お調子者、再びナンパされる?
突如目の前に現れた男性に少々困惑しながらも、私は賽の目に切られた一口大のステーキを口に運ぶのは止めなかった。
「ふぉうぼ」(どうぞ)
私の返答に男性はニッコリと微笑むと従業員にエールを注文した。
「僕はサンディス。聖なる盾といパーティでリーダーをさせて貰っている」
やって来たエールを一口煽ると、男性は自己紹介をしてきた。
私も皿に乗っていた肉を平らげた事もあり、サンディスに自己紹介した。
「私はカオル。別に名乗る程のもんちゃうけどな」
「もしかして君が、傭兵団を1人で壊滅させたっていう『鬼神のカオル』かい?」
私の名前に反応したサンディスは突っ込んだ話をしてくる。
これ以上話すことはないと思った私は、エールを一気に飲み干した。
すると、サンディスは再びエールを注文した。
「これで、話せってか?」
「いやいや。そういう訳では無いけど、もう少し君と話がしたいなって」
そう言ってウインクするサンディスに私も満更でも無かったので、話を続ける事にした。
「その『鬼神のカオル』ってのは知らんけど、傭兵団を倒したんわ私らしいで」
「らしい?」
「最初の20人くらいは数えとったんやけどな、最後どないなったか知らんねん。子分の話やと、倒した敵の山の上で立ったまま気絶しとったんやって」
私の話を聞いていたサンディスが生唾を飲み込むのがわかった。
「君は自分が…「カオル殿、お待たせ致した」」
サンディスが何か言おうとした所にタイミング良くアイヴォンがやって来た。
「おや? サンディスじゃないか。早速、カオル殿の勧誘かの?」
「いえいえ、そういうのじゃないですよ。ギルドマスター」
アイヴォンが話し掛けるとサンディスは立ち上がりその場を去って行った。彼がいたテーブルの上には金貨1枚が置かれていた。
***
「さて、カオル殿。今日は其方のステータスを確認しようと思っておる」
「ステータス?」
お会計を済ませ、受付の方へと歩きながらアイヴォンは話を始めた。
結局、お会計は全部で銅貨5枚だった。流石に悪いので、サンディスに今度会ったらお釣りを返そうと思った。
そして、アイヴォンが熱心に何か説明していたようだけど、考え事をしていた私は一切話の内容を聞いていなかった。
「これがその魔道具になる!」
「……」
アイヴォンは目を輝かせながら、地球儀のような道具を私に見せた。
やばいで、全然話聞いてなかったわ……
「早速、其方のステータスを確認するぞ。ささ、この水晶の上に手を翳すのじゃ」
取り敢えず、言われるまま私は魔道具とやらに手を翳す。
すると、魔道具が光り始めた。
【登場人物紹介】
【サンディス】
Bランク冒険者 ジョブ:騎士 男 24歳
聖なる盾というBランクの冒険者が集まったパーティーのリーダーをしている。
※ステータスなどの詳細はまた後日。




