211話 元旦の朝
「ふ・か・せ!ふ・か・せ!!蹴りーーー!」
「そろそろヤバいぞツキ!」
「くっ!あと数メートル!」
なにかないか?なにか・・・、ここでウォーカーアーマーのパンチを出す。ダメ、ちょっと伸びた手じゃなにも掴めない。このままブースターふかしつつ蹴りを出す。ダメ、流石にアーマーの重さで高度維持ができない。
なら、どうする?いや、答えは単純で簡単にあるんだよ。この場でウォーカーアーマーをインベントリにしまい込んで、飛び蹴りでどうにかワイバーンの上を取る。それが一番たどり着ける算段がつきやすい。つきやすいけど、ワイバーンはほとんどアールさんのところなんだよなぁ〜・・・。
「そう言えばブライトは飛べたよね?あそこまで私を運ぶのは?」
「痩せるなら考えるが?」
「私はぶーちゃんじゃない。42kgしかない!」
>> 公称42kg
>> 公称30歳のツキちゃんだぞ?
>> 落・ち・ろ、落・ち・ろ
抜け駆けは許さんぞ?
>> 先に死んだ亡霊がここにも
「落ちろと言われて落ちるか!でも、なんかないか!」
>> 安価?
>> 安価やっちゃう?
>> 大丈夫!
落ちても下でボスラッシュを戦うだけだからさ
「ぐぬぬ・・・、絶対じゃない安価プリーズ!」
>> マジか!
>> プリーズされちゃったからなぁ〜
>> フットスタンプ!
>> おいおい、急降下技だろ?
フットスタンプ!
>> 落ちろ!フットスタンプ!
漁夫の利なんて面白くないだろ?
>> 足場がないんじゃなぁ〜
フットスタンプ!
「どお゛じで私を落とそうとするのぉ~!!はい。フットスタンプしかないのでフットスタンプやるよ〜。」
>> この狐なにか思いつきやがった!
>> 当然急降下ですよね!?
「ブライト、ちょっと背中貸して?」
「むっ?少しならいいが・・・、上へか?」
「いや、ウォーカーアーマーの下を飛んで。大丈夫、1人でいいよ!」
「・・・、それでたどり着けるのか?」
「モチのロンよ!」
理論上は可能である。ブライトにはフレンドリーファイア無効機能はない。そして、チャリオットは乗り物なのでインベントリにしまえばその場で消える。後は、俺のプレーヤースキル次第か。コレならアサシンプレーもう少しやり込んどくんだった・・・。
ブライトは飛び立ち、俺は下についたと言う言葉を待つばかり。装備は?使う魔法やアーツは?バフは?って、先にバフはかけていい。って、ホバリングもそろそろ限界なんだけど!?
「着いたぞ!」
「OK!ウォーカーアーマー収納!カモン大麻!からの・・・、フットスタンプ!ファイトー!」
「一ぱぁーーーー・・・。」
「飛び蹴り!アイスピクシー招来!ちっ!脳波操作!キリキリピクシーを動かせ!」
>> ガチでフットスタンプやりやがった!
>> ブライトは真っ逆さまに落ちてったけどな・・・
むしろ、フットスタンプでピンポイント足場か
>> ハンプティダンプティじゃないから
割れないはず!
>> それよか届く?
アイスピクシークライミングで届く!?
ピクシーを足場にする、いやその前の時点で足場のない空中でピクシーを呼んでも、俺自体は落ちてピクシーがその場に置き去りになる。それを回避する一手が、ブライト足場。フットスタンプからそのまま飛び蹴りに繋ぎ、斜め上に跳ね上がりながらピクシーを呼んで上を取り、それを足場にして更に空へ!
>> ワイバーンが寄ってきた!
>> うわぁ・・・、全身目玉だらけですやん
>> 私知ってる!百々目鬼って言うんでしょ!
雪だるま>> アレは鬼ではないぞ
>> 熱線を目からだす鬼なんているか!
>> サイクロップス!
>> アレはマーベルだろ・・・
「9発だ!9発ならナインテールで耐えてやる!あっ!砂上の盾!コレで10発!耐えられる!」
>> 生き汚い!
>> 生存本能の権化!
>> 流石はテウメーッソス!
>> それなに?
>> 捕まらない運命にいる狐
マイナーか?
「ミスったのでアーーーーールーーーーー!!!!」
「ちょっ!頑張ってワイバーン引きつけてよーー!!!飛び蹴り!アイスピクシー招来!フットスタンプ!飛び蹴り!」
落ちるアールさんは・・・、な〜む〜。助ける助けない以前に、足場が小さいんだよ!こちとら普段はグリフォンとかを足場にしてマリオごっこやったりしてるんだぞ!なにが悲しくてこんな小さな足場を使わにゃならん!
そりゃぁ、アサシンプレーする人がたまにやってるのを見かけることはある。でも、見るとやるのでは大違いなんだよ!あっ!またアイスピクシー足りねぇ!
>> 毎回砕かなくてもピクシーは足場になるぞ〜
>> それ、練習したアサシンだからできるやつ
ふわふわ勝手に飛ぶから、足場にするのも大変
体験談だぞ!
>> お前・・・、ガチムチビルドじゃね?
痩せ型とかなら、割ととどまるぞ?
>> それ、お前の影が薄いからじゃ・・・
「もうちょい!あと少し!くっ!」
餌が俺しかいない、つまりは俺を落とせばワイバーンの勝ち。少ないとは言えピクシーと飛び蹴り、フットスタンプでMPはカツカツになりつつあるし、熱線が容赦なく飛んできて足場のピクシーも溶かされれば、尻尾も盾もどんどん削られる!
「あと一手!あと一手だ!行けるか?伏流:絶刀!」
>> アレ繋がるってマジか!
>> 対空刀術で更に高さ稼いだな・・・
でも、ワイバーンが!
「ワイバーン!君に決めた!フットスタンプ!からの飛び蹴り!」
迫りくるワイバーンと刀術ですれ違い、その頭に熱線に被弾しながらもフットスタンプ!もう目の前だ!コレでリローデッドに触ってポータル開放されなかったら大人しく落ちよう・・・。
>> ギリギリ届かない!
>> 結構ゴツゴツしてるみたいだからまだ!
伸ばした手はギリギリ空をきる・・・。ダメか・・・、ダメなのか・・・。なにかなにか突起でも表面にあれば、リローデッドに触れられる・・・。ん!?ん!?!?!?
「おっ!おお!って、これは・・・、杭?」
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邪神リローデッドポータルを開放しますか?
YES/NO
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「YES!YES!!YES!!!開放!開放!!」
>> やりやがった!
>> ツキちゃんやった!
>> 邪神に触れてもポータル開放か!
「よし・・・、じゃあ落ちまーす。」
>> はぁ?邪神の中は!?
>> お狐様!撮れ高ですぞ!
>> まて!なんで手を離した!
「いや〜ーーー・・・、1人攻略とかむーーりーーー!!!!」
滝壺めがけてのフリーフォール!!!ワイバーンも一緒にフリーフォール!!!やめて!暗転して着地する前に死ぬ!ヒールでギリギリだけど、すでにHPはレッドゾーン!!ポーション?ははっ!今使うのはもったいないだろ!そんな事を考えているとギリギリ暗転・・・、してからのぉーー!!
「ハァ〜ィ、キングリザードマン・・・。ぐへっ!」
>> 真っ二つw
>> 周囲見る間もなく唐竹割りw
>> とりあえず地獄と言うか、運営がガチなのは分かった
>> えっ!?ここを攻略するんですか!?
ツキ>> あけおめ!ことよろ!そして、おやすみ〜
>> 永遠の眠りかよ!
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「ふぅ〜・・・、流石に寝ないとまずい。」
既に元旦、1/1である。コメントを残してログアウトしたけど、流石に寝ないと怒られる。ハブとして残しているチャンネルにはあけおめ、ことよろのコメントが滝のように流れているが、それを見ても今は戻る気がない。少なくとも今日一日と明日、イベントは2日の18時まではやるんだしねぇ。
ただ目が冴えて寝付けそうにないし、アレだけ熱線を浴びたせいが体も温い。あまりよろしくないとは思いつつ、部屋を出て廊下をコソコソ歩き屋上へ。昔なら立ち入り禁止なんだろうが、今なら病院のシステムでここにいることは筒抜けなのよね。
流石に精神的にヤバい人なら看護師が飛んでくる。でも、俺の場合そうではないからすぐには来ない。何もない閑散とした屋上は室外機の低いファンの音だけが木霊しつつ、見下ろす先には街灯りがある。
この姿になって多分3ヶ月くらい。いや、2ヶ月か?なんにせよ濃密な時間を過ごしているが、そこに街灯はあるし空に浮かぶ青白い月は落ちてくるようなこともない。
「久々にタバコ吸いたいけど、全部捨てちゃってないんだよなぁ〜・・・。」
「なら、ワシのを吸うか?」
「貰いタバコ?やめとくよ、それが恩になれば返せとせがまれる。」
「いいじゃろ。恩を貰い恩を返し、仇を貰えば仇を返す。恩を仇で返す奴もおるしな。」
「いはするけど、私は小さな恩にも恩で返したいよ。少なくとも、それが私の処世術。で、なにしに来たの?静かな元旦を過ごしたいんだけど?」
「なに、聞きたいことがあっての・・・。」
どこにでも居そうで少しイケメン風。物腰は柔らかく過去からの知り合いと言われればそうかもと思ってしまう。ただ、それは俺がこうなる前の印象で、今はもうぬらりひょんはぬらりひょんにしか見えない。それが、俺の横で手摺にもたれ掛かって口を開いている。
「なに?私は普通に生きる以外できないよ?仮に今できる事があるすれば、話をするくらいしかないけどさ。」
「その普通とはなんだ?」
「普通がなにか?さぁ?ぬらりひょんが知ってるんじゃないの?」
普通とは普通であること。背景、モブ、主役じゃない行く数多。昔の人はいい言葉を残した。自分の人生の主役は自分自身だと。なら、この世界は全員主人公で普通の人なんていなくなる。実際、ゲームやっててもやりたいことやる人は多い。でも、それはそれが許される世界という前提があるから。
「知らんのぉ。お前は違う、お前は異常、お前とは相容れぬ・・・。行く数多の拒絶がわしたちの始まりじゃて。」
「感傷?やめてよ、私はそれに共感できないから。」
「・・・、キサマはわしらをどうする気じゃ?」
「う〜ん・・・、どうなりたい?私は電気精神体側からなにも聞いてない。姫子さんは・・・、雪女達は結婚したいとか夫欲しいとは言ってたけど、それ以外は知らない。だから、なにかをするにしても、まだ商談の席にもついてない。」
割と顧客から寄せられる質問で困るのが、マッチングする商品や作り手がいないのに、こうなりたいからそうなる物を寄越せと言う人。悪徳じゃないけど近似値の商品を渡せばすむ。でも、そういう人ほど理想と違えばクレーム入れてくる。
それを切り抜けるなら、あえて話し込んで問題点を絞る。小さな取っ掛かりでもいいし、満足感をどの部分に感じるかを話しながら計算してもいい。逆にダメなのは頭から決めつけて『コレです!』なんていうことなんだよなぁ。
そもそもぬらりひょんっが、俺を怖がることって何かあるのかな?近寄ってこなければ手をだす気もないし、そもそもこうして現れるまでどこにいるかも知らないし・・・。
「・・・、その言葉は誰の言葉じゃ?」
「私以外?私じゃないの?この場には私とぬらりひょんしかいないんだけど、別の声が聞こえてるなら・・・。それはもう神の声やら仏の声なんじゃ・・・。」
「なるほどのぉ・・・。巫女で合っても騙りではないか。」
「騙りとか後が面倒じゃん。ここの先生達とも話したけど、神託とか要は適当なお告げで『明日晴れます!』それに注釈で日本のどこかで、とかいれる感じでしょ?だから、話して中身知って、そこからどうするか考えるんだし。」
「・・・、ふん。知ったような口を。ただ、1つだけいいことを教えてやろう。お主が発した祝詞は広がり、確かに波紋は届いとる。」
「ちょ!それ百鬼夜行のやつ!?って、もういないのかよ・・・。」
横を向けばもういない。意味深なことだけ言って、核心を話さずどっか行くとかゲームのネタ振りキャラかよ!まぁ、座敷童子大先生も聞こえたとか言ってたし、スパムメールは多方面?に届いてるって事かな?
ウィルスメールか差出人狐巫女の意味ない呼び出しだぞ!来なくていいからな?振りじゃないぞ!来るなよ、絶対に来るなよ!?
「流石に冷えて来たから寝るか・・・。あぁ、耳の先も冷えてるし尻尾も冷たい・・・。」
コソコソと病室に戻りベッドへ。布団に潜り込んでも尻尾が温まらず、若干遅めの就寝となった。




