」


 


 


「……それが、あんな風に?」


 


 


「うん」


 


 


アテナは頷く。


 


 


「だから――」


 


 


「ちゃんと、流れるようにすればいい」


 


 


 


知恵の神の答えは、シンプルだった。


 


 


だがそれは、確かな解決だった。


 


 


 


――戦いは終わった。


 


 


だがこの経験は、確実にアテナを変え始めていた。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