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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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66.初めての共同作業

 弾丸を拾い上げて、まじまじと見つめる。

「どですか」
「ためしてみよう。多分特殊弾だとは思うけど」
「それじゃあの岩を狙うです」

 手をあげて明後日の方角を指すエミリー。
 そこに物置くらいの大きさの岩があった。

「そうだな、やってみる。エミリーは念の為におれの後ろに下がってて」
「はいです」

 エミリーが移動する横で、おれは新たに手に入れた弾丸だけを装填した。
 大岩の方を向いて、トリガーをひく。

 カチッ。

「あれ?」
「どしたですか?」
「何も起こらないぞ?」

 カチッ、カチッ。

 更に何回かトリガーを引くが、銃弾が飛び出す気配はない。

「外れだったですか? それとも銃が壊れちゃったです?」
「試してみよう」

 新しい弾丸はそのまま、そこに通常弾を装填して、トリガーを引く。
 パン! という銃声と共に、岩の一角が吹き飛んだ。

「壊れてないです」
「……」
「ヨーダさん?」
「威力がちょっと強い?」
「え?」
「今の通常弾、普通よりも威力強くなかったか?」
「そうだったです? ……あっ、もしかして」
「ああ」

 頷くおれ。
 エミリーが察したそれとおれが思ってる事は多分一緒だ。

 新しい弾丸を抜いて、今度は通常弾だけ込めて、大岩を撃つ。

「ちょっと弱くなったです」
「……エミリー、経験値買ってこよう」
「はいです!」

     ☆

 急いでシクロの街に戻って、さっきの糸目の商人から毒キノコの入った箱を九個買った。
 それを野外にもってきて、ハグレモノにして、「リザヴィレーション」を毎回かけた上でエミリーに倒させた。

 エミリーのレベルは2つあがって、28になった。
 そして新しい弾丸がさらに9個、計10個になった。

「今度は2つ装填で行くぞ」
「はいです」

 新弾丸を二つ装填して、まずはトリガーを引く。やっぱり撃てない。
 そこで通常弾を装填――撃つ!
 大岩が通常弾によってえぐられた。

「すごいです、わたしにも分かるです」
「ああ、威力が上がってるな。今度は3発だ」

 新弾丸を三発入れた上で通常弾を撃つ、威力が更に上がって、大岩が度重なるダメージで粉々になった。

「もう間違いないな」
「はいです、それは撃てないけど、それが銃に入ってる数だけ他の弾を強くするのです」
「他を強くするから強化弾ってところか」
「普通の弾を一発他全部強化弾だとすごい威力になりそうです」
「一発ごとのリロードが必要だが、まあ、使い道はありそうないいものだ」

 新しく手に入れた強化弾をの使い道をいろいろ考えた。
 ふと、エミリーがおれをニコニコ見つめている事に気づいた。

「どうしたエミリー」
「嬉しいのです」
「嬉しい」
「ヨーダさんがまた強くなってすごく嬉しいのです」

 エミリーは、まるで自分の事の様に喜んでくれた。

     ☆

 強化弾の性能チェックが終わって、おれとエミリーは再びシクロに戻ってきた。
 とりあえず経験値の事もメッキマウスの事も強化弾の事も一段落したから、気を取り直して収穫祭を回るのを再開した。

 昼を過ぎたからか、朝に比べて街は更に賑わってきた。
 歩いてるといろんな人と肩がぶつかってしまうくらいに賑やかで、街全体がますます盛り上がってた。

「あっちでなんか騒いでるな」
「ケンカらしいぜ」
「ばっかだなあ、元気が有り余ってるんならダンジョンにでももぐってこいや」

 祭り特有の熱気と非日常感の中、おれとエミリーは色々回った。

 ちなみにエミリーは見るもの見るもの全てに興奮していた。
 はじめて収穫祭を参加するって言葉を思い出して、おれはなんだかんだ理由をつけてエミリーに金を使った。

 そんなエミリーは今、小物を売る露店の前に止まっている。
 糸や細い鎖などがついたアクセサリー、どれもこれも可愛くて、サイズもちょうどよくて。
 スマホとかのストラップにあいそうな代物だ。

 それをエミリーは瞳を輝かせてみている。
 視線を追うと、鈴の様なアクセサリーを見つめているのが分かった。

「それがほしいのか?」
「え? 違うです、ちょっとだけいいなって思っただけです」
「そうか。そください」
「3000ピロです」

 金を取り出して、店の人に渡して、鈴のアクセサリーを受け取る。
 それをエミリーに渡す。

「ほら」
「……ありがとうです」

 エミリーは受け取って、はにかみながら大事そうに両手で包み込むようにかかえた。
 そうしてから、それをハンマーの付け根の部分につける。

「そこにつけるのか?」
「はいです」

 しっかり結んだ後、ハンマーをちょい掲げるエミリー。
 チリン、ときれいな音がした。

「これならいつも一緒なのです」
「そうか。そのうちモンスターたちは鈴の音を聞くと逃げ出すようになるかも知れないな。死神だ! 死神の鈴が来た!!! って腰を抜かしてしまうようになるかもな」
「わたしバケモノなのです!?」

 適当な冗談をいいあいながら、更に祭りを回る。
 ふとしたときに聞こえてくるチリン、チリンという音が次第にエミリーという存在を象徴している様に聞こえて、温かい家を作るエミリーの鈴の音に安心感を覚えるようになった。

