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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

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37.エミリーにありがとう

 この日稼いだ金を懐に入れて、エミリーのところに戻ってきた。
 テントが元の場所にない――と思ったら少しだけ移動してて、ゴミに近いところに移動してた。

 テントに近づき、中に入る。

「ただいま、ほぁ……」

 中に入った瞬間ぬくもりが全身を包む。
 別に外が寒いわけではない、中が熱いとかでもない。

 ただ、温もり。
 いや、幸せだ。

 温もりと言う名の幸せが全身を優しく包む。
 テントなのに、この温もり。

「お帰りなさいです」

 それもこれも、すべてエミリーの力なんだ。
 自然と口角に笑みがこぼれて、彼女に微笑みかけた。

「ただいま、遅くなってごめん」
「そんな事ないです、お疲れ様なのです」
「何かあったのか? テントはちょっと移動したみたいだけど」
「はいです。あれからゴミを捨てに来る人がいたです。もとの場所だと離れすぎてハグレモノになっちゃうからちょっと移動したです」
「なるほど」

 軽く頷いて、テントの端っこを見る。
 さっき助けた長身の美女がまだ寝ている。

 とはいえもう顔につらさはなくてすやすやと寝てるから、とりあえずは放置しておくことにして、エミリーに話した。

「ダンジョンの、セレンの地下一階に潜ってきた」
「どうだったですか?」
「結構面白いところだとおもう」

 モンスターの特性、特定箇所を攻撃した倒したらドロップが倍になるという性質。
 それに追尾弾をつかって倒して、100%ドロップ倍で稼いできたことも話した。

 エミリーは興味津々に聞いていたけど、ふと、何かを気になったかのように小首を傾げた。

「どうした」
「ヨーダさん、追尾弾をいっぱい使ったです?」
「ああ、今日の後半は――っていうか3分の2以上追尾弾を使ったな」
「それってちょっともったいなくないです? 火炎弾二つで追尾弾一つだったと思うです」
「そういえばそんなレートだったな」

 言われて、ふと思い出す。
 ゴミから孵ったフランケンシュタインの一番効率的な倒し方が火炎の融合弾だ。
 火炎弾自体出荷箱を使ったやり方でゲットする、ゾンビを二体倒して一発だから、ゾンビ四体で追尾弾一発という計算だ。

 もちろん、全部のモンスターは素手で倒せる。
 弾換算なのはなんやかんやでわかりやすいというだけ。

 その計算でだと、確かにエミリーの言うとおり「もったいない」かも知れない。

「いいんだ」
「いいです?」
「ああ、エリクサーはとっておかない主義だからな。あそこは追尾弾が一番効果的、だから使う」
「エリクサーは分からないですけど……分かったです」

 エミリーは頷き、納得した。

     ☆

「セレストと申します」

 気がついた長身の美女が名乗った。
 テントに正座して、上品な所作でこっちを見つめながら名乗った。

 と、思いきやなにかそわそわしている。
 不思議そうな、困ったそうな顔をしてテントの中をちらちら見ている。

 何に困ってるのか手に取るように分かる。

「彼女の、エミリーの特殊能力だ」
「ふぇ?」

 紹介された本人――エミリーの方が素っ頓狂な声を上げた。

「ボロアパートだろうと新築だろうと、テントだろうとこんな風に神殿のごとき神々しく温かい場所に変えてしまうスキルの持ち主だ」
「なんと! それはすごい!」
「そそそそそんな事ないのです! わたしは普通にお掃除とお片付けをしてるだけです」
「分かってる分かってる」

 腕組みして、うんうんとわざとらしく頷いた。

「天才っていうのは自分がもってる才能を普通だと言うような人種なんだよな」
「えええええ!」
「わかります! 才能のある人は自分が才能を持ってるなんて微塵も思ってないですね」
「そうそう、『え? それ普通だよ?』っていうんだよな」
「そして『なんでみんなできないの?』と逆に困るのですね」
「だよな!」
「ううぅ……」

 エミリーはものすごく困った顔をした。
 やがて顔が真っ赤になって。

「お、お茶入れてくるです」

 といってテントから逃げ出してしまった。
 かわいい。

 エミリーがいなくなったあと、テントの中に残ったおれとセレスト。
 彼女はおれを見つめて、改めて、深々と頭を下げた。

「休ませてくださって、本当にありがとうございます」
「あたり前の事をしたまでだ。それよりもなんで一人でゴミの処理をしてたんだ? 処理が間に合わなくなるくらいじゃもっと増員しないとだめだろうに」
「最初はわたし一人で間に合っていたのです。それが税の優遇が終わりそうだという情報が流れて、最後の一稼ぎと冒険者がここ数日爆発的に増えて、それで」
「なるほど」

 多分シクロとヘテロのダンジョン協会の取り決めの話だな。
 どっちの街の管轄下になるってきまったら当然そっちの街が買い取りの時の税金を取るようになるから、それまでに稼ぎたいんだろうな。

「そうだ、わたしどれくらい寝てましたか」
「半日くらいかな、もう日が暮れてる」
「いけない」

 セレストはテントから飛び出した。
 テントからちょっと離れたところ、おれ達の存在でぎりぎりハグレモノにならないところに早くもゴミの山が積み上げられていた。

 軽くトラック数台分はある。
 半日でこんなにふえるのか、ってちょっと引いた。

「やっぱり増えてましたね」
「そうだな」
「すみません、ちょっと片付けます」

 頷く。
 特殊弾的にちょっともったいない気もするけど、まあ仕方ない。

 セレストはゴミの前に立って、足元に魔法陣を広げた。

「おっ!?」

 思わず声が出た。
 彼女が広げた魔法陣は出会った頃に比べて大きくて、魔力の光で輝いていた。

 セレストが手をかざす、青白い炎がゴミ野山を包み込み――一瞬で灰にした。

「ふう……」

 すごいな、魔力がそんなに高い人だったのか。
 と思っていると、セレストは身を翻し、スタスタと離れた場所にいるエミリーに向かっていき、おもむろに頭を下げた。

「ありがとう、あなたのおかげです」
「ふぇ!?」
「テントで休ませてもらったおかげで、魔力が普段以上に回復出来ました。本当にありがとう。あなたはすごい人だ」
「わ、わたしは普通に――」

 エミリーをほめられて、何故かおれも嬉しくなった。
 130センチでパワーAであのハンマーを振り回すのもすごいけど。

 それ以上に、かれは彼女のつくった家の温もりを。
 テントだろうが容赦なく幸せなぬくもりを持たせる彼女をすごいと思っている。

「うんうん、エミリーのおかげだ」
「ふぇええええ!?」
「エミリーのおかげで、一人じゃみんなのゴミ処理が追いつかないセレストができるようになった。エミリーはみんなの生活を支えてるんだ」
「そ、そそそれは言い過ぎなのです」
「言い過ぎなもんだ」
「わたしもそう思います。今すぐみんなにあなたの事を話して回りたいくらいです」
「やめてくださいです、そんな事をされたら死んでしまうです」

 おれとセレストの持ち上げ合戦にエミリーは茹でタコのように真っ赤になった。
 それでもおれたちは構わず、彼女にありがとうと言いまくって、結果的におろおろさせまくってしまうのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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