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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

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33.ゴミとリサイクル

 シクロダンジョン協会からの帰り道。
 歩きながら指を折って数える。ダンジョンに持っていく必要な荷物を考えた。

 銃弾は必要だ。通常弾は適当に補充可能だが、ニホニウムでしか生産出来ない特殊弾は多めに持ってった方がいい。
 そのほかも魔法カートは必要とか、着替えはどれくらい持っていくかとか。

「なんか出張の準備みたいだな」

 そう思ったら笑いが出た。
 会社に入った直後、まだ激務にやられてない頃の、最初の出張に行ったくらいの時期の気分を思い出した。
 ちょっとした旅行気分、修学旅行みたいな感じでわくわくしたっけな。

 あたらしいダンジョンへの出張、ちょっと楽しみになってきた。
 ――が、おれはある事を思い出す。

 このままシクロを離れて新しいダンジョンに行くというのは、まるで。

「単身赴任みたいじゃないか……」

     ☆

 月15万ピロの家賃、2LDKの新居。
 いつもより早めに帰宅したおれは、エミリーにダンジョン長からの依頼を説明した。
 新しいダンジョンが出来て、その下調べを依頼された事を事細かに説明した。

「すごいですヨーダさん、ネプチューン一家と同じです」
「そういえばニホニウムの時がそうだったっけな」

 あの時はまだネプチューンにも出会ってなくて、噂で話を聞いただけだ。

「はいです、それと同じです。ダンジョンの調査を任せられるのはすごいことなのです」
「ダンジョンが全てをドロップする世界だからな」

「分かったです」

 エミリーはニコニコ顔で、可愛らしい手で小さな胸を叩いた。

「ヨーダさんがいない間ちゃんをお留守番してるです」
「いや、一緒に来てほしい」
「え? 一緒にですか?」
「ああ」
「でもわたし、お役に立てないですよ?」
「そんな事はない。エミリーに一緒に来てほしい」

 目をまっすぐのぞき込んで、言った。
 彼女を置いて一人で行くのはいやだと思った。
 その気持ちを込めてエミリーを見つめる。

 見つめ返される。驚きの後、エミリーはふっと微笑んだ。
 穏やかに微笑みながら、はっきりと頷いた。

 こうして、新しいダンジョンにはエミリーと二人で一緒に行くことになった。

     ☆

 次の日の朝、おれとエミリーは早速旅立った。
 シクロの街を出て、もらった地図を頼りに、新しいダンジョンにむかった。
 おれは魔法カートを押して、エミリーは自分のハンマーとでっかいリュックを担いでる、いつも通りのスタイルだ。

 そのエミリーはさっきからずっとニコニコしてる。

「楽しそうだな、なんかいいことあった?」
「ヨーダさんと一緒のお出かけです、すごく楽しいです」
「そうか」

 誘ってよかった、とおれは思った。
 こうしてニコニコしてるのを見られただけでも誘ったかいがあったってもんだ。

 それはいいんだけど――と、まわりを見回した。

 シクロを出ると景色はすぐ様一変した。
 街の中は人も多く賑やかで、それなりの街というか都市って感じだったんだが、それから離れて十分も歩かないうちにもう完全な荒野だ。

 何もない、枯れ木すら存在しない文字通りの荒野。

「なにもないなあ……」
「あったら大変なのです」
「え?」
「何かあったらハグレモノになってしまうですよ? ハグレモノにならないのは空気と水と大地だけなのです」
「……ああ」

 さらっとものすごい事をいわれた。
 そう、この世界のものは全てダンジョンドロップから生産される。
 そしてダンジョンでドロップされたものは人のいないところに放置されるとそれをドロップしたモンスターに戻ってしまう。

 つまり、こういう人のない荒野は何かがあるとモンスターになってしまうから、常時何もないのだ。

「いざって時の山小屋とか作れないなあ、この世界だと」

 今更ながら、すごい世界に飛ばされてきたなあ、という気持ちになった。

     ☆

 丸一日歩いて、夕方になった。
 そろそろつかれてきたから、川のそばで野宿をする事にした。

「準備するです」

 エミリーはリュックを下ろして、中からテントをとりだして、慣れた手つきでテントを張りはじめた。
 おれと出会うまではサバイバル生活をしてたから、ものすごく手慣れたものだ。

