ウィードとベル(後編)
あの出来事からベルは一切部屋から出てこようとはしなかったので、ウィードは扉の前で待ち続けていた。幸い持ってきた食事は受け取られているので餓死といった心配はないだろうが、ベルの心情を鑑みると不安は残っていた。
8日目の朝。想像以上に元気よく扉が開いたおかげで、少し扉に寄りかかっていたウィードはよろけざるを得なかった。
ベルは言った。
「決めたわ。彼らを救います。」
「お嬢様!やめて下さい!貧困は罪といったはずです!」
慌てて止めるウィードだったが、ベルは無邪気に、
「貧しくならなければ罪じゃない。そうでしょ?」
といって、ウィンクをした。
「ここに、学校を作ります。まずはこの別荘を改造して……そうね。ここが教室。ここが食堂。ね、合ってるでしょ?東館には救護室でも作りましょうか。」
と、1週間で作り上げたらしい、手書きの図面を取り出して、あれこれと説明した。
「部屋で何をしているかと思えばそんなものを作ってらしたのですか。」
それまであっけに取られていたウィードは、心配が杞憂で終わったことに安堵して、苦笑した。そして、惹かれ始めていた。彼女の心の、芯の強さに。
「学校が出来たら、訓練でも積ませて、生徒たちには魔物狩りでもさせましょう。そしたら、ここの治安もよくなるはずです。治安が良く成れば街も潤うでしょう。」
ベルはスカートを翻して一回転、ウィードを指差す。
「そして、ウィード。学校が完成したら、あなたは先生よ。真っ先に私を手伝って頂戴。」
「はい、お嬢様。」
いつも以上に丁寧にお辞儀をするウィード。ベルはそれを見て満足そうに言った。
「まずは都会に戻って、お爺様に許可をもらわないと。今日から忙しくなるわよ。」