 しかし、それは無情にも破られた。
 遠くからいきなり爆音と悲鳴が聞こえてきて、ちょっと遅れてその方向から人々が逃げてきた。

「ヨーダさん!」
「ああ」

 うなずき合って、エミリーと一緒に駆け出す。
 鈴の音色と共にかけていき、たどりついたそこにモンスターがいた。

 尖った耳に緑の皮膚、腰を屈んで前傾姿勢のそれは「ゴブリン」というモンスターのようだが――巨大だった。
 腰を屈んだ状態で3メートル弱、直立したらもっと高くなるだろう。

 見た目はゴブリン、大きさは巨人。
 そんなモンスターだ。
 そいつから街の人々が蜘蛛の子を散らすように逃げ出している。

「なんだあれは」
「わ、わからないです」
「セレストがいれば……いい、とにかくやるぞ」
「はいです!」
「待ってくれ」

 飛び出そうとするおれを男の切羽詰まった声が呼び止めた。
 振り向くと、そこに頭から血を流す青年がいた。
 青年は頭を押さえながら、おれにいう。

「あれはインクリースゴブリンだ。一撃で倒さないと攻撃を受けた分徐々に強くなっていくやっかいなヤツだ」
「そういうモンスターなのか……ダンジョンでの周回が面倒臭そうだな」

 一撃で倒さないといけないからな。

「収穫祭用に檻に入れてたけど子供がいたずらで石を投げてたら強く育ってしまったんだ。もう普通の冒険者じゃかなわない。お前たちも速くにげろ」
「しかし」
「大丈夫だ応援は呼んで――来た!」

 男がおれの背後をみて、救いの神を見つけた様な顔をした。
 振り向くと、そこに見知った顔が三つあった。

「ネプチューン、それにあの二人は」
「ランさんとリルさんです」

 ホモ疑惑のある男と、いつも付き従っている二人の女が一緒に現われて、インクリースゴブリンの前に立ち塞がった。

「リル、ラン。いけるかい?」
「このあたしを誰だと思ってるの?」
「ネーくんのために頑張る!」

 三人はうなずきあって、まずはネプチューンが前に出た。

 それを挟みこむように、ランとリルが左右にたって、魔法陣を展開。
 片方はまばゆく輝く魔法陣、片方は黒く明滅する魔法陣。

 二人は歌うように詠唱をし、ネプチューンに魔法をかけた。

「ゴッドプレス!」
「デビルカース!」

 白と黒、二つの魔法がネプチューンにかかった。
 二つの光が彼をつつみ、背中に翼を作り出し。
 白と、黒。
 色の違う一対の翼。

 ゾクッ。

 プレッシャーを感じた、ただでさえ強いネプチューンが、更に強くなったと肌で感じる。

 ぎゅっ、って袖を捕まれた。エミリーだ。
 彼女は不安そうにおれの袖を掴んできた。

「行くよ、はっ!」

 ネプチューンが飛び出した、変哲のない、速度も大した事のない飛び込み。
 そして攻撃を放つ。直前で翼を羽ばたいて飛び上がって、まるで押しつぶすかのように手のひらを下に――インクリースゴブリンに向かって突き出した。

 ぐぐぐぐぐ……ゴブリンの体がひしゃげて行くのがわかる。
 手は直接当たってない、しかしなにか見えない巨大な力に押しつぶされようとしているのが分かる。

 グシャッ!

 音がしたあと、ゴブリンは背骨があり得ない方向に曲がって、後ろ向きに倒れた。

 着地するネプチューン、翼をしまう。

「ふぅ」

 息をついた直後、人々から歓声が上がった。
 街で暴れる強力なモンスターを始末したネプチューンを口々に褒め称えた。
 その中から一人の女の子が飛び出して、ネプチューンのそばに駆けよって憧れの眼差しで見あげる。
 緊迫した戦闘の空気が弛緩する、微笑ましい光景になった。

 出番はなかったが、大した事にならずにすんだ。
 おれは立ち去ろうとした。

「おや、そこにいるのはサトウ君。ごめんね、ぼくあそこに友達を待たせてるから」

 やべ、ホモに見つかった。
 見つかる前に逃げようと思ったんだがな。
 しかたない、適当にやりすごすか――。

「――危ない!」

 考えるよりも先に声が出た。
 ネプチューンが倒したはずのゴブリンがなんとたちあがって彼に攻撃した。

 ネプチューンはとっさに反応した。
 ゴブリンの太い腕から繰り出される攻撃をガード、そのまますっ飛ばされた。

「ネプ!」
「ネー君!」

 ランとリルが慌てて彼の元に駆け寄る――が事態はもっと悪かった。
 ネプチューンがすっ飛ばされたことによって、その場に女の子だけが取り残された。
 ネプチューンに駆け寄った女の子だ。

 その子は寝ることも出来なくて、立ちつくしたままガタガタふるえている。

 ネプチューンに攻撃され、一撃で倒されなくて更に巨大化したインクリースゴブリンが女の子を襲う――。

 パパン!

 考えるよりも先にからだが動いた。
 二丁の銃を抜いて同時に撃つ。

 撃ったのは通常弾二発――込めているのは強化弾計十発。

 途中で融合した貫通弾がゴブリンを貫通する。
 いや、貫通なんて生やさしいものじゃない。

 4メートルの巨人、その胸あとかたもなくえぐれていた!
 弾は更に飛んでいって、手前の建物の屋根をもえぐっていった。

「よ、ヨーダさん……」
「ああ……こんなに威力出るのか」

 とっさにやったことに、おれ自身おののいた。

 片方五発分の強化弾から打ち出された通常弾、そして融合した貫通弾。
 それは予想を遥かに超える威力になっていた。

 と、その時。

「「「「うおおおおおお!」」」」

 まわりから歓声が上がった。
 何事かと慌ててまわりをみると、街の人々が盛大におれをたたえていたのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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