ヤンキー奴隷、小馬鹿にされる。
自らを『アイラ』と呼ぶ女は、ゆっくりとした動きで顔を隠していたローブを取った。
「てゆーか、あぃらー、超忙しいから秒でお願いしまーす」
ローブの下から顔を出したのは、明るいベージュ色のパーマが掛かったセミロングの髪に、バッチリ化粧を決めた如何にも『ギャル』だった。
そして、彼女は気怠そうに髪の毛を弄りながら私たちに向かってそう述べた。
「うげッ、ギャルやし」
「はぁ? コイツ何なの? まじウザいんですけどぉー」
私たちは顔を合わせた瞬間、お互いに嫌悪感を抱いた。
「こちらはBランク冒険者のアイラ殿じゃ」
アイヴォンはそんな私たちに苦笑いしながらも、彼女の紹介を始めた。
彼女は隣国のムラン帝国から来た大魔導士らしい。
丁度、私たちと入れ違いにこの街にやって来たらしく、未だにどこのパーティにも属していないそうだ。
「へぇー、それでー」
アイヴォンが事情を説明している最中も彼女は興味なさそうに自分の爪を眺めていた。
「彼らは魔法職の冒険者を探しているらしいのじゃ」
「だからー?」
「いや、じゃからの、彼らのパーティに入って見るのはどうかと申しておるのじゃが……」
しかし、話が通じていないのか彼女とアイヴォンの話が全く噛み合っていない様に思えた。
なんで今、爪塗ってるねん。
生返事を繰り返すアイラはいつの間にかマニキュアで爪の手入れを始めていた。
「てゆーかさー。あぃらー、超強いじゃん? でー、この人たちって超弱そうじゃん」
「あ?」
アイラの言葉に私は少々頭に血を昇らせた。
「えーーだって、そうじゃん。おじさんとガキとヤンキーのパーティって。ってゆーか、今時ヤンキーって」
「喧嘩売ってんのかワレ?」
「まーまー、カオル落ち着いて」
「おこなの? まじウケるんです……」
私の事を小馬鹿にするアイラが何もない空中を眺めながら突然押し黙った。
それから彼女は私の顔をまじまじと見つめ、再び口を開いた。
「ウケるー」
マジで、なんやねんコイツ!
イラついた私は、彼女の素性を調べる為に鑑定のスキルを使用した。
【名 前】 アイラ=イケブチ
【年 齢】 16
【職 業】 異世界から来たギャル Bランク冒険者 大魔導士
【状 態】 通常
【レベル】 35
【体 力】 238
【魔 力】 745
【攻撃力】 204
【防御力】 196
【俊敏性】 133
【スキル】
化粧 Lv.4 交渉術 Lv.2 料理 Lv.6
アイテムボックス 異世界会話 Lv.3 鑑定 Lv.3
【ユニークスキル】
異界詠唱術 異界錬金術
【装備】
魔導士のローブ
こ、ギャルも私と同種なんかッ!?
「てゆーか、あぃらはー、サンディスさんと一緒にいるんで。そーゆーの無理なんで♪」
突然、話を終らせたアイラはサンディスの腕に抱きついた。
【ジョゼの独り言】
ジョゼ 22歳 冒険者 男
「俺、おじさん、なの……か……」




