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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

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51.街を襲う王と奴隷

 昼、買い取り屋。
 朝にアルセニックでタンポポを狩ってきたエミリーと合流して、そのエミリーが買い取りの集計をしてる間、おれは買い取り屋の中にある待ち合いスペースで彼女を待った。

 同じ買い取りに来てる冒険者達の姿を眺めて、手持ち無沙汰にしていると、横からティーカップが差し出されて目の前のテーブルに置いた。
 見あげると、それはエルザだった。彼女はおれの前にお茶をおいて、向かいにすわった。

「待ってる間どうぞ」
「お茶出るんだここ」
「ふふ、リョータさんはお得意様ですから。この一杯のお茶がきっとうちの業績をもっともっと上げてくれる様です」
「それじゃ頑張って借りまくってこないとな」

 エルザと笑い合いながらお茶を飲む。
 ちょっと驚いた、ティーパックとか、粉末とかそういう安っぽい味のお茶じゃなくて、ちゃんとした茶葉を蒸らして淹れた味だ。
 よほどいいお茶をだしてくれたんだなあ、とすこし嬉しくなる。

「そういえばそろそろ収穫祭ですね」
「収穫祭?」
「知らないんですか? シクロで一年に一度開かれるお祭りなんです」
「へえ、収穫祭ってついてるからには、モンスターのドロップと関係あるのかな?」
「はい。祭りは三日にわたって開催されます。その間、シクロの全てのダンジョンの生産物が集められて、公開される予定です」
「へえ、全部か」
「はい、全部です」
「集められた生産物はどうするんだ?」

 おれはトマト祭りを思い出した。
 おれがいた世界にある海外の祭りで、大量のトマトが街を埋め尽くし、そのトマトを使った雪合戦ぽいことをしてるのが印象深かった。

 生産物をぶつけるのかな、それとも食べるのかな。

「倒すんです」
「へ?」
「街の南に闘技場があるじゃないですか、そこに生産物を展示させて、モンスターに戻すんです。生産物とモンスター両方の博覧会ですね」
「ああ、なるほど」

 微妙に納得した、これまたこの世界らしい(、、、)イベントだ。
 街中でハグレモノ化させることに一瞬「おや?」とおもったが、闘技場の中で計画的に、しかも毎年やってるイベントだ。
 ハグレモノにした後の対処もしっかりしてるんだろうさ。

「普通の生産物はいいんですけど、レアモンスターのドロップはやっぱり集めにくいんです。だから高くなるんですよ」
「なるほど」
「後で今のところ集まってないレアドロップのリストを渡しますね」
「あはは、お茶分は働くよ」
「はい♪」

 エルザはにっこりと、花が咲いたような笑顔を見せた。

     ☆

 買い取り屋を出て、最後に合流したセレストも含めて。
 亮太一家三人、今日もテルルに向かう。

「収穫祭、そういうのがあるのね」
「セレストが前に住んでたところはなかったのか?」
「わたしが住んでたところはそういうお祭りとか一切なかったから」
「なるほど」

 頷き、納得するおれ。
 そういうお祭りがまったくない街もまああるよね。
 別段おれ達に関係のある話じゃないから、収穫祭の話は終わった。

 代わりに、考えていた話題を振った。

「新しい部屋を借りようと思う。今の部屋は2LDKで、エミリーとセレストは同じ部屋にいるけど、やっぱり3部屋はほしいと思う」
「わたしは気にしないですよ?」
「わたしも」
「うん。でもなんというか、そうしたいんだ。三人でジャガイモで稼いでるだろ? あれで三人の住む部屋を、亮太一家のアジトを借りたい」

 いうと、エミリーとセレストは互いをみて。

「そういうことなら賛成」
「わたしもです」
「よし、今日このあと上がったら早速不動産屋にでも行こう。どういうのがいいかな」
「あえてダメな部屋を提案したいわ。ダメな部屋をエミリーが神殿の如くビフォーアフターしていくのをみたい」
「その気持ちはわかる! わかるけどせっかくだしいい部屋を借りよう」
「そうね。それにそういう部屋なら出るかもしれないし」
「オバケはちょっと怖いです」

