69話 世間は狭い 挿絵あり
ゲームは1日1時間まで!昔はそう言って怒られたらしい。その時代を知らない俺からすれば、本当にゲームは娯楽で勉強とは切り離されていたのだろう。でも、今は違う。ご飯を食べてまたインすると先生に言えば適度な休憩をして下さいと言う言葉で許される。
実際色々とゲームはしてみたけど、デイリーミッションでほぼ確実に項目として上がるのは写経と言う名の書き取りやらなのよね。なんでまたそんな事を言うかと言えば、たちの悪い運営は今日のデイリーミッションを写経系で固めて来やがった。戦況は全体的に動きつつも緩やかで森を攻める領地は少ない。
何故かと言えば爆撃により森と平地のギリギリまで追い詰められたプレーヤー勢力が、平地から攻めてくるプレーヤー勢力と睨み合い均衡を保ってるから。相変わらず散発的な戦闘は続いているものの最終日に向けてどこも物質やユニットを温存したいと言うのが本音で、上位に入れなくとも一騎打ち遊びはしたい。
そんな束の間の平穏をどうやって過ごすかと言えば、俺達はユニットの増産をしつつ領地の資源をどう運用するかと言う方針を決め、空いた時間に今日の分のデイリーミッションをやっていなければやりたい人はやろうという話になった。
「写経めんどい・・・。」
「あっ!ツキさんもそう思う?」
「寧ろこれ好きな人いないでしょサクラさん・・・。やれば漢字覚えたり字が綺麗になるとは言え、進んでやりたくはねぇ・・・。」
「でも、コレって図形として覚えて忘れない様にするにはイイんでしょ?実際小学生の頃にテストで100点取れたし。」
「漢字と言うか文字の成り立ちが図形からだから、中国語とか話せなくても読めたり書けたりはする様になるかな?トラブルオンラインで語学勉強したいなら図書巡るか、あえてさまよい人の腕輪付けるとか?」
基本的に医療系VRMMOは色々な国に向けて配給する事を前提に作られている。国的には外貨獲得の常套手段として使われるけど、プレーヤーからすればその辺りはあまり関係ない。なにせAIが出身地の言語に翻訳してメイクしたボイスで脳に直接語りかけてくるから。でも、あえてそれをOFFにする機能もある。
それがトラブルオンラインではさまよい人の腕輪で、身に付けると翻訳がシャットアウトされて様々な国の言葉が聴こえてくる。どこで手に入れるのかって?最初の宝箱からだよ!やたらと豪華で如何にも主人公がしてそうな見た目な上、絶対になくさないで下さい、なくせませんがとチュートリアルで言われて、なら装備しようと腕にはめると急に異国の言葉が・・・。
実際初期装備としてはそこそこ優秀なのが憎い!初期組は配給元の日本人が多く、何の説明もない腕輪をほとんどの人が嵌めていた。しかし、数日して海外配給が始まると、途端に言語の坩堝と化しててんやわんや。そんな中で腕輪を気に入らずはめなかった一部のプレーヤーから『なんでお前この人と話せないの?』と言う声が上がり、腕輪が悪さをしていると気づかされた。
いやね・・・、うん。語学を勉強するならその国に行って耳を慣れさせるとか、その言語しかない所に行くのが1番いいとは言うけど、ものには限度と言うものがあるだろぅ?しかし、プレーヤーには大変不人気だったこの強制力語学チャレンジだが、何故か最優秀勉学賞を受賞したとか何とか・・・。
「あれねぇ・・・。3カ国語は読み書き出来るし多分不便はそこまでないんだろうけど、今更語学勉強して何になるのかって話かなぁ〜。スマートレンズやスマホあればどこ行っても翻訳してくれるし、電波なくてもスマホと連動してアプリ使えば余裕だし。」
「その先の断電の時かなぁ〜、使うのって。後は発生クエストとか?」
「発生クエストで使うの?」
「使うと言うか翻訳して来いってのはあるよ?その時さまよい人の腕輪使うと結構便利かな?」
あの発生クエストは結構面倒だったな・・・。本を渡されてコレを読める人を探して翻訳して来てと言われたけど、中を見るとキリル文字が・・・。翻訳を噛ませようにも読める人じゃないと判定されるし、ログアウトして翻訳しても誰にも見せてないと判定された。だからこそ、腕輪はめてロシア人やらウクライナ人を探す羽目に・・・。
たちの悪い運営はどこからの接続か知ってるから、日本人に翻訳してもらってもNGを出すんですよ!まぁ、そんなクエストのおかげで色々な国の人とは知り合いになったなぁ。割とフレになった後に腕輪はめると実は海外の人ってパターンも結構多い。そう考えると配信者である俺は海外デビューしてしまっていたのか。
「なるほどね・・・。いや!閃いた!この腕輪使えば海外の筋肉勢と仲良くなれる!首とかいらないから肩の筋肉パンパンの奴出てこいよ!気を付けした時に筋肉で腕が広がる奴も来いよ!と、そう言えばツキさんは何カ国読み書き出来る?」
「う〜ん・・・、若干怪しいのも含めれば5かな?英語、中国語、ヒンドゥー語、ロシア語、後は日本語。」
多いか少ないかで言えばちょっと多めかな?今時バイリンガルは普通だしVRMMOやってると、書けるだけ読めるだけって人も多い。最大のネックはやっぱり発音かなぁ〜。海外取引とかで翻訳切って話すとどうしても子供が話している様に聴こえると言うか、選ぶ単語のせいでそう聴こえるらしいし。
「おぉ~。優秀優秀、狐巫女のツキちゃん偉い!なにか頭の良くなるご利益を!」
「フハハハ・・・、大麻を振って差し上げましょう。」
「ありがたやありがたや・・・。ん?」
「おっ?」
女性組と言う事でサクラさんとデイリーこなしてたけど、どうやらウチの領地は一騎打ちを申し込まれたっぽい。相手は2人でウチの領地には4人残っている。基本的に一騎打ちは領地前に現れて名乗りを上げ、一騎打ちを申し込むのだけれど拒否出来る。拒否出来るのだが拒否し続けると今度は拒否の選択が確率で消える。
つまり粘られればいずれは一騎打ちする事になる。まぁ、そんな悠長に名乗りを聞く前にユニットと大砲やらバリスタで蜂の巣にするんだけど、今回は森と言う地形が仇になってヒットアンドアウェイ名乗りをやられたらしい。更にそこで問題なのは妖精王の強制参加・・・。
使い勝手いいと思ってたけど、一騎打ちになるとNPCは最優先で出る事になるらしい。うぅむ、指揮官として採用されてるからPT的にも美味しく、鍛えてない妖精王は多分負けるな。次の領地防衛戦の大規模領地はメインコア揃えて倍の数で来ると思ったけど、そんな落とし穴があるなら採用は吟味するだろう。
なにせ勝てそうなプレーヤーに対しても強制的にNPCを出す事になる。なら、さっさと一騎打ち申し込みまくって戦力やらPTやらを削りまくればいいしねぇ。最近は動かない領地防衛戦が多いと聞いたし、ある意味コレもテコ入れなのかなぁ・・・。
「取り敢えず写経後どれくらい?」
「もう終わるけどツキさんは?」
「こっちももうちょい!くっそー!なんで今回はよりにもよって梵字の写経なんだよ!」
そんな悪態をつきつつ領地へ戻ると既に一戦目は終わり妖精王は幽霊と化し、頭上には復活までのカウントが浮かんでいる。なんと言うか悔しそうな顔は分かるけど、どんな戦いをしたんだろ?後で誰かから映像データ貰お。
「寝込みと言うか空白時間を襲われましたね。相手は?」
「一騎打ち出たかった〜、誰が次出るの?お兄ちゃん?」
「・・・、僕です・・・。」
「おぉ・・・、ここで篝火さんがババ引いたかぁ・・・。」
「しゃあない事やな。王はん強制はビビったけど、それ以外は普通の一騎打ちとかわらへんで。ツキさん王はんの戦闘映像データいる?いるなら後で渡すけど。」
「下さい。流石に写経してる映像だけ配信に上げても面白くないですからねぇ。で、相手は?」
「No民とか言う所だぞ?来てるのはエルフ・・・、ツキさん野良で絡んでなかったか?」
「えっ!あ〜、佐賀さんと嬉野さんが来てる。ハロ〜。」
女性アバターの嬉野と男性アバターの佐賀がいる。ガチでやるって言ってたしPT稼ぎに走り回ってるんだろう。参加賞狙いの領地が消えたとは言え稼働している領地は万単位であるし、ここで出会うとは世の中狭いもんだ。
「戦場の習わしゆえ、再度名乗ろうNo民の佐賀ほのか推参!攻め込んだけどツキさん所か〜。」
「一騎打ちやめて帰る〜?」
「いや、やる。」
「篝火よ、助言は要るか?」
「貰えたら嬉しいですけど卑怯じゃありません?」
「勝てば官軍じゃ。と、言っても配信見て弓使いくらいしか知らん。」
「助言とは・・・。取り敢えず善戦してきます。」




