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万年非モテの童貞アラサーが最強チートスキル「常識改変」持ちで異世界転生したけど、これ無理ゲーじゃね?  作者: 高坂悠貴
3章 彼女いない歴自己ベストを更新しつづける男のハーレム妄想は無罪って法律で決まってる
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36 ただいま今世



「――う゛、え……ッ」


 吐いた。

 ぶちまけたのは赤――ではなく白っぽい液体。

 キングサイズのベッドとふかふかのカーペットはどこぞへ消え去り、膝をつくのもご遠慮したい硬めの床材にかわっていた。

 饐(す)えた臭い。未消化の食べ物。心配そうに背中をさするリリィとアリアさん。固(かた)唾(ず)を呑んで見守る背後の気配。


 ああ。そうか。

 あのとき俺は死んで。殺されて。

 だからこの世界に〝転生〟したってことなのか。


「彼になにをしたの?」

「おっと、そんな怖い顔しないでほしいな! ただ臨終の一部始終を追体験させただけさ。誓って精神汚染(マインドハック)や精神攻撃(マインドレイプ)はしてないぜっ☆」

「でも……っ」

「――いや、いい。アリアさん、ありがとな。他に方法なかったのかよとは思うけどさ。こんな荒療治でもなけりゃ受け入れられなかったと思うんだ」


 ――……相田双太(おれ)はもう死んだんだってことを。

 シャツをまくりあげ、汚れたくちもとを覆うことで、その一言を押し殺した。


「リリィも、ごめんな」

「……え? ……な、なんでソータが謝るの?」

「俺のこと魔王じゃないって……もし魔王だとしても絶対に悪いやつなんかじゃないって、ずっと言ってくれてただろ。でもこの世界に〝転生〟して――〝人間〟の姿してるってことは、やっぱそういうことなんだよ」


 ――俺は魔王だ。

 人前でそう叫んだりもした。

 異世界転移したことを除けば、ごくごく普通の一般人だという確信があったからだ。

 魔法が使えるのも、リリィたちの言葉や文字がわかるのと同じだって。そういうものなんだろうって。そう思っていたからだ。


 でも違った。俺は死んでたし、生まれ変わってた。この世界でSEMから生まれて。だからきっとたくさん女の子を喰らって。その屍のうえに今の身体を築いて――……


「にっしし。それなんだけど、キミちょっと特殊なんだよね~。ほら最初に言ったじゃん? 生まれたばかりってさ!」


 生まれたばかり? 言ってたかそんなん。いつ。いつだ。

 ここに来て。ばにーちゃんが現れて。エリザヴァトリの仲間だと勘違いして。魔法を発動させようとして。


『にっひっひー。まあキミは生まれたばかりだから知らなくて当然かな? これは〝エヴァ・エッセンス〟。極限まで魔力をあつめ、凝縮したもの――いわば魔力のかたまりさ!』


 …………あのときか!


「どういうことだよ……!?」

「どういうこともへちまもないさ、ログがそうなってるってこと。生まれてからまだ二十四時間も経ってないね~☆」

「――そんなはずないわ」


 ふたたびアリアさんが鋭く斬りこんだ。

 俺が聞きたかったことを、俺以上の知識でもって問いかける。


「魔獣が完全な人の姿を得る……魔王になるには、すくなくとも千人以上の魔法少女を喰らう必要がある。たとえ〝魔女〟だけを喰らったとしても何百人。時間的に考えて不可能よ」

「うんうん、その質問はもっともだ! だからここからはあたしの推測になるんだけど――そこの彼、別の誰かの身体を〝複製(コピー)〟しているね?」


 他(・)人(・)の(・)身(・)体(・)を(・)複(・)製(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。


 頭が真っ白になった。

 言われた意味がさっぱりわからなかった。

 いや日本語はわかる。理解できる。だがあまりに脈絡がなさすぎて意図が汲めない。


「待って、ばにーちゃん! それは論理が破(は)綻(たん)しているわ! もし彼が〝誰かの身体を複製する〟魔法(スキル)の持ち主だとしても、その魔法を得るための時間が――……」

