E-3
「初めまして……いえ、初めましてではないですね。」
「あ、あの時の!」
ナナは思い出す。ミルと一緒に来た少年。やっぱり彼がエリオだった。
「その節はありがとうございました。みつかりませんでしたが、いいアドバイスでした。」
「へー、やっぱり君がエリオだったんだ。あの後どうなったの?」
しかしその時。
バサササッ!
「きゃっ!」
ナナは声を上げた。飛行船の接近を察した鳥たちが一斉に騒ぎ出したからだ。鳥たちは飛行船の周りを旋回した後、四方八方に飛んでいく。そして、その中の一羽がナナの肩に止まった。
ナナはその頭を撫でてやろうとすると、鳥は素直に従い、気持ちよさそうに眼を細めた。
「シロヒメス、お好きなんですか?」
「シロヒメス?」
「あなたに今止まっている鳥の名前です。」
「へー、そういう名前なんだ。」
いつも見ていた鳥にも名前がある。当然といえば当然なのだが、知ろうともしなかったし知るつもりもなかったので、その事実に妙に感心した。
「ええ、好きよ。あっ、美味しいとかそういう意味じゃなくて!」
食欲魔人を思い出し慌てて否定したが、蛇足な説明はいらなかったようだ。
「わかっていますよ。あなたは強い人なんですね。」
「そんなことないわよ。」
失言でもあるのに、急に褒められたのでナナは照れた。
「この鳥は、人の加護が無ければいけないんですよ。綺麗で安全な環境がないと生きられないのです。」、
「……そうなの?」
「ええ。セントラルでは見かけませんから。でも、そういった豊かな土地は魔獣がすでに占拠してしまっている。だから、人にくっついて、その保護にあやかるのです。」
その言葉はナナにとって意外だった。
(自由に空を飛び回ってると思っていたのに。)
「つまり、自由に飛び立つための翼だと思ったのだけれど、逃げ回るための翼だった、ってことね。」
ナナはそっと呟いた。
「何か言いましたか?」
「ん、何でもない。」
飛行船が目前まで近づいてくると、ナナの肩に止まっていた鳥も飛び去ってしまった。
「お前たちも苦労してるんだね。」
ナナは、鳥たちにそう声をかけ、ウィードに別れを告げると、ミルたちと飛行船に乗り込んだのだった。




