97話 楽器ゲットだぜ! 挿絵あり
流石に街の中なので幼体は檻の中へ。流石にゴネるほど運営も悪意を振りまいてこなかったか。ここでゴネるから檻にどうにかして入れろなんて言われたら更に時間を食う。そんな幼体は貰った人形をいじってるから、妖精王が何かしらのヒントをくれてたってことかな?
そんなこんなで到着した日華だけど、多分アラブ人とか台湾の人は好きだと思うよ?無茶苦茶ステレオタイプな主観が入りまくってるけどさ。日華・・・、正式名称は祭事都市日華で、ゲーム内である宗教と言うか各々の種族が崇めるモノの御神体っぽいものがゴージャスに祀られている。
端的に辺りはどこもかしこもキンキラキンでさり気なく宝石と銀で装飾されている。砂漠に近いこの場所だから余計に眩しいし、装飾されている金や銀や宝石は実は取れる。取れるけど、取るともれなく犯罪者として追われる身となる。
ただまぁ、王ドロボウやら一級詐欺師なんて称号が欲しいならチャレンジするのもありかな?こそ泥はしょっぱいが、そこまでの称号になると裏稼業のNPCからは一目置かれるし、そう言った人達の集まりにも顔を出せる様になる。
「あなた亜人ですよね!?それも試練突破された方!バン・ホー様にお布施を!」
「はいはい、1ゴールドね〜。」
「確かに・・・、イェーイ!」
「イェーイ!」
たぬきっぽい亜人がお金をせびり・・・、おっと!お布施をお願いしてきたので1ゴールド渡してハイタッチすると柏手を打つ様な音が響く。手を合わせて拝むと宗教やらが煩いからと、大体の宗教ではハイタッチが拝む代わりかな。誰もいなかったら?御神体をペチペチするといいよ。それで祈りになるらしいし。
そんな町にも上級騎士は巡回している。ただ、フルプレートアーマーではなく虚無僧スタイルでやはり顔は分からない。分からないけど、どこかでプレーヤーが欲に負けたのか『逃げろ!』と言う叫び声も上がっているし、それから少ししてとっ捕まったのかはたまたキルされたのか歓声の様な声も聞こえて来る。
上手く盗むなら街中よりも屋根の上を伝って寺院のてっぺんを目指す方がいいらしい。いいらしいけど、今度は不敬と街中のNPCから白い目で見られる上に貢献度はだだ下がり。なにげに貢献度貯めるのは結構面倒だから、やるならプレー開始時にやらかすといいぞ?
その時期ならギリギリ初心者として判定が甘くなるし、ゲーム配給初期のやらかしに比べれば今のやらかしはまだカワイイモノなのよね・・・。だって、不法侵入にツボ割に木箱破壊は誰でもやったし、出て来たモノはドロップ品だと思ってどんどん回収していた。だって、屋根の上に木箱とかあったら隠しアイテムだと思うじゃん!中身は瓦と言うか屋根の材料だったけどさ!だから初期プレーヤーは大体何かしらの悪い系称号は誰でも持ってるのよねぇ・・・。NPCからしたら盗賊団に町を襲われたのと変わらないけどさ。
「相変わらず行商人にゃ目の毒な町だぜ・・・。」
「確かに眩しいがこの程度の金で何がしたいのだ?」
「高貴なお方・・・。この程度じゃねぇ、これだけのだ。家が買えるだろ?馬車も新調出来るだろ?人も雇えるし・・・、かみさんも貰えるかも?」
「なんだ、ツガイと子が欲しいのか。ならさっさと相手を見つけるところから始めろ。よくわからんが髪はいるのだろ?」
「なくても貰えっし!前に他の稀人からセクシーって言われたし!」
「あ〜、多分海外の方かな。」
スキンヘッドで日焼けした褐色肌。裸にチョッキで割れた腹筋も見える。多分海外の人ならストライクな人はいると思う。ただまぁ、このゲーム基準と言うかNPC基準でどうかはわからない。なにせ亜人と供物族が夫婦だったり、魔族と神族が夫婦だったりと見境がないとも言える。
「その海外ってのは分からねぇが、笑顔だけ返して俺に惚れるなと返しといたぜ。」
コムズは笑ってるけど、それ仕様だから。プレーヤーとNPCは結婚出来ないことになってるからね?まぁ、なにをどう解釈するかはAIのみぞ知る。
「で、コムズが言う寺院ってどれ?人族の御神体あるところ?」
「いや?二胡だか三胡だかは魔族の寺院にいる仲間が売ってくれる。こっちだ。」
そう言われて馬車の横をてくてく歩いて着いたのは魔族の御神体がある寺院。因みに魔族が崇めているらしい神様の名はイスイミスと言う。御神体そのモノはどの種族もミイラの様にぐるぐる巻きにされて金ピカにされていて中身はわからない。
だからなのか、適当な縫いぐるみに崇める神様の名を付けて崇めてもOKと言う、偶像崇拝を爆速で進む状態なのよねぇ。寺院のあちこちに縫いぐるみやらカカシが飾られたりしてるし。
「おーい!グレッタはいるか〜?」
「ん?おぉ!コムズ!まだ死なずに旅してるか!」
「当たり前だ!だからここに俺がいる。」
頭から角が生えてガッシリとした体に尻尾。魔族のNPCとコムズがガッシリと肘を絡めて挨拶している。凄い男臭いけど胸があるし女性かな?それとも胸筋?海外サービスするに辺りあまりにもセクシー過ぎるキャラクターは胸を隠せと言われた名残らしい。
まぁ、日本でもかなり昔にあったのよねぇ。ダビデ像のレプリカ公園に置こうとしたら住民からパンツ履かせろって苦情が来たとか。芸術としての裸体と露出狂は違うと思うけど、ダビデが白塗り全裸で歩いてたらどうなるんだろ?ボディーペイントだからOK的な?
「それに連れは・・・。連れは試練突破者か!なんとまぁ心強い。」
「多分そうですよ?」
ある時からここに来たら試練突破者と言われるけど何がトリガーやら。奉納品でカカオ集めまくってバン・ホーに山程捧げたからなのか?う〜ん、ちょっと違うようなそうだった様な・・・。
「契約者はなんの試練を突破したんたんだ?我にはわからん。」
「さぁ?なんか急に言われ出したから分からない。やっぱりカカオ?奉納品で1000個くらい集めたけど・・・。」
「それはそれで信心深いと言うか・・・。」
「ん?杭を覚醒させているんじゃないのか?」
「杭?・・・、あっ!ラスボスの杭?」
買えるから買って覚醒させたけど、それで突破者ってかなり楽ちんな様な・・・。でも、他のプレーヤーではそう言われる人をあまり見ない。そうなると、なにか別の理由も絡む?流石にメインシナリオ攻略ゼロがトリガーではないと思うけど・・・。
「そうだ。更に長く稀人としてこの世界で過ごし、今の最高年齢に達したのだろう?これが試練突破者と言わずしてなんと言う?」
「コムズからはババ様って言われたかな?」
「なるほど、ババ様か。なら若くいろ。突破者は突破者であって到達者ではない。その杭は大切にするといい、経典にもそう書いてある。」
経典ねぇ・・・。フレーバーテキスト的には無名の英雄達の献身やら覚悟やらと書いてあって、なにかを大切にしましょうとか、神を崇めましょうなんて事は1つも書いてない。ぶっちゃけこの世界の宗教がなにかもよく理解してない。う〜ん・・・、メインシナリオやればわかるんだろうか?長い長いチュートリアルで後日談らしいけど・・・。
「そんな事よりグレッタ、楽器を売ってくれ。これからガメデに幼体を運ぶんだがあるといいんだろ?」
「いいもなにも美しい旋律が奏でられれば幼体はそこまでイライラしなくなる。それに成長も早まって成体になれば葉も増える。幼体の状態がどうかは分からないが、上手く行けばガメデに着いてすぐに成体になって倍の報酬が貰えるかもな。なにせ成体は幼体以上に爆発しやすくて運べたものじゃない。」
確かに成体って森のギミック枠なんだよなぁ〜。下手に森で猿と殺り合ってて炎魔法とか使うと周囲が消し飛ぶとか。一応『チッ』とか『うるせぇ・・・』って声が聞こえるからそれを聞いたら場所を変えるか爆破するに限る。じゃないとモンスターごとお陀仏だし。
ただ苦労してここまで来て安全な通行だけじゃなくて追加報酬ってのは嬉しい話だ。倍と考えれば2万コールド。中々美味しいじゃない。まぁ、その分の苦労はさせられたけどさ。
「バカコムズ。楽器は売るんじゃなくて貸すんだ。それに楽士のあては?楽器のガの字も知らない奴に楽器を貸すわけにはいかない。いないなら雇って出直してこい。」
「あぁ、貸すのか。まぁ、買取料金がないからいいけどよぉ。楽士っつうかコチラの高貴なお方が弾けるかもしれねぇ。物を見せてやってくれねぇか?」
「高貴なお方?ふむ・・・、いいだろう。これだ。」
差し出されたのは三味線?ただヴァイオリンの様に弓があるから違うのかな?弦が2つの物もあれば3つの物もあるし、1番多いのは4つ。難易度的に弦が増えれば増えるほど難しいとか?
「妖精王どう?先に言うけど私はてんで分からない。せめてリコーダーとかの笛ならなぁ。」
「そっちの突破者は笛が得意なのか?」
「なにも考えずに吹くだけなら・・・。」
「それは演奏とは言わないだろ契約者よ・・・。グレッタと言ったか、手にとってもよいか?試しに弾いてみないと分からない。」
「いいぞ?ただ弦を切ったら弁償してもらう。」
いくらかかる?と、算盤を弾く前に妖精王は二胡を手に取って座り込んでから弓を弾く。弾き方が上手いのか煩くはない。その代わりに泣くような音色で哀愁やらが感じられる。う〜ん・・・、そもそもこの楽器の正解が分からないから判断出来ないな。
「ふむ・・・。」
(コムズこれどうなの?)
(音痴の俺が分かるかよ。グレッタ見とけば分かるんじゃねぇか?)
確かに音痴と言っていたしコムズじゃ無理か。そうは言ってもグレッタも目を閉じているのでいまいち分からない。そうこうしているうちに全ての楽器を引き終えたけど、弦が増えるたびに音量は上がったな。どうせ外で弾くから気にしなくてもいいんだろうけど・・・。
「腕は申し分ない。どれを選ぶ高貴なお方。」
「我は弾き手で合って聞き手ではない。選ぶのは幼体だろう。どんなに良いモノでも相手が気に入らなければ価値はない。ただまぁ、契約者よ。どれが一番邪魔せずに歌える?」
「歌?う〜ん・・・、その弦が2本のやつかなぁ?楽器をメインにするなら3本とか4本でもいいけど、歌がメインなら多分それ。」
「なら一度幼体に聞かせてから良ければコレとしよう。」
馬車に戻り幼体の前で旅人の歌を歌ってみる。カラオケはいいけどオープンスペースで歌うほど上手くはないと思うよ?別に声楽とか習ってるわけでもないし。そう言えばコレも配信のネタとして撮影してるから後で上げるんだよなぁ・・・。出来れば下手とか言われませんように。
「おぉ!音楽だ!いいぞ!もっと歌え!もっと歌え!」
「はいはい、出発してガメデに到着するまでは歌ってあげるからね。じゃあ、グレッタさんコレを借りると言うことでいい?」
「あぁ、使い終わったらコムズに預けておいてほしい。」
「分かった。じゃあ、行こうか。」




