↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憎まれ悪役令嬢のやり直し 〜今度も愛されなくて構いません〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/74

45・献身部は今日も変わらず平和

 奉仕活動などを行い、献身的な精神を学ぶ部活。

 それが『献身部』だ。


 私は将来的にロレッタやフェリクスが敵に回った時のために、一人でも多くの味方を作ろうとした。

 そのために献身部の活動は使(・)え(・)る(・)と思ったのだ。

 私みたいな貴族令嬢が奉仕活動をするのよ? 好感度爆上がりである。


 ……と、ちょっと打算的な考えに罪悪感を覚えつつも、なにもしないよりは社会のために役立つだろう……と自分に言い聞かせている。



「期末テスト、おつかれさま。クラリスくんはまた、学年一位の座を射止めたみたいですね」



 献身部の部長が紅茶を飲みながら、私を労ってくれる。


「クラリスは努力家ですからね。普通の人なら怠けてしまうところを、何十倍も努力出来る。私も見習わなければなりません」


 とモニカさんは表情を変えずに、眼鏡を中指でくいっと上げた。


 この献身部には私たちが入る前よりも、元々部員が二人いた。

 それが部長とモニカさんである。


 部長は優しげな雰囲気を纏っている男性。

 一方、モニカさんは三つ編みで眼鏡をかけている真面目そうな女性だ。

 ちなみにどちらも三年生。


 入部してからもう、三ヶ月くらいは経過しようとしているが、未だに部長の名前を知らない。

 教えてもらおうとしても、「名乗るほどの名前じゃないから」と盗賊に襲われた商人を助けて、颯爽とその場を去るヒーローみたいなことを部長は言う。

 でも卒業までに部長の本名を知ることが、私の密かな目標でもあった。


「部長とモニカさんはどうだったんですか?」


 フェリクスが二人に質問する。


 そして現在、献身部には部員が六人。三年生は部長とモニカさん。

 そして一年生は私とフェリクス、オレリア……そしてヘルムートだ。


 ヘルムートは若草祭が終わってから入部してきた。

 当初は「絶対に入らない」と言っていたので、どうして急に気が変わったのかと聞いたら「楽しそうだったから」と答えが返ってきた。

 いまいち腑に落ちない答えではあったが──そんな今の彼は、窓際の席に座って欠伸をしている。


 この男、献身部に入ったというのに、まともに活動しない。

 たまにふらあっと部室に来ては、そこにあるお菓子を摘み食いした後、下校の時間が来ればそそくさと帰ってしまう。

 こいつ、なんのために入部したんだ……とますます謎は深まるばかりだが、どうやら当の本人はこれでも楽しんでいるらしい。彼の真意が相変わらず読めない。


「ボクはいつも通りでしたね」


 ……あっ、そうそう。今はヘルムートのことより、部長とモニカさんだわ。


「丁度、総合得点のクラス平均でした。いやはや、フェリクスくんやクラリスくん、ヘルムート殿下と比べたら不甲斐ない成績でお恥ずかしい」

「あれ……? 部長。中間テストもクラス平均ぴったりと言っていませんでしたか?」


 とオレリアが首を傾げる。


「中間テストだけではありませんよ」


 モニカさんがそう口を挟んできた。


「部長、一年生からずっとクラス平均ぴったりなんです。全く……どうしてこんな時にも目立たない地味な成績なのか……」

「ははは、モニカくんは手厳しいね」


 部長が苦笑する。


 一年生からずっとクラス平均ぴったり……? 

 それって逆にすごいんじゃ?


 まさか狙っているんじゃ……と思って問いただそうとするが、部長のニコニコした顔を見ていたら、何故だかどうでもよくなってくる。

 以前から感じていたけど、底が知れない先輩である。


「私もクラリスたちに比べたら、大したことありません。せいぜい、上から数えて二十番目くらいでしたから」

「それでもすごいですよ。一学年、三百人くらいはいますからね。二十番目でも十分誇るべきことです。君もそう思うだろ? ヘルムート」

「いきなり俺に話を振るな」


 溜め息を吐くヘルムート。


「そうだな。俺から見たらまだまだだが、凡庸な生徒の中では比較的マシだろう。モニカと言ったな。大したものだ。褒めてやる」

「ありがとうございます」


 モニカさんは恭しく頭を下げた。


 ……こうして見ると、どっちが年上なのか分からなくなってくるわね。


 だけどヘルムートはたとえ相手が先輩だろうとも、敬語を使わない。

 だからといって、下に見ているわけでもないと思うが……たまに部長とモニカさんが怒り出さないかとヒヤヒヤする。

 まあ二人とも人間が出来てるし、こんなことで怒らないけどね。相手は一応、王子なんだし。


「あっ、そうそう。せっかく、みんなが揃っているんです。君たちに話をしたいことがあります」

「話?」

「はい。まずはこれをご覧ください」


 そう言って、部長が引き出しから一枚の紙を取り出す。

 紙の一番上には『教会への支援のお願い』と書かれていた。


「どういうことでしょうか?」


 オレリアが目を丸くしながら、部長に問う。


「ここに書かれてある教会は慢性的に人手が足りていないようでね、たまにこうして献身部へ協力の要請がくるんです」

「献身部……にですか? いくら奉仕活動を主にしているとはいえ、一生徒にこんな依頼がくるのは違和感がありますが……」

「なんでも、献身部が今よりもっと活気があった頃からの伝統らしいです。しかし……しばらく、この献身部にはボクとモニカくんしかいませんでした。依頼も急にくることが多く、毎度行けるわけではありません。今回も教会で働いているシスターの方が体調を崩したみたいで、今朝に話がきたんです」

「なるほど……だけど今は私たちがいる。これを機に教会への支援活動をしようというわけですね」


 私の言葉に、部長は首を縦に振った。


「そういうことです」

「ですが、支援活動とはどのようなものなのでしょうか? わたしくし……宗教に関して、あまり造詣が深くないのですが……」


 とオレリアは不安そう。


 しかしそんな彼女の不安を払うように、部長は優しげな声音でこう続けた。


「この教会は孤児院も兼ね備えています。ボクたちに求めていることは、孤児たちに勉強を教えたり、一緒に遊ぶこと──らしいです」

「そうなんですわね。それなら……わたくしにでも出来そうですわ!」


 パッと表情を明るくするオレリア。


「それで……どうしますか? あなたたちもテストが終わって、疲れていると思います。無理にこの依頼を受けなくてもいいと思いますが……」


 部長がみんなに問いかけるが、私の心は既に決まっている。



「ぜひ、行きたいと思います」



 困っている教会の人を助ける、素晴らしい活動だ。


 しかし私にはもう一つの考えがあった。



 この活動をすることによって、ヘルムートの好感度は上がらないだろうか?



 教会を訪れ、孤児に勉強を教える。

 まさにこれぞ、社会貢献って感じ。

 子どもたちに優しいヘルムートが周知されれば、みんなの彼に対する視線も変わるかもしれない。

 それは今までの彼のイメージからとは、全然違っているだろうからね。


 ……という打算的な考えだったが、



「さすがクラリス。迷いがないね。うん、僕も当然その活動に参加させていただきたいです」

「慈悲深いクラリス様らしいですわ。わたくし、クラリス様からもっと色々学ばせてくださいまし!」



 フェリクスとオレリアは私の言葉に感動しているようだった。


「ヘルムート、あなたも行くわよね?」

「俺か? どうしようか……じゃっかん面倒臭」

「行・く・わ・よ・ね?」

「お、おう」


 私が威圧すると、気押されたヘルムートは渋々頷いた。


「後輩たちの献身的な精神に感謝いたします。では、教会の方にはボクから返事をしておきましょう」


 部長は笑みを浮かべて、私たちを眺めた。


「予定通りに進むなら、日にちは一週間後になります。それまで各自、テストの疲れを癒してください」

「一週間後……」


 部長の言葉に、何故だかフェリクスは考え込むように俯き加減になった。


「どうしたの? なにか予定があるの?」

「え……? 君は覚えていないのかい?」

「私?」

「だってその日は──いや、覚えてないなら言わなくていいか。それならそれで、ビックリさせられるだろうし」


 ……?


 フェリクスは一人で納得しているようだが、私の方は疑問が解消出来ずにむず痒い。

 一体なんだというのだ。

【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載☆

Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/2209

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中!
bj03hc29q4z7bztguwndp9icgz2_fs1_1d2_1xp_orsi.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 敵になるのが未だ前提なんですね かなしい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。