ヤンキー奴隷、ヘコむ。
「おや、カオル殿。まだ居たのかね?」
テーブルに突っ伏してした私に、仕事を終えたのだろうアイヴォンがやって来た。
ギルド中の魔法職に誘いを断られた旨を伝えると、アイヴォン自ら魔法職の冒険者を紹介してくれる事になった。
「それじゃあ夜の街に繰り出すとするかのぉ」
「おーーッ!」
私とアイヴォンはノリノリだったが、残りのメンバーはそうでもなさそうだった。
「シャルジュとジョゼは先帰って寝るか?」
私なりに多少気遣って聞いてみたが、色々心配なので付いて行くという事であった。
……その理由が、なぜか釈然としなかったのは事実だ。
***
アイヴォンと一緒にやって来たのはギルドから程近い酒場だった。
『サンディスから離れなさいこの女狐ッ!』
酒場に入るなり聞き覚えのある声が店内に響き渡っていた。
「ギルドマスター? 珍しいですね」
「ほほほ、ちょっとした用事での」
その中心に居たのはサンディスだった。
「あーーッ! 出たわね、カオル=アサヒナ!」
先程から大声を張り上げているのはサンディスのパーティメンバーのエリーゼだ。
彼らのテーブルには、いつだったかの忍者みたいなヤツと神父さんみたいなおっちゃん、それから髪飾りの子も一緒にいた。
髪飾りの子は私の顔を見るなり、サンディスの陰に私を避けるかのように隠れた。
ん? あのローブのヤツは知らんな……
サンディスを挟んで髪飾りの子の反対側に、ローブを頭から被って顔を隠している輩が座っていた。
「立ち話もなんですし、座ったらどうです?」
「そうじゃの、取り敢えず乾杯するぞい」
サンディスに勧められるまま私たちは同じテーブルを囲い、乾杯をした。
***
いつの間にか和気藹々と宴が盛り上がり、ジョゼはヴィンセントと、シャルジュはマルカルロと意気投合したらしく熱心に話をしていた。
私たちは、アイヴォンとサンディス、エリーゼ、ハナ、それとエリーゼから『女狐』と呼ばれるローブの女とで話をしていた。
話と言ってもたわいも無い世間話をエールを飲みながらバカみたいに笑っていただけだ。
強いて言うなら、エリーゼとハナは会話には参加せず、終始サンディスに身を寄せる『女狐』にピリピリしていた。
「そういえば何の用だったんです? ギルドマスター」
「おー、そうじゃったそうじゃった。忘れるところじゃったわ」
「え? 何すんの?」
「ほれ、其方に魔法職の冒険者を紹介すると言ってたじゃろ」
アイヴォンに言われて酒場に来た理由をようやく思い出した。
「そんで、その魔法使いはどこにおるん?」
「彼女じゃよ」
私の質問にアイヴォンはサンディスに寄り添っているローブの女に視線を送った。
『なーんだ♪ あぃらにー、用だったんだねー』
すると、彼女はローブの下から不敵な笑みを浮かべたのだった。
【登場人物紹介(再)】
【聖なる盾】Bランクパーティー
サンディス :男 24歳 騎士
ヴィンセント:男 27歳 盗賊
エリーゼ :女 19歳 剣士
マルカルロ :男 42歳 神官
ハナ :女 15歳 弓使い
サンディスをリーダーとする、バーウィッチで一番有名な冒険者パーティ。
彼が編み出す、様々な作戦で百戦錬磨の活躍を見せている。
パーティ名の通り、『聖なる盾』として長年この街を守り続けている。
リーダーのサンディスには女性のファンが多数いるが、実際に彼に接触できた者は少ないらしい…