「おおっと! 勘違いさせて悪いね、キッカ。あたしはこの新人くんが〝誰かの身体を複製する〟魔法の能力者と言いたかったわけじゃないのさっ! だってそういうことができそうな魔法は、とっくに売り切れてるからね☆」


 魔(・)法(・)が(・)売(・)り(・)切(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。


 また意味不明な理論に目を白黒させていると、おもむろにばにーちゃんは右手を垂直にかざし、真横に薙(な)いだ。

 たちまち六角形(ハニカム)がふたつ宙にうかぶ。


「生まれたての赤ん坊(ベイビー)にもわかるよう、キミの世界になくてこの世界に存在するもの――魔法についてちょっぴし話そうか。魔法には〝属性〟と〝稀少度(レアリティ)〟って概念があるよ☆」


 六角形それぞれに「属性」「稀少度(レアリティ)」の文字が表示された。

 ばにーちゃんの指先が「属性」を押す。ぴこん、とやたらポップな音とともに、さらに五つの六角形が現れた。


「属性はぜんぶで五種類。火(ア)属(グ)性(ニ)、地(ド)属(グ)性(ア)、風(リ)属(ィ)性(ン)、水(シ)属(オ)性(ミ)、そして無(ウ)属(ツ)性(ロ)だね。――新人くん、キミはこの無(ウ)属(ツ)性(ロ)の魔法を有している」

「う、うつろ……?」

「そうさ。他の属性はレアリティがR、SR、SSRの三種類もあるんだけどね。おめでとう! この無属性だけはSSRしかない。最強の属性なのさ!」


 ばにーちゃんが、今度は「稀少度(レアリティ)」を押した。

 さらに投射された映像が更新される。


・属性

 火(ア)属(グ)性(ニ)

 地(ド)属(グ)性(ア)

 風(リ)属(ィ)性(ン)

 水(シ)属(オ)性(ミ)

 無(ウ)属(ツ)性(ロ)


・稀少度(レアリティ)

 R

 SR

 SSR


 まだ理解できる。魔法の属性なんて昔やったゲームにありがちだし、レアリティはいかにもソシャゲっぽい。

 重要なのはここからだ。


「さて、お待ちかねの本題だ! あたしはSEMのために作られた人工知能だから、今までの調査で以下のことが判明しているよっ☆」


 ぴろりん。安っぽい音が鳴り響き、さらに映像が更新された。空中に、要点のまとまった六項目がうかびあがる。


・すべての魔法名と能力内容は固定である

・すべての魔法は5つの属性と3つのレアリティに分類される


・魔法は上位レアリティに進化する可能性がある

・一度発現・進化した魔法のレアリティがさがることはない


・ひとりの人間が複数の魔法を発現させることは有り得る

・すべての魔法はひとりしか所有できない


「見てもらいたいのは一番最後――すべての魔法はひとりしか所有できないってところだね。たとえば、今この瞬間、リリィは〈オモチャの怪獣(アミューズ・グール)〉って魔法を持っている。だから彼女が生きているかぎり、他の人間が〈オモチャの怪獣〉を発現することはないのさ」


 なるほど。売り切れているという言葉の意味がわかった。

 複製魔法がすでに誰かのものなら、俺に授かるわけないって話だ。

 とにかく今の説明で、俺が最も気になったのは。


「ばにーちゃん、この調査結果って、つまり……!」

「おおっと、ご明察っ! あたしはすべての魔法データを参照できる。だから当然キミの魔法がどういう名前、どういう効果なのかも把握ずみだし、


 これこそ〝キミが生後零(ぜろ)日(にち)の魔王たる事態〟を解明する糸口だと睨(にら)んでいるねっ☆」



魔法ざっくり説明回でした! 今回もお読みくださりありがとうございます~~~!ヾノ。ÒㅅÓ)ノシ

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