 エミリーはハンマーを持ったままプルプルした。
 物理的に巨岩をたたき割ることができても、霊的なものは怖いと見える。

「ううん、出るってのはアレのこと」
「アレです?」
「そうアレ、ゴキ――」
「やめろセレスト、それ以上はいけない!」

 慌てて止めたが、時既におそし。
 ビシッ! と空気が固まった音が聞こえた。
 おそるおそるエミリーをみた。

 その場に立ち止まったエミリー、瞳から光が消えていた。

「ヨーダさん」
「な、なんだ?」
「わたし、いざとなったら切腹するです」

 そういって、愛用のハンマーを握り締めるエミリー。

「まてエミリー、そのハンマーじゃ腹は切れない!」
「大丈夫なのです、人はできると思ったら出来るのです。あれの脅威にさらされるくらいならハンマーで潔く腹をきるです。ふふふ、そうです、今からちょっと練習するです」
「わーーーー! 待て待て早まるな――ってエミリー力強すぎ!」

 何があったのか分からなくてきょとんとするセレストをよそに、おれはハンマーで切腹しようとするエミリー(力A)を宥めるのに必死になった。
 ようやくエミリーをとめて、彼女の正気を戻らせたころになると。

「リョータさん、あれ……のことは話さない方がいいのね」

 セレストも理解したようだ。

 そんなこんなでどうにかエミリーを宥めたおれたちは、気を取り直してテルルダンジョンに向かった。

 ふと、悲鳴が聞こえた。
 男と女、いろんな人の声が混ざった悲鳴だ。
 街が急にざわめきだした。

「どうした!」
「分からないです」
「あっちから悲鳴が聞こえてくるわ」

 セレストがさしたのはダンジョンに向かう街の入り口の方だった。
 理由は、すぐに分かった。

「モンスターだ! ハグレモノがでたぞ!」

 走ってくる街の住民が大声で叫んだ。
 前の事が頭をよぎる。

 おれ達の前を冒険者風の男女が駆け抜けていく。

「バカがやらかしやがって」
「ねえどういう事なの?」
「金に目がくらんで、無理して深い階層でレア倒したのはいいけど、ダンジョンから街に戻ってくる間に死にやがったんだ」
「あっ……死体になったから、無人のアイテムが」
「そういうことだ、とりあえずにげるぞ、あれはおれ達の手にはおえねえ」
「うん!」

 ペアの冒険者はそう言って全速力で逃げていった。

「きゃあああ!」

 また悲鳴が聞こえた、今度は近い。
 声の方を見ると、なんとエルザだった。
 彼女は尻餅をついて後ずさっている。
 そんな彼女に迫ってるのはスライム。
 ピンク色の体をした、二重まぶたでまつげが長くて――顔だけ見れば美女なスライムだった。

「スライムジャーリヤ!」

 セレストが悲鳴に近い声を漏らした。
 シクロにきてまだ間もないのにもう情報をしらべたみたいだ。

 が、じっくりそれを聞いてる余裕はなかった。
 銃を抜き、装填する余裕もなくとにかくスライムジャーリヤに向かって撃った。

 左からは通常弾が飛び出して、右からは拘束弾が飛び出した。
 拘束弾はぱあっと光を放って、スライムジャーリヤを光の縄で拘束した。

 それが拘束されてる間、おれはエルザに近づき、サッと抱き上げた。

「リョータさん」
「つかまってろ!」

 エルザを抱いて後ろに飛んだ。
 入れ替わりにエミリーがハンマーを回して飛びついた、セレストが放ったバイコーンホーンの炎の弾の援護射撃つきだ。

 拘束されてるスライムジャーリヤに炎の弾が命中、エミリーのハンマーも脳天を直撃した。
 が、それで倒れることはなかった。

「はああああああ!」

 エミリーの気合が高まる、拘束されたままのスライムジャーリヤに向かって何度も何度もハンマーを叩き下ろす。
 まるで餅つきのような感じの叩き方だった。

 途中で拘束の光の縄が切れたから、サポートにもう一発拘束弾を撃ち込んだ。

 ほぼ(、、)無抵抗のスライムジャーリヤを一方的に叩き続けて十秒、ようやく倒す事ができた。

「タフだなそいつ」
「スライムジャーリヤ、テルルちか26階のモンスターだわ」
「26階!? そんな深い階層のヤツだったのか。タフなのもうなずけるわ」

「あ、あの……リョータさん」

 腕の中でエルザが声をだした。
 か細い声だ。みると顔が青白く、手が小刻みに震えている。

「ありがとう……ございます」
「大丈夫か? どこかケガは?」
「怪我はないです」
「よかった」

 とりあえずエルザはなんともないようだ。
 手を離すと自力でたてるくらいには平気だった。

「しかし、騒ぎは収まってないのはなんでだ?」
「スライムジャーリヤが26階の通常モンスターだからだと思うわ」
「え? こいつがレアじゃなかったのか」

 セレストは頷き、深刻な顔で言った。

「26階のレアモンスターはスライムスルタン、王冠をかぶったスライムだから、見た目ですぐに分かるらしいわ」
「王冠……おうっぽいって事か。そりゃ今のとは違うな、今のはどっちかって言うと王のまわりの妃って感じだった」
「そうね。でももう大丈夫だと思う」

