70話 仕方ない 挿絵あり
「この戦いどう見る?」
「勝った方が勝者・・・。」
「当然やないかい!」
「でも、当然だからツキさんの言葉は重い・・・、篝火は所詮四天王最弱!」
「戦う前から最弱ってやめてもらえます!?サクラさん!」
「最弱なら勝たせてもらおうか!」
腕組みして篝火さんを見る4人、この場合秋ドンさんを魔王とする。そんなゆるくもキリッとした雰囲気の中、一騎打ちフィールドの光景がスクリーンに映し出される。ON/OFFは可能だけど挑んだ方、挑まれた方には見る権利が付与されるし、最終日にはずっとその時1位の領地が一騎打ちする映像が見たければ流れ続ける。
まぁ、上位狙うにしてもフィールドを邪魔されるとプレーヤーはキレるし1位としても邪魔で仕方ない。そんな中で始まった一騎打ちは篝火さんが雀切りとバックラー装備で佐賀さんがナイフ+ハンドガンと言う格好で始まった。声援は送れても戦略は送れないし、デフォルトで歓声やらはOFFになってるから篝火さんがONにしないと開始すれば意味はない。
そしてそれに気づいていない篝火さんは援護と言う声援なしで一騎打ちを始めた。まぁ仕方ないかな?そんな操作をする暇なく攻撃されるし。佐賀さんは上手いと言うかハンドガンで牽制しつつ間合いを計りチマチマダメージを与え、篝火さんはそれを崩そうと受け流そうと刀を振るう。
雀切りを覚醒させていない以上、地上から確定対空という以外のアドバンテージはなく、佐賀さんからすればグランド攻撃を主体にすれば潰せる。それほどまでのレベル差を埋めるとすれば知り得ないモーションを組み込む事かな?
「フロムさん、篝火さんのモーションってどんなもんです?」
「はっきり言えばゴミじゃな。No民の佐賀ほのかのレベルを考えれば、よっぽどの特殊モーションを得ておらんければ負けじゃろ。ワシもレベリングはてつどうとるが、それでも課金武器やらのモーションはないはずじゃ。」
「あかんか・・・、軍師不在ならウチが采配するけどええか?」
「盟主さん負けるってまだ決まってないよ!」
「でもなサクラさんコレがゲームでデータな以上、絶対的な無理って言うのもあるんやで?」
「ですね〜。例えば上級モンスターにすっぴんで挑めば負ける。レベルが適正でなければやっぱり負ける。それを覆すのがスキルや魔法やモーションだけど、やっぱりステータスがあるゲームで接戦もしてないステータス差があれば負ける。」
それは運営が敷いたルールで覆せないルール。いや、これは悪い文明ではない。だって長期にチマチマ育成してきたアバターがレベル1の初期アバターに負ける様な事があればプレーヤーはゲームを辞める。俺だって辞める。チートが何故嫌われるのか?
例えばレベル1のチュートリアル終了しかしていないアバターに対してカンストプレーヤーがダメージ1しか出せなければ、まだプレーヤーは面白がって攻撃する。だってそれはトラブルの範囲だから。しかし、ダメージゼロなら誰も見向きもしない。それは倒せないオブジェクトであって敵ではないから。
そんな無駄なオブジェクトに時間を取られる事をプレーヤーは嫌うし、ダメージを出す方法が合ったとしても、いくらでもあるモーションやらスキルやらを検証する暇も惜しい。なによりフィールドに出てダメージゼロで駆け回るプレーヤーはBANされても文句言えんだろ?それは可愛くないチートだ。
そんな話をしている間に戦況は動く!ルールは単純にタイマンだけど、回復スキルやらアイテムは禁止で互いのHPが全損するまで続く。状態異常スキルは使えるけど麻痺やら石化の行動不能スキル対策マストだし・・・、篝火さんその辺りはちゃんと習得してるかな?
「ホイ!そこ!精密射撃クイックムーブ!」
「っ!引き撃ちか!一閃!」
佐賀さんは弓じゃなくてハンドガンにナイフと完全に遠距離と言うか貪欲に勝つ姿勢か〜。牽制射撃で削りつつ焦れて隙を見せればナイフでグサリ。両方とも火力は低いけど無視出来るほど弱くもない。だからこそハンドガンと剣、剣と盾なんかが初心者装備であり、熟練者も選択に値する装備となる。
刀は片手装備で空いた手にはバックラータイプの盾を付け、飛んで来る弾を防ぎつつ駆け寄って横薙ぎの抜刀を繰り出すけど、刃はナイフで受け流されて空いた脇腹に数発貰う。
それでも前に出る為に踏み込み唐竹割りの縦一線は佐賀のバックステップにより空を切り、向けられたら銃口から放たれる弾丸を篝火さんが首をひねって回避。インファイトするにも刀よりナイフの方が早く、アウトレンジならハンドガンに分がある。
武器変更と言う手もあるけどインベントリから取り出すのも隙になるし、その時間を稼ぐ為には仕切り直しやらで間合いを開ける必要もある。ある意味銃を見て焦れた篝火さんが踊らされてるかな?
「シールドチャージ!からのシールドバッシュ!三段切り!」
「飛び蹴り!飛び蹴り!ほら!ガトリングショット!」
「くっ!でも飛んだなら!」
「飛んでもだ、フットスタンプ!クイックムーブ!」
シールド突撃からそのまま殴りつけつつ、開いた身体で三段切りを放つも見てからの余裕の飛び蹴り2発で頭上を取り、ハンドガンの乱射が篝火さんを襲う。盾を傘にしてクリティカルは出させないものの、足やらにヒットして機動力を奪う。
しかしゲームを始めて愛着のあるある雀切りの特性は地上からでも対空攻撃可能!振り抜き不可視の一撃が佐賀さんに迫るも、フットスタンプで急降下してやり過ごす。更に速度上昇バフを積んで一気に駆け寄り高速でナイフと銃弾を交えた攻撃を放つ。一応、盾でしのいでるけど・・・。
「っ!あっぶね!」
「くっ!外した!」
盾で手を隠した隙にインベントリからマシンガンを取り出し篝火さんが射撃!数発は当たるものの装備の差で明確なダメージとは言えない。せめてヘッドショットが何発か入ってればそこそこなダメージはあっただろう。
ナイフとハンドガン対盾とマシンガン、一見篝火さんが優勢に見えるけど完全にしてやられたな。雀切りを収納して代わりに持ち出したマシンガンがダメージソースとして心許無いと言う事は、残りはスキルかモーションかアイテムでダメージを出す事になる。乱射して牽制する篝火さんの射線をズラス様に飛び跳ねながら佐賀さんが取り出したのは弓。
「アイシクルミスト!」
「エリアルサイクロン!」
「ははっ!ありがとさん!精密射撃、マシンガンショット、バーミリオンショット!」
「あぁ〜・・・、星が見える・・・。」
継続ダメージを出す氷の霧を竜巻でまとめる。それは間違った選択じゃないし、俺だって時と場合によりけりで邪魔だから吹き飛ばそうとする。でも、これはゲームで密度が増せば視界を遮る遮蔽物になる。PVPでさっきのされたら蒸発させるか電気系の魔法で漏電させるか、或いはサイクロンじゃなくてエアボムとかで吹き飛ばす方がいいかな?
蜂の巣にされた篝火さんは佐賀さんに一礼し、佐賀さんも一礼を返して握手して一騎打ちフィールドが崩れる。戻った篝火さんは幽霊状態で発言出来ないけどやはり悔しそうだ。
「篝火よくやった、レベル差があるにしろそこそこ粘れたからいい経験になったじゃろ?」
「・・・。」
「口をパクパクさせてもミュートだよ。とりま、2人落ちちゃったけどどうする?追撃して首取りに行く?」
「サクラさんは蛮族ガールやなぁ〜。一騎打ち勝者はその領地所属メンバーからの攻撃を5カウント無効に出来るさかい、追撃しても下手すればボコられる。一旦大勢立て直そか。」
「それがいいですね。佐賀さん達と言うかNo民の領地が北だとすると、そっちの方はまだ攻勢が緩いのかな?そうなると南に夕餉とカリーがいる?うっへ・・・、もしかしてここってガッツリ囲まれてる?」
「あるやろうなぁ・・・。流石にパワーバランスっちゅうか大規模領地をまとめてドンッ!と配置する事はないやろうし、各領地の参加者数はAIなら一発で分かる。森を見た感じ個人やら参加賞狙いが多いから、篝火さんの言う緩衝地帯ってのも間違いやない。そして、最終日には森も消える。」
「あーっ!戦闘過激で自然破壊される奴!あの設定まだ生きてたの?」
「生きとるぞ?ツキさんは殆ど参加だけじゃから知らんじゃろうが、森の中にある領地は最終日にまとめて平地に弾き出される。文字通り雄郡じゃな。」
「昔紅白戦もあったって聞いたけど、それはないの?」
「紅白戦戦は最初からどっちかに割り振られるから、今回は関係ないですね〜。篝火さんと妖精王の復活は最終日に間に合うとして、PT的にはどんなもんです?」
「1000位が今ん所2万PTくらいやな。1位は14万稼いどるし、陥落させて1/4ゲット出来れば十分ウチ等でも上位狙える所にはおる。空戦と爆撃は結構美味しかったで?」
「ならもっかい空爆する?」
「流石にあかんかな?今森の上空は餌場として見られとるし。」
「その前に陥落はどうやるんじゃ?最終日の乱戦に紛れるにしてもかなり難しいぞ?秋ドンさんと篝火と妖精王で領地防衛をするなら、動けるのはワシとサクラとツキさんだけじゃし。いくらPT抑えて旨味の少なさを出しても仕掛けてくる所は仕掛けてくるじゃろ?」
「それを読んでの十面埋伏やな。流石に限界もあるさかい相当に厳しゅうなるんは仕方ない。せやけど、ギリギリまで持ち堪えて最後の1時間で一気に攻勢に出る。それまでは領地そのモノが攻撃の要で、温存したユニットが文字通り盾や。」
「なるほど、潰しあった後の漁夫の利狙いですか。まぁ、指揮官数的にもそこしか勝てる見込みがないですね〜。と、それならそれでもう少しPT回収してこようかな?」
「すばしっこいし、行くならツキさん頼むで〜。なんかユニット連れてく?」
「歩兵だと本当にPT取られるだけだからゴーレムいい?」
「ゴーレムかぁ・・・、ええよ。資源使わずに復活待ちするさかい、一体なら大丈夫やな。フロムさんとサクラさんは周辺警戒頼むで。リファインも元気やしNo民も攻めてきた、膠着状態に見えてもプレーヤー走り回っとる。」
そんな話をしてゴーレムを貰い森へ。鈍いので最後は自爆させる事で合意してるけど、それならそれで多くのPTが欲しい。歩兵は弓を待てるけど銃は持てないし、ゴーレムはそもそも進んで殴って自爆が仕事だからなぁ・・・。歩兵の弓ならよっぽど撃ち込まれないと壊れないけど、棍棒持った歩兵に袋叩きされると流石に壊れる。まぁ、壊される前にやっぱり道連れ自爆させるんだけどさ。
時計を見れば既に17時近いし、18時に夕食を食べるからあまり長居も出来ない。マップを見た限りだと少し進んだ所にいくつか領地はある。でも、流石に1人陥落は難しいか?近寄ればバリスタやらが飛んでくるし。
『秋ドンさん、秋ドンさん。仮に私が死んだらヤバい?』
『ヤバないって言うと思う?』
『思わないかなぁ〜、でも眼の前に領地はあるのよねぇ〜。威力偵察してカツカツそうなら攻める?』
『侵入陥落狙いかいな。って、ゴーレム侵入させる程アホやないやろうし、ツキさん単独でどうにかなるもんなん?』
『空爆したから無傷ではないと思うよ?立て直しに引きこもってたらヤバい。でも、さっきの攻勢で幽霊しかいないなら楽に潰せる。』
『暇なんは分かるけど出て来てるユニットか指揮官狩りで頼むで〜。成り行き陥落は任せるけど。』
『OKボス〜。でも、病人(仮)なので18時頃には一旦落ちてご飯とかお風呂に行ってきますね〜。』
『そう言やぁツキさん病人なんやっけ?無理はせんといてなぁ〜。』
そんな声を貰いゴーレムを眼下に置いて木の上を進む。途中でうろついていた歩兵はゴーレムが殴り倒したので問題ないけど、結構プレーヤーは入り乱れてなぁ・・・。あちらコチラから攻撃音が響いてくるし。
サクッと襲って来たプレーヤーを倒しはしたものの、最終日に森が消えて雄郡となった場合かなりカオスになるなぁ・・・。少なくとも大規模領地は盟主がいて何をしよう、こう動こうと言うのが伝わりやすい。でも、ほっぽり出される俺達+αは意思伝達も出来なければ、周りはみんな敵で下手すると大規模領地が攻めてくる前に勝手に潰し合って、貯まったPTを美味しく頂かれる。
流石に3日目まで参加して放置やら勝ちにいかない所は・・・、あるな。最終日は日曜日。なら独り身は別として家族のいる人はお出かけやら、家の用事もあるだろうし、思い出したくないけど独り身でも休日出勤なんて事が・・・。そうでなくとも諦める人もいるのよねぇ。覆せないPTはどんなに課金しても買えないし、プレーヤーと言う人材も集めていなければ補充出来ない。
少なくとも楽しむ為にプレーしてるのであって、ゲームの中まで息苦しかったらどこで息を抜けって話なんですよ!と、言いつつユニット相手に無双ゲーが出来るから最終日だけ来る人もいるし・・・。
「アースバインド、エアナックル!ゴーレムぶん殴れ!」
「ぐきゃ!」
「汚ねぇ花火だぜ!っと、そろそろ時間か・・・、このままゴーレム前進!」
攻撃して来た指揮官を迎撃してゴーレムパンチでポリゴンへ。鈍いけど強いぞゴーレム!歩兵ユニットに囲まれた時は自爆も考えたけど360°のダブルラリアットで難を逃れた。しかし、結構HPも減っているので前進させて適当なタイミングでユニットを巻き込んでの自爆!そこそこPTは稼げたかな?誰もいない領地の陥落も1回出来たし。
「戻りました〜。あ゛ぁ〜・・・、領地に癒される。」
「そこそこ稼げた様じゃな。」
「ぼちぼちですね、領地の方は?」
「私が倒したユニットとバリスタなんかで撃ち抜いたユニットが多いかな?指揮官はあんまり来てないよ。」
「幽霊状態で動けん所もあるんやろうな。で、ツキさんはどれくらい落ちる?」
「う〜ん・・・、何もなければ1時間から1時間半とか?」
「ならワシが残っとるからサクラも飯を済ませてこい。篝火も今の内に飯にすると言っとったし、ゲキヤバにでもならん限りは呼び出しはせんよ。」
「せやな、休める内に休んどきよ〜。」
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ログアウトすると丁度三枝先生が夕ご飯を運んで来ていた。メニューは生姜焼きでいい匂いが漂う上に肉は結構高く盛られている。どうでもいいけど起きて食べてゲームしてと全く運動をしていない。流石に太らない?
「料理を見つめてどうかしましたか?生姜の匂いがキツイとか?」
「いや、本当に食っちゃ寝してるから太らないかと。前は結構歩く事も多かったですからね。」
「ふむ、完全に太らないとも言えませんが太ったら太ったでカボチャ等を出せば痩せますよ。それを抜きにして身体を動かしたいと言うのであれば、何かしらの策を講じますが?」
「う〜ん・・・、策って言うとルームランナーとかエアロバイクとかですよね?EMSマシンだと筋肉は付けれても運動とは違いますし。ヨガマット貰ったしそれで我慢するかな?」
女豹のポーズやら両足を頭の後ろで組むポーズは出来る。前の体ならヒィヒィ言ってただろうけど、今の体は柔らかいから結構無茶なポーズも出来るし、ちょっとやそっとの運動では筋肉痛にもならない。
こうなってくるとどこまで動けるのかも知りたいのよねぇ。やっぱり自分の体だし、どれくらい走れば息が上がるとかも知らないと、いざ走った時にすぐにバテる。
「その辺りはもう少ししたら考えましょう。最悪、深夜にリハビリルームを借りると言うのも手ですから。」
「でもそれって先生達に迷惑かかりません?」
「宿直時なら大丈夫でしょう。流石にこの部屋の事も多少は噂になって来ていますし。」
「噂?」
「ええ。看護師達からしても人の出入りはあるのに自分達が入れないのは、何かしらの制限がある患者だと感じます。そしてその部屋に私や敷田さんが入るだけなら要観察と言う話でよかった。しかし、柊さん達が来た事により話せる程度には回復していると分かる。なによりこの部屋には名札もなく、誰が入院したいるかは伏せてありますしね。」
「なるほど、正体不明のXにみんな興味津々であると。」
「いえ。Xではありません。ハロウィンで部屋からでたりマリー・ガンディーとして歩いているので、どちらかと言えば引き篭もり少女の健康を心配する声が・・・。」
「あぁ・・・、もしかして出歩いても受け入れられますかね?」
「可能性は高いですが配置者と言う側面もマリちゃんは持っているので今度は混乱の元になりますね。その辺りは色々と考えましょう。」
生姜焼きをもっちゃもっちゃと食べつつ話を聞くけど、多少は前進している様だ。木本さんの話で急に出るかと言われるとやっぱり多少の恐怖心ばある。だからこうしてゆっくり進めるならその方がいい。
「ん・・・、また華澄から?えっ?また明日来る?」
「どうかされましたか?」
「いやぁ・・・、なんかまた明日華澄達が朝イチで来たいって・・・。先生にも迷惑かかるから断ろうかな。宿直なら明日は非番と言うか休みでしょう?」




