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全裸男出没事件

 ここ最近、深夜の学園内にて全裸男の目撃が多発していた。


目撃情報によると、犯行時間は夜中の8時から~10時ぐらいであることもあり、はっきりとした証言は取れなかったが、共通しているのは揃いもそろってイケメンだった、という。

 おかげで深夜、それを確かめようとする一部の女子が徘徊する始末。おかげで寮周辺は深夜に至っても騒がしく、ナナは寝不足気味であった。


「あいつ唾くれ行為に飽き足らずとうとう変態行為まで手を染めやがったか。」


 あいつ、とはもちろんウィードの事である。


「先生とは違うと思うけどね。」


 ミユは否定するが、まだ変態のイメージがぬぐい切れていないナナはどうしても疑ってしまう。イケメン・全裸・深夜。すべてのキーワードが、あいつしか思い浮かばない。


「ねぇ、ナナちゃん、賭けない?ウィード先生が関わってるか。」

「OK。じゃ、ミールミールのチョコパフェ、キングサイズで。」


 ナナは乗り気ではなかったが、どうせ騒がしくて寝れないのである。少しはつきあうことにした。あたりが薄暗くなると、噂を聞きつけて人が集まりだす。ちょっとしたお祭り騒ぎだ。

 

 しかし、ナナたちの目的は全裸男を目撃することではない。全裸男がウィードかどうかを確認することである。こんなに人がいたのなら、ここでは目撃情報だけで判断できるだろう。ナナたちはそう判断して、目撃情報が少ない、人気のない所を重点的に調べることにした。


 まず、温泉施設である。相手が変態目的だとここは狙われそうであるが。


「相手が変質者だとするとこのあたりよね。」

「でも、ここでは目撃証言ないし、変質者ではないと思うんだけど。」


 ミユは続けた。


「証言によると道沿いを中心に目撃されてる。まるで散歩しているかのようだわ。」


 全裸で散歩でも楽しんでいるのだろうか。だとしたら、とんでもない話である。ナナたちは注意深く人影を探しながら、道沿いを歩いて中央広場に向かう。と、前方からスーツ姿のウィード先生が見えたので挨拶を交わす。


「こんばんわ。」

「こんばんわ。」


 先生のスーツ姿は珍しい。そうか。夜だから日差しの心配ないもんね。


「例の騒動でね。私も見回りに来た。しかし、人が多いな。君たちも見物客か?」

「まあ、そんなとこです。」


 まさか本人を目の前にして、あなたが犯人じゃないんですか、とは聞けない。ナナはなんとなく言葉を濁してみた。


「興味本位は感心しないな。今の所危害を加えられたという報告はないが、もしかしたら君たちにも危険が及ぶかもしれない。」

「あら、冒険者が危険を恐れちゃやってられないわよ?」


 ミユが挑発的に答える。


「それもそうだな。だが、冒険者なら撤退も時には勇気だと覚えておけ。危なくなったらすぐ撤退するんだぞ。」


 その時である。


「キャー!」


 という悲鳴があちこちで聞こえると、ウィードはすぐに声の方へ駆けだした。ナナたちも後を追う。


「どうした!何があった!」

「キャー!見ちゃった!キャー!」

「わたしも!」


 一体何を見たというのだろうか。女生徒たちは嬉しはずかしそうに喜んでいた。悲鳴は悲鳴でも嬉しい悲鳴の方であったか。なんとも逞しい限りである。


「まったく、この学園の生徒ときたら。」


 ウィード先生もその腕白っぷりに呆れかえる。


「まあ、手伝ってくれるのならありがたい。私はこっちを探すから君たちは向こうを探してくれ。」


といって、ウィードは東館の方へ向かっていった。


「これでウィード先生の線はなくなったわね。」


 ミユが勝ち誇ったかのように言う。


「わからないわよ。あの後こっそり吸血行動を行って全裸になってるのかも。」

「まだそんなこと言ってるの。」


 負けを認めないナナにミユが反論しかけた時、何かに気づいたようだった。


「見て。道に魔術の痕跡が残ってる。」


 地面を指さして言ったが、そこには何も変哲のないレンガで舗装された道しかない。


「って言ってもナナにはわからないわね。こっちに続いてる。」


 と、ミユに連れられてきたのは散道から少し外れた裏門であった。



「ね、あれ見て。」


 広葉樹の木の下の、月の明かりに照らされたシルエットは狼の獣人。あの姿はどこかで見たような。黒魔研の……ジン。しかし、不自由そうに何かに引っ張られているような。そんな気がする。

 

 ミユはそれを見て、すべてを理解したかのように言った。


「ジジ、魔法を解いて。騒ぎになってるわ。」


 ミユからそういわれると、暗闇の奥から困惑したジジが姿を現した。


「どうして?魔法、使ってる。どうして?騒ぎになるの?」

「隠蔽魔法、ジン君に効いてないよ。」


 改めて姿を確認する。ジジが全裸のジンに首輪をつけ、紐を握っていた。そういやペットといってたっけ。夜のお散歩といったところだろうが、異様な光景である。全裸で徘徊してるより問題あるんじゃないのだろうか。


「どうして?魔法、効いてない?」

「魔法が効果ないわけじゃないわ。あなたの姿は消えていた。おそらく、根幹書≪オールドブック≫による白の支配領域からジン君がはみ出たのね。」


 ジジはそれを聞いて、はっとする。


「ジンの支配領域脱出を確認。白の領域の延長、および青の領域の追加を検討しないと。」


 2人が嬉しそうに、ナナにはさっぱりわからない会話をする。


「どういうことなのよ。説明しなさい。」


 ミユは少し考えて、説明した。


「えっとね、ジン君は今までペットだったんで魔法が掛かるのは無料だったんだけど、別の魔法が必要になったの。ペットじゃないと、魔導書が判断した。つまり、ジン君は人としての一歩を踏み出した、て事よ。」

「そうなの!?ジン君!おめでとう!」


 ナナの祝福の言葉に、ジンは少し照れ臭そうに吠えて応えてみせた。

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