 セレストが言うように、騒ぎが徐々に収まりつつあった。
 緊急事態を聞きつけた高レベル冒険者が次々と現われて、街のあっちこっちで戦闘が――逃げるためじゃない戦闘が始まっていた。

 遠くからでも分かる、ダンジョンの中でよく感じていた雰囲気。
 モンスターが、冒険者によって倒されて数を減らしていくあの雰囲気を感じた。

「これでもう大丈夫だな――」
「きゃあああ!」

 安堵しかけていると、更に悲鳴が聞こえた。
 エミリーとセレストと顔を見合わせ、ほぼ同時に駆け出した。
 悲鳴の方に向かって駆けていくと、そこにモンスターがいた。

 王冠をかぶったスライム、スライムスルタンだ。
 そのまわりに数名の冒険者が倒れている、こいつにやられたみたいだ。

「ヨーダさん、みんなを助けるです!」

 エミリーはそう言って真っ先に飛び出した。
 ぐるぐるハンマーを回して飛びついたと思えば、いつもの様に振り下ろさず、着地してから真横に振った。
 130センチの体を遥かに超える巨大なハンマーのフルスイングでスライムするタンを真横にすっ飛ばす。

 吹っ飛んでいくスライムスルタンを追いかけていくエミリー――いや倒れている冒険者をかばうようにして追っている。
 セレストも彼女をフォローしつつ走って行った。

「――っ!」

 歯ぎしりしつつ、二丁拳銃に回復弾を詰めてまわりの冒険者を一人残らずうった。
 あっちこっちで回復の光をはなって、危機的な状況から脱出したのを確認してから、駆け出してエミリーたちをおった。

 エミリーがピンチだった。
 スライムスルタンの下敷きになって、ハンマーで押しつぶされそうになるのを防いでる。

 セレストはバイコーンホーンで炎をうってるが、レベル1の魔法はスライムスルタンにほとんど聞いてない。

「エミリーを……離せぇええええ!」

 突進、スライムスルタンに組み付き、そのまま押した。
 そいつをエミリーの上から退かして、地面をゴリゴリえぐる様にして押していく。

 スライムスルタンを建物の壁に押しつけた、壁は半壊して、がれきがボロボロおちてきた。
 スライムスルタンは体を変形させて反撃してきた。
 ガードして後ろに飛ぶ、さっと弾を込めなおして拘束弾を撃つ。

 光った後、スライムスルタンは光の縄で拘束された。
 ただし――すぐにとけた。

「二秒も持たないか」

 ちらっと後ろを見る、セレストがエミリーを起こしている、エミリーは怪我はなさそうだが、ハンマーはスライムスルタンにのしかかられたせいで曲がっている。

 エミリーの火力は期待出来ない、おれがやるしかない。

 弾を込めなおして――連射。
 片方は全部通常弾、片方は一発目が拘束弾で残り全部通常弾。

 拘束弾が当たって、スライムスルタンは二秒ほど拘束される。
 その間にわずか一メートルの至近距離から貫通弾を撃ちまくる。

 弾倉が空になるほど撃ち尽くしたが、トドメにはいたってない。
 が、きいてはいるみたいだ。

「ならば!」

 更に装填、同じように一発拘束弾で他全部通常弾。

「うおおおおお!」

 拘束したスライムを一メートルから連射。
 拘束したまま撃ち続ける。
 拘束が解ける直前に拘束弾を更に撃ち込んで貫通弾連射。

 それを繰り返して――10セット。
 文字通り蜂の巣にされたスライムスルタンをようやく倒すことができた。

「ふう、タフにも程がある。というかまともに戦ったら大変だったぞ」

 拘束弾があって良かった、効率的に火炎弾4と回復弾2との引き換えになる拘束弾の連射で、なんとか(、、、、)危なげなくかった。

 それでホッとしてると、ハグレモノだったスライムスルタンから、ポーチの様なものがドロップされた。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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