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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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186.空の器

 パァン!

 鉄の扉を蹴破って、中に突入する。
 まさに何かをしている最中だった。

 フード付きのローブ……魔法使いの様な格好をした男が何人もいて、それが一つの魔法陣を取り囲んでいる。
 魔法陣は長い周期で明滅をくり返し、その上に一人の子どもが寝かされていた。

 みた感じ五六歳の、小学校に上リだての男の子、それが全裸で魔法陣の上に寝かされている。
 何をしているのか理解できない、しかしいいことをしているようには到底見えない光景。

「なんだお前は――ガフッ」

 無言で踏み込んで、男のボディにパンチを放つ。
 男は胃液をはきだして、そのまま崩れ落ちた。
 周りにいた男達は俺に向かって手をかざして、魔法陣を出して呪文を詠唱した。

 反応が遅すぎる。
 俺は次々と男達に肉薄して、全員をワンパンで沈めた。

 男達が倒れた後、セルが部下を引き連れてやってきた。

「待たせてすまないサトウ様……これは!?」

 セルは魔法陣と寝かされている男の子を見て表情を変えた。

「これがなんなのか分かるのか?」
「魂を肉体から切り離す為の魔法陣だ」
「魂を肉体から?」
「ああ」

 重々しく頷くセル。
 魂を切り離す……ますますよくