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万年非モテの童貞アラサーが最強チートスキル「常識改変」持ちで異世界転生したけど、これ無理ゲーじゃね?  作者: 高坂悠貴
3章 彼女いない歴自己ベストを更新しつづける男のハーレム妄想は無罪って法律で決まってる
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39 惑いて問えよ己が心に



「――ギャ、ギャギギッ、ギィッ……!」


「ねえ、本当に私がわからないの? あのとき助けてくれたじゃない!」

「……そこまでにしようぜ。時間の無駄だ」

「でも、……ううん。そう、だよね……」


 リリィの手をひいて下がらせる。

 俺の身体を盾にしても、リスの魔獣は暴れるのをやめなかった。檻のなかから、届きもしない〈魔虎鉤爪(バグ・ナク)〉を必死に振るい続けている。

 

 SEMのある大広間に夜の(とばり)が落ちたあと、俺たちは〝時間的制限(タイムリミット)〟の有無を確認するため、リス魔獣が移送された牢屋にむかった。

 みんながエリザヴァトリの襲撃にそなえるなか、わざわざリリィに同行してもらったのは、こいつが俺たちを助けようとしてくれたからだ。他の魔法少女なら凶暴な態度をとったとしても、俺たちなら。せめてリリィなら。そういう期待があった。


 けれど現実は残酷だ。

 野郎の俺はさておき、一度は助けたリリィにも凶暴性を隠さない。

 今の態度こそが本来あるべき姿なのだと、全身全霊で告げていた。


「監視役はなんて言ってた?」

「ここに連れてくるまえ……外の広場にいたときからからこんなだったって」

「夜が来るよりも早く魔法がとけたってことだな。ま、魔法を使ったタイミングが全然違うんだから当然なんだが」


 俺の記憶が正しければ、エリザヴァトリがジョゼを檻にぶつけたときには、もうこういう状態だったはずだ。

 あのときはパニクってた、あるいはエリザヴァトリの凶暴性にあてられたせいだと決めつけて、それ以上深く考えなかったけれど。そのときにはもう魔法が切れちまってたんだ。


「ソータ、これからどうするの?」

「とりあえずキッカさんたちと合流しようぜ。……あ、ヤバいな。どこに行ったのか聞いてない」

「キッカなら南の側塔だと思う。あそこは物見台と星見台があるから、敵襲がきたとき一番早く情報が伝わ――あれ?」


 離れの地下牢からでてすぐ、キッカさんを見つけた。

 暗がりでわかりづらいが、あの特徴的な金髪ツインテと甲冑は間違いなくご本人だろう。

 それでも俺とリリィが顔を見合わせたのは、()(しょく)にほんのり浮かびあがった横顔が、俺たちの知るキッカさんとはかけ離れた――険しい表情だったからで。


 声をかけるより早く、キッカさんは神経質そうに周囲を見渡し。

 階段から顔をだしたばかりの俺たちに気付くことなく、険しい表情のまま廊下をまがってしまった。


「キッカ……?」

「なんか声かけづらい雰囲気だったな……?」


 リリィも明るい性格だが、キッカさんはそれプラス爽やかな人って感じだ。そんな彼女が人目を(はばか)るなんて珍しいというか、意外っていうか、……考えもつかなかった。


 いや、でもあの人は他の魔法少女から様づけで呼ばれてたし。三年前にアリアさんを部隊長に任命できたってことは、部隊長以上の立場にいるはずだ。高位指揮官として作戦会議室にむかうなら、むしろ当然のことなんじゃないか?


 そんなもっともらしい納得を、けれどリリィが無邪気に否定する。


「なんでだろう? あっちは側塔通路でも門衛棟でもない行き止まりで……物置くらいしかないはずなんだけど」

「……き、着替え、とか?」

「もうっ、馬鹿ソータ! 私は真面目に話してるのっ!」

「悪かったって! ……じゃあ他に有り得るとしたら傷の手当てじゃないか? 実はエリザヴァトリのせいで結構な深手を負ってたけど、立場上、言い出せなかった。だから人目につかないようこっそりと、みたいな?」

「それは……キッカならありそう。でも、だとしたら放っておけないわ!」


 リリィは人差し指をくちもとにかざし、彼女が去った方向を目線で(うなが)す。

 俺も無言で頷いた。

 アリアさんやキッカさんみたいな〝頼りになるお姉さんタイプの女性〟って、よかれと思ってヤバいこと抱えて、ひとり自滅ムーブしてくるんだよな。エロゲでよく見るやつ。うん、やっぱほっとけないわ。


 忍者になったつもりで足を忍ばせ、廊下をまがり、古ぼけた部屋にたどりつく。

 扉はわずかに開いており、中の灯りが漏れて一条の(たて)(じま)となっていた。

 誰かが呟いている気配はするが、よほど小声なのか壁のせいで聞こえない。俺とリリィは目配せしたあと、思いきって扉の隙間を覗きこんだ。


「――いい加減、()()をこねるのはやめて。ステファニー」

「……ッ! ……わたし……駄々をこねてなんか……!」

「いいえ、駄々よ。子供の(かん)(しゃく)よ。王にあるべき振る舞いじゃない」


 キッカさんと王様だった。

 雑多にものが詰め込まれて狭くなった室内に、王様……ステファニーが座りこんでいる。

 キッカさんはそんな彼女の傍で、俺たちに背をむける格好で立っていた。さすがに剣はぬいていないものの、ひりついた空気がふたりのあいだに流れている。


「わかっていないみたいだから、もう一度だけ言うわ。彼の魔法に二度目はない。絶対に有り得るはずのないことを起こす魔法だと確信していれば発現できない。エリザヴァトリはそれに気付いている。だから――彼は戦力にならないの」

「だからって……ソウタ様を売るなんて……!」


 ……俺を売る?



更新しました!!! このあともう1話更新する予定です。どうぞよろしくお願いします~!

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