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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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202/215

202.水と空気

「ヨーダさん、お客様なのです」

 夕方、仕事も終わって、アウルムをダンジョンからつれて帰ると、転送部屋の前で待ち構えていたエミリーがそう告げてきた。

「客? また何か起きたのか?」
「多分大丈夫なのです、何も起こってないと思うのです」
「うん? やけに言い切るな。相手から話を聞いてるのか?」
「みればわかるのですよー」

 エミリーは太陽の様なニコニコ笑顔で言った。
 みれば分かるって……まあどのみちあうけど。

「相手は?」
「サロンにお通ししてるのです」
「わかった」
「なんか面白そうな話ね、あたしも――」
「アウルムちゃんはこっちなのです」
「え? ちょっ襟引っ張らないで――」

 ついて来ようとしたアウルムはエミリーに引っ張られていった。
 ダンジョンの精霊の一人でかなりすごい存在なのだが、純パワー型のエミリーになすすべもなく引っ張られていった。

 エミリーはアウルムを彼女の部屋に押し込んで一緒に入り、ドアを閉める前にこっちにウインクしてきた。
 どういう事なんだ……?

 訝しみつつ、俺はサロンに向かった。
 サロンの中にいたのは久しぶりに見た顔だ。

「マーガレット。久しぶりだな」
「お久しぶりですわ」
「今日はなんかようなのか? ……って、よく見たらそれドレス? どこかのパーティーにでもでるのか?」

 マーガレットは普段見る姫鎧の姿じゃなく、純粋なドレス姿だった。

「いいえ。お誘いに来ましたの」
「誘い?」
「はい、そ、その……」

 マーガレットは言いよどんで、深呼吸して覚悟を決めた顔で。

「で、デートをしてくださいませ」

     ☆

 馬車の中、俺はマーガレットを向き合って座っていた。
 マーガレット、最初にあったときに比べて大分空気が変わった。
 纏ってる空気というか、雰囲気というか。
 それが大分いい風に変化していた。

 天蓋付きで外の景色が見れる馬車で、俺はそんな彼女と向き合いながら、夕暮れのシクロの街中を進んでいた。

「何処に行くんだ?」
「それはついてからのお楽しみですわ」
「そうか。で、普通にデートなのか?」
「ええ、純粋にデートですわ」

 マーガレットは微かに顔を赤らめて、微笑みながら言った。

「あなたの噂はすべて耳にはいってますわ。そういうのではありませんの。今日は純粋にわたくしとのデート」
「そうか、それは光栄だ、あのマーガレット姫とデートできるなんて」
「え?」
「俺も噂は聞いてる、マーガレットの活躍を。冒険者としても大活躍だし、最近じゃ空気の値段もウナギ登りらしいな」
「あっ……」

 マーガレットは嬉しそうに、更に頬をそめた。

 マーガレットの空気箱。
 ドロップしたアイテムを即座に封入し、生産者――つまりモンスターにトドメをドロップさせた人間の顔を写真にみたいにする箱。
 マーガレット生産の空気は前から一種のファンアイテムとして売れていたが、最近は更に売れる様になったらしい。

 それも本来の客層、男だけではない。
 女もそれをかうようになった。

 ただの空気じゃなく、ファビュラスな香り付きだって事で、聞くところによるとアロマ的な使い方をされてる。

 その事を知っている……と言ったらマーガレットはものすごく嬉しそうになった。

「うん? なんだあれは」

 ふと俺は馬車の外、街に見えたある店がきになった。

「あれとは?」
「ほら、あの店だよ」
「あれはウォータースタンドですわ」
「ウォータースタンド?」
「ええ、その名の通り水を売ってる店ですわ」
「そんなのがあったのか」
「……ふふ、最近出来ましたのよ。あなたはそれをしりませんのね」
「どういうことだ?」

 聞き返すと、マーガレットはクスッと微笑んだ。

「ラト」
「はっ」
「うおっ!」

 俺は盛大に驚いた、びっくりしすぎて馬車の中でのけぞった。
 今までどこにいたのか、マーガレットに呼ばれて、あの四人の騎士の内の一人が現われた。
 彼は馬車の外で並走している。

「ど、どこから現われたんだ?」
「我ら姫の忠実なる僕、いついかなる時でも召喚あれば即参上可能な場所にいる」
「常にそばにいるって事か? それでいいのかマーガレット」
「???」

 マーガレットは首を傾げた。
 いやプライバシーとかそういうのとか……って言おうとしたけど本気で分かってないみたいだからやめといた。

 マーガレットは理解してなかったが、ラトと呼ばれた騎士は正しく理解した。

「我ら姫の為に特殊な鍛錬を積んでいる。姫の呼ぶ声だけが聞こえて、姫が見せたいものだけ見れる様になっている」
「何それ怖い!」

 いやすごいけど、すごいけど怖い。
 それ忠誠心? 信者とか入ってるような気がするぞ。

 前からこの騎士達は結構すごいというか突き抜けてた様なきがするけど、更に突き抜けてしまった感じだ。

「それよりもラト、説明を」
「はっ。ウォータースタンド、ここ最近出来た商売でございます。元を正せばサトウ様のせい、というのが大多数の見解です。
「え?」

 俺のせいで? どういう事だ?

「サトウ様がたびたび事件に介入したおかげで、このシクロから不条理な事は徐々に減り、ダンジョンの生産量がグングン上がっております」
「俺のおかげかはともかくとして……それっていいことなんじゃないのか」
「シクロは農業都市、植物の生産量は上がりました。一方で、水が慢性的に不足しがちに陥っております」
「……え?」
「ダンジョンの生産効率が上がれば、はずれ(、、、)の水が相対的に減る事になります」
「……ああ」

 なるほどそういう事か。

 この世界に来た直後にエミリーから聞かされた話を思い出した。
 あらゆるダンジョンに共通することだが、規定のものがドロップされないとき、tまり外れの時は水か空気がドロップされる。

 つまり水・空気と野菜とかの生産量は反比例する事になる。
 俺が色々やって、ダンジョンの生産量があがって税収が増えた、その煽りを食ったのが水だ。

「希少になったから……金銭的な価値が出てきた?」

 ラトは頷いた。

「ということですわ」
「それは知らなかったな……」
「さすがですわ、あなたにかかれば水さえも高くなってしまうのね。しかもいい形で」
「まあ、商売の形になってるみたいだしな」

 この形なら、今までダンジョンに入れなかったFファイナルのもの達も稼ぐ新しい可能性が出てくる。
 仕事と商売の可能性が増えればその分金が回る。
 金が回るのはいいことだ。

「しかし、よく考えたら似たもの同士だな、俺たち」
「え?」
「マーガレットは空気、俺は水。二人して元々価値のなかったものに価値をつけてる訳だから。ステータスも似てるしな」
「……だって真似をしてるんですもの」
「え? 今なんていった?」

 小声で聞き取れなかった。

「いいえ、一部の空気よりもほとんどの水に価値をつけたあなたの方がよっぽどすごい、そう言ったのですわ」
「そうか」

 マーガレットにそこまでほめられて、悪い気はしなかった。
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