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狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


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233話 愉悦(笑)

 昔・・・、そこまで昔でもない大学生時代。過去にあった、あり得ないと思う事を前提とした事件をレポートにまとめるというものがあった。誰だってこう思うだろう?と言う先入観をなくすための授業なのだが、確かに今にして思えはコレはかなり重要だな。


 例えば熱すぎるコーヒーで約3億円の賠償金。有名なMマークのお店であったことだけど、被害者側の火傷が酷かったのと、コーヒーが熱すぎるの苦情でそういう判定になった。逆に猫を電子レンジで乾かさない。コレは都市伝説で事実ではない。


 まぁ、昔はダーウィン賞なんてものもあったし、レポートをまとめた結果として言うなら人は思いもよらないことを平気でするし、その結果の所在を思わぬところが認定されて、賠償金を払う事があるということだろうか。


 なんにしても、口約束は記録として残れば軽くない。だから、対面で話すなら言葉には気をつけるし、公式発表するなら言葉を選んで誤解をなくすか、事実だけ伝えるために少なくするかになる。まぁ、スマートレンズなんかがあるから、AIが補足もしてくれるんだけどさ。


 と、考えつつもコレって俺にも、特大のブーメランがぶっ刺さってるのよね・・・。なにせめんどくさがった結果が今の俺で狐娘な訳だし。


「卜部さんが案件持ってくるなら、なんだと思います?」


「う〜ん、話としては文化的なものって話をだしたから、神社仏閣やら刀剣の紹介とかじゃないですか?正月も過ぎてるのは不幸中の幸いと言うか、どこどこ神社で巫女やれって要請はないでしょうし。」


「その場合、マリちゃんの拠点問題はでてきますね。流石に自力移動、自力交渉、衣装なんかの自力手配はないと思いますが・・・。」


「と、言うかお2人としてはどうなんですか?健康なんで勝手にどっか行って、勝手に帰ってくるって形でもいいと言えば、いいんですけど。」


「不明ですね。」


「分かりませんねぇ。医院長からの指示があれば私たちとしても同行と言う形が取れますけど、長期的に国内を飛び回るとなると、時間的なものは割と厳しくなりますよ。」


「むしろ、マリちゃん的にはそれでいいんですか?リスク管理という話をするなら、動画配信を行うのと外で実働的になにかをするのでは、根本的なリスクが違いますが。」


「三枝先生が言うことはご尤もです。ただ雪山の事を考えると、宮内庁と言うか卜部さんはその辺りまで、織り込み済みで考えていると取るのが妥当でしょう。」


 山の麓に妖怪の隠れ里、傍目から見れば普通の温泉街で本人達も妖怪としての意識は薄い。神社仏閣にしても、有名なところは省くだろうし、山沿い海沿いの人の少ないところとか?森林管理署に事務所用意されてたりもしたし・・・。


「ある意味地味案件が山程来そうですね。」


「山程来るのは実績の積み上げ過程ですよ敷田さん。仮に私のチャンネルの動画に『提供:宮内庁』と入れて、その動画が提供のない動画を追い越した場合、見てる人からすれば私は宮内庁の人間だと思われる。」


 そうでなくとも力技と言う手もある。例えば鞍馬さんと神楽を舞った動画。あれを神楽指導動画として、宮内庁公式HPに載せるのも手だし、文化庁と組んで伝統芸能保存の名目でアピールするのも手だな。


 クライアントと言うと少しおかしいかもしれないけど、姫子さんは受肉したしブライトも受肉した。その中で宮内庁の人間だと思われると、対話の糸口を作る前に組織の人間として見られてしまう。人間同士の話ならいいけど、木本さんの説明を聞いた限りだと、下手に所属していると見られると最初から喧嘩腰で来られるかも・・・。


 なにせぬらりひょんや座敷童子大先生曰く、スパムメール的な百鬼夜行の詠唱は少なからず、電気精神体にも届いたようだし、来いと言って暇だから現れた電気精神体をとっ捕まえたとなったら、ガチの敵認定されかねない。信用とは積むもの、そして土台とは作るもの。今は1人で中立だからいいけど、傾けば信用が毒にも薬にもなる。


「所属問題は面倒ですね。私としても思想の対立から産まれる派閥は面倒だと思いますが・・・。」


「ん?それって白波先生のことですか?三枝先生。」


「ええ、まぁ・・・。」


「差し出がましい話をするなら、白波先生は医者らしい医者ですよ。」


「医者らしい医者?」


「その前にマリちゃんはいつ白波先生と?」


「ぬらりひょん騒動の時ですよ敷田さん。白波先生の部屋で軽く話した限りですけどね。医者を志し小さい頃から勉強する。だから、コミュニケーションと言う部分で偏りが出る方もいますよ。まぁ、他人を完全に理解することもできなければ、一面だけ見てそうだと決めつけるのも違いますが・・・。」



________________________

 

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 病室にいたのは思った以上に狐だった。姿としても性格としても、だ。登り上がった末にそうなった、それはもう仕方がない。仕方がないが、こちら側が提示するもののリスクを感じ取り、不用意に頷かないのは元営業マンとしての性か、或いはそれだけ疑り深い狐だからか・・・。


「卜部さん、あまり彼女を囲うような話し方はやめて欲しいんだけど?」


「いや。失礼失礼、天野医院長。中々の掘り出し物で先に手が出たとでも思って下さい。」


「どうだか。酒呑童子を討った時も変装して酒を飲ませての闇討ち。今も柔和な顔での懐柔、過去から今に至るまでやり口に変化がないように思うけど?」


「それこそですよ天野医院長。討つべき相手を前に見合ってから始めるなんて馬鹿らしい。そもそも妖怪にとって人は塵芥、その塵が策も用意せずに挑むのは、勇気ではなく無謀ですよ。」


 そう、無謀。祓うしかなく、祓っても死なず追い払ったのに人の近くにある、人を通り過ぎて変わった者。実態のある鬼なら斬れる。だが、それもない霧なら通り過ぎる。その霧を押し固められる雁木と言う型枠。


 なにも電気精神体を殺しつくそうなんて、だいそれたとこは考えない。そもそも、それができるかもまだ分からない。でも、仮に木本が嫁にした姫子を切った場合、その切られた事実は雪女たちに繋がるのではないか?


 なにせ今まで私たちは相手を探るところから始めていた。そして、その過程で囚われる者も目を悪くする者も多くいた。当然、それは軽い結果で重い結果なら死だ。雪女を相手にして、氷漬けの遺体を見ずに済んだ。


 あまつさえそれを御して、人側の土俵に上がらせた。例えそれが1つだとしても、雪女と言う総体からすれば大きな話で、願いを叶える糸口とも言える。


「無謀・・・、先に言うけど無闇に謀る事はよした方がいい。既にマリちゃんはマリちゃんとして、そのルールを使っている。下手にバランスを崩そうとするなら、今度は歯止めが効かなくなるかもしれないよ?」


「ええ、それは重々承知していますよ。ですが、彼女は既に巫女としての本質を勝手に揃えてしまっている。」


「人で無き者と対話する術か・・・。」


「先に話しておきましょう。天野医院長達が彼女のデータを部分的に消したり、ロックをかけて入手できないようにしている。しかし、アマテラスはそれを知った上で善意から動いている。話し伝える者とは中心にある者。そして、聞き伝える者もまた、中心にある者。三者の中心におわすは、空白の神のみ。それ即ち・・・。」


「名しか語り継がれることのない、ツクヨミノミコトだろう?」


「御使いは狐ですよ。」


「八百さんも言うよ。世界は行き当たりばったりで、余白があって初めて成立すると。でも、僕はこうも思うんだ。知られないからこそ余白であって、大多数が知れば余白は消えるのではないかとね。」



________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 先生たちと話し、遅めの昼食を食べてゲームにログイン!正月休み最後の人も多いのか、はたまた昼間だからなのかイベント時より人は少ない。まぁ、長いイベントだったから骨休めにはちょうどいいか。交換所だけはかなり賑わってるから、イベント終了後と言う感じもある。そんな事を思いつつ領地へ。


「ツキ、なにをしているんだ?木にベタベタ札を貼ったりして。」


「ん?サブスクチケット使ったり、育てるものの配分変えたりユニットの練兵状態確認したりかな。領地防衛戦自体はあまりやってこなかったけど、畑のグレードも上げておきたいし、製造するユニットも色々取り揃えておきたいしね。」


 サブスクも使ってなかったから、領地に来るたびに製造完了の文字を見たり作物を収穫して下さいの文字を見たりと、途中からやらないなら放置でいいかと触らずにいた。でも、配信者やるならある程度領地防衛戦にも備えておきたいし、なによりダメダメな領地でどこかと同盟組むのは避けたい。


 と、言いつつも時間を金で買ってサブスク解禁したから、備蓄も製造もかなり楽。なにせ指示だけだしておけば、どんどんユニットも野菜も貯まっていく。


「なるほど、稀人同士で行う戦への備えか。ただ疑問に思うのだが、なぜツキは稀人郷でも戦う?あそこは平和なのではないのか?」


「難しい質問だね、それは。ここに闘技場があるように稀人郷にもリングで殴り合う場所がある。当然、ルールがあって、ライセンスがあってと、単純に殴り合えばいいというものでもない。」


「ならば、ツキはその資格を持っているのか?」


「さぁ?私にはライセンスなんかはないかな。でも、手足がある以上はそれができないわけじゃない。だから、難しい。仮にブライトが私と同じように稀人郷へ来たとして、拘束されて自由がなかったらどうする?」


「そんな動けない状態で、我がいる意味はあるのか?」


「その意味を探すのもまた、現実を生きるってことだよ。さてと、領地運営はこんなもんかな?暇だしどっか遊び行こうか。行きたいところとかある?」


「むっ。稀人郷へ行きたくもあるが、先に残った邪神の塔を見たい。」


「なら、そこ見に行こうか。私もそっちは確認してないんだよねぇ。撮影も開始してっと。」


 ハヤトさんに紹介しようかと思っていた陸亀さんインしてないし、別府さんたちもいない。佐賀さんたちは祐徳稲荷とか行ってるのかな?有名な神社だし、新年は賑わってそうだ。


 残った邪神の塔、簡単に言えば西半球側に属するものとなるけど、あちらも海の上にあるんだろうし、どこまで見に行けるんだろうか?ワールドアナウンスとして邪神は封印された。なら、なんで塔は残った?かぐやがぶっ壊してくれれば、話は早かったんだけどなぁ・・・。


 そんなことを考えつつ、ポータルを使って西半球側の街へ。どこでも良かったと言えばよかったんだけど、あんまり辺鄙な街へ行くと、変にアメリカンナイズされたNPCやら、美味い料理よこせと叫ぶイギリス人っぽい人もいる。だから・・・。


『いつも甘い香りのする街、楓へようこそ!』


「相変わらず甘い香りがする・・・。」


「我には好ましい。木のいい香りがする。」


「それって樹液・・・。」


 ブライト=カブトムシ説が!確かに昆虫の王様といえばカブトムシ。びっくり返して裏を見ると、気持ち悪さはあるけど、普通に見る分にはカッコいい。


「我は樹液など・・・、たまに吸う。」


「まぁ、この街の川やら飲料水って、全部メイプルシロップだしねぇ・・・。」


 川を見る、茶色い。動物へ与える水を見る、茶色い。そして、街の中心にそびえ立つデカい木を見る。メイプルシロップをどんどん垂れ流してる・・・。甘い物が好きな人にはたまらないお菓子作りの街、それが楓である。


「杭の交換所に期限終了まで後何分とか表示されてる・・・。めっちゃ怪しい。」


「我には見えぬな。」


「見えない?NPCへの配慮とか?でも、あんな表示今まではなかったんだけどなぁ・・・。」


 岩戸さんが運営に参加したから配慮した?ないな。邪神戦の後だからか、人はそこまで多くない。ただ、カウントダウンしている交換所はプレーヤーが集まってる。そんな街を出てフィールドから海を見ると、確かにそこには邪神の塔が残っていた。日本側と違うとすれば、戦艦が取り囲んで物々しい雰囲気があるとか?


「おぉ〜・・・、あれってどうするの?引っこ抜く?」


「引っこ抜いて終わるなら、最初から大破させている。」


「それは確かに。・・・、あれ?なら打ち込むの?なんか残り続けそうだけど。」


「質量弾がいる。過去にはそれがなかった、だから被害が広がった。しかし、今は1つしかないのだろう?」


「2つあったけど、1つはぶっ壊われたよ。多分宇宙でかな?私は見てないけど、宇宙で閃光が走ったりしてたって言ってたし。と、言うかあれなんなの?」


「質量弾だが?」


「確かに青白く光ったりもしてたけどさぁ、なんなのかは全く分からないじゃん。なになに、ブライトも作るの手伝ったとか?」


「大きく見ればそうかもしれない。しかし、直接的になにかしたかと言えば違う。」


「なんか変な言い回しだなぁ・・・。その辺りもメインストーリーやれば分かるとか?って、なんかプレーヤーが街に走り込んできた!なに!?何事!?」


 バフを盛ってるのか、かなり早い!なんならバイクなんかのチャリオットも使ってかなり爆走してる!今日はまだ死んでないから、下手すると轢き殺されるな・・・。


「どけーーーっ!!!杭の交換時間が終わる!」


「交換期限終了後は、絶対に悪い文明の運営は抗議に応じないぞ!」


「だから早く行こうって言ったんだ!こんな弱い武器、倉庫に何個もストックなんかしないぞ!?なんなら捨てるぞ!俺は!」


「でも、まだ杭の欠片が集められるなら、限界まで集めるだろ!?全プレーヤー塔から締め出されたが!」


 ・・・、は?まだ杭の欠片が集められる?時刻は既に交換期限の18時まで残り15分。運営からのお知らせでも、交換期限終了間近のアナウンスは飛んできてるし、なによりイベントは終了したんじゃ・・・。


「なにを悩んでいる?」


「いや、なんで杭の欠片が?」


「あそこに塔があるからだろう?」


「いや、塔があるからだろうって・・・。」


 確かに塔があるなら、そこにモンスターはリポップする。なら、新しいダンジョンとしてこの世界に刻まれた?う〜ん、考えても始めらないし、一度行くのが・・・。


ドーーーーーーン・・・!!


ドーーーーーーン・・・!!!


「今度は何事!?」


「ツキ・・・、アレだ。」


 ブライトが指さす先、そこには塔に向かって艦砲射撃しまくる戦艦が!蒼白い火花散らして、確かに邪神の塔は削れてるけど、なんか破片も飛び散りまくってる。なるほど・・・。俺はかぐやが質量弾で綺麗さっぱり押し潰すのしか見てないけど、後から封印した場合はああやって壊すのかぁ〜。


「質量弾の欠片さえも砲弾としたか・・・。」


「えっ!?あの撃ってる弾って質量弾の欠片なの?」


「1つしか残らなかったのだろう?なら、そうする他ない。」


 そんな話をしている内に、塔はどんどん削られていき見る影もない。結構派手にやってたけど、交換期限終了を知らせる合図にしてはいささか行き過ぎな気もするし、なにより運営がラスト5分時点でも杭の交換を促してきたのが怪しい・・・。



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        運営よりお知らせです


 邪神リローデッドの報酬交換期限が終了しました


 仮に交換がまだの方は、正月と言う事を考慮し

 一度のみ、再度交換所へ行き交換することが

 できます。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 なんかやっぱり怪しい。悪い文明の運営がここまで杭に執着するなんて、何かあるとしか思えない。でも、なにをやらかすかも推測できない。だって、立て続けにイベントやる事は今までなかったし・・・。


 まぁ、なんにせよ今ある杭は記念品だから交換に出す気もないし、もう一度集めろと言われたら面倒で仕方がない。なにせ、前は普通に買えたけど今だと探す方が大変だしねぇ。


 そんな事を思いつつ、ブライトとモンスターを狩ったり、甘味巡りをしたりしていると、夜は更けていき日付が変わってしまった。最近遅くまでゲームしてたし、生活週間ががなぁ・・・。ん?


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        運営よりお知らせです


 メインストーリー第2章が選択できるようになりました


 メインストーリー第2章、参加条件につきましては


 邪神を封印せし者の杭

 状態:覚醒

 必要本数:1本となります。 



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「運営・・・、やりやがったな!?と、言いつつも愉悦に浸ろう。」


 ここの運営が救済措置なんて、優しいことをする訳がない。なんなら朝イチログインした人は、真っ先に杭の交換を運営から提案されるんじゃない?

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