「ヨーダさん、水を汲んできていいですか?」
「わかった。……魔法カートは使えるか?」
「大丈夫です」

 おれは頷き、魔法カートを押して、川に向かった。
 川の水を魔法カートに汲んだ。

 川を眺める、ものすごく綺麗な川だ。
 何もない、魚も草も何もない。

 きっと魚もダンジョンドロップだから、川にはいないんだ。
 ……やっぱりものすごい世界だなあ、と改めて面白いと思った。

 水を汲んで戻ってくると、テントが完成していた。

「エミリー?」
「中にいるです」

 魔法カートを置いて、テントの中に入った。

「って何これ!」
「テントですよ?」
「家のリビングとほぼ同じじゃないか!」

 おれは盛大に突っ込んだ。

 テントの中は実にエミリーらしかった。
 自宅と同じ、はいった瞬間暖かさと優しさを感じさせた。
 一方で、中はものすごくテントらしくなかった。

 まるで異次元かなんかの不思議空間に思えるほど、テントの中はまるで自宅のようになっている。

 テーブルがあって、ソファーがあって。
 壁にはランプが掛けられてて、本当に自宅のリビングって感じだ。

「こんなのどうやって」
「リュックに詰めて持ってきたです」
「あのリュックに!?」
「重かったのです」
「そういうレベルじゃないだろ。ピカピカだし、ふかふかだし。これ絨毯なのか?」

 床は外の荒野からはまるで想像出来ないようなふかふかだった。

「頑張ったです」
「頑張ってどうにかなるレベルじゃないだろこれ」

 唖然としたが、エミリーはキョトンとしていた。
 あたり前の事をやっただけなのに、って顔だ。

 驚いたが、エミリーらしいと思った。
 自宅も暖かさと温もりとたまに神殿のような神々しさを出すエミリーだ、テントを自宅のリビングっぽくするのはどうって事ないかもしれない。

「次はご飯を作るです」
「ああ」

 おれは深く考えず、エミリーが設置してくれたテントでくつろごうと思った。

     ☆

 エミリーの温かい夕飯を食べたあと、お茶を飲んで一息ついた。
 野宿のはずなのに、食事までもがいつもと一緒だ。

 まあ、こっちはダンジョンの中で食事を振る舞われた事も何回かあったから、驚きには値しないけど。

「食後のアイスクリームです」
「限度ってもんがあるだろ!」

 そっと出されたデザートには突っ込んだ。
 突っ込むが、そのまま食べた。

「お、美味しいなこれ。甘さ控えめであっさりしてる」
「柚のアイスなのです」
「うん、美味しい」

「ヨーダさんはこのままやんでてくださいです。わたしはゴミ処理してくるです」
「ああ……って処理?」
「はい、処理ですよ?」

 ……。
 その言い回しにちょっと引っかかった。
 ゴミ捨てじゃなくて、ゴミ処理。

「ゴミをどうするんだ?」
「頑張って燃やすです。街にいるときは業者さんが処理してくれるですけど、こういうときはちゃんと燃やさないとモンスターになるです」
「ああ、ごみもそうか」

 よく考えたらそうだよな。
 人間の生活では、物資を完全に使い切ることはほぼない、必ず何かしらゴミを出してしまう。

 全てのものがダンジョンドロップするこの世界で、物質は放置されたらモンスターになる。
 ならば、ゴミも同じって事だ。
 消滅させないとモンスターになる。
 はじめて知ったけど、よく考えたらあたり前の事なのかも知れない。

「手伝うよ、燃やすんだろ」

 そう言って、銃を取り出した。
 火炎弾の事を知ってるエミリーは笑顔になった。

「ありがとうです!」

 おれ達はテントの外にでた。
 明るくて温かいテントの中と違って、外は寂れた荒野、まるで別世界だ。

 そこに今日出したゴミを置いて、離れて銃を構える。
 火炎弾を撃った、ゴミは燃えだした――が。

「ほとんど燃えないな」
「ゴミは処理が大変なのです」
「そのセリフだけなら普通なんだけどな」

 目の前の光景はおれには普通じゃないけど。

 もう一丁の銃を取り出した。
 今度は火炎弾を同時に撃って、融合弾でゴミを燃やす。
 直視するのがつらい程の明るい炎で、ゴミは燃やされていった。

「これで大丈夫です」
「ああ」
「ゴミってモンスターになっちゃうと大変なのです。ゴミなので元のモンスターとは違うしすごく強いのです」
「それは大変だな」

 ゴミの不法投棄とかあったら大変な問題になるな、いや、きっとそれもあって、そこそこ問題になってるはずだ。
 融合弾の炎でようやく燃やせるくらい処理が難しいのなら、ズルしたり事故が起きたりする事はあるはず。
 この世界のゴミ問題は意外と大問題かもしれないな。

 ……待て。

「エミリー、今なんて言った?」
「はいです?」
「ゴミは元と違うモンスターになる?」
「はいです。それがどうしたですか?」
「そいつのドロップはどうなるんだ?」
「ないです? ハグレモノ――あっ」

 言いかけて、ハットするエミリー。
 彼女もようやく気づいたようだ。

 ハグレモノは何もドロップしない、ただし、おれをのぞいて。
 おれが倒したハグレモノはアイテムをドロップする。

 ならば、ゴミから生まれた元とはちがうモンスターだと?

     ☆

 エミリーに夜食を作ってもらって、ゴミを出した。

 そのゴミを遠くに、荒野のど真ん中において、離れてじっと待った。
 10分くらい待ってると、ゴミが光って、モンスターに変化した。

 人型だった。
 緑の肌にツギハギだらけの皮膚、首に釘のようなものが打ち込まれている男のような姿。

 一言で言えば――フランケンシュタインだ。

「牽制するです」

 エミリーはそうって、ハンマーを担いで飛び出した。
 フランケンシュタインに飛び込んで、ハンマーを真上から振り下ろす。

 フランケンシュタインはのそのそと腕を振って、ハンマーを迎撃した。
 鈍い、しかし巨大な音が響いた。

 エミリーのハンマーは完全に止められた。
 岩のモンスターをドッコーンドッコーン砕いていくハンマーが事もなさげに止められた。

「エミリー、下がれ」
「はいです!」

 本人もまずいと思ったのか、着地するなりすぐに後ろに飛んだ。
 フランケンシュタインは追撃する、銃を撃って足止めする。

 通常弾はあまり効かなかった、マミーと同じだ。
 火炎弾はちょっと燃えただけですぐに消えて、冷凍弾は一瞬だけ氷ってすぐに溶けた。

 銃弾を何発も撃ったが、単発じゃほとんど効果がなくて、フランケンシュタインはのろのろとエミリーに向かって前進する。

「エミリー、もう一回打ち込め」
「はいです!」

 応じるやいなや、突進の勢いもつけてハンマーをたたきつけるエミリー。
 またも互角、フランケンシュタインは力Aの巨大ハンマーと同等の力をもっていた。

 が、ちゃんと止まった。
 その一瞬のすきをついて、おれは拳銃に全部火炎弾を込めた。

 フランケンシュタインに向けて火炎弾を連射、一発をのぞいて全部融合弾になった。
 ツギハギだらけの皮膚が炎上した、融合の火炎弾の炎は消えずに、フランケンシュタインを燃やした。

 やがてそのからだがぼろぼろ地面に崩れて、灰にされていった。

「ありがとうです」
「ここまで手ごわいのは予想外だ」

 おれとエミリーの夜食分のゴミでこんなに強いモンスターになるのは本当予想外だった。
 この世界のゴミ問題は割と死活問題なのかも知れないな。

 まあそれはそれ、ゴミはしっかり処理すればいい話だ。
 それよりも今はドロップだ。

 期待しながら待っていると、フランケンシュタインは完全に消えて。
 金色の、今までに見た事のない弾丸が一発だけドロップされた。

 その見た目と一発だけという結果に。
 弾丸の効果をいやでも期待してしまうのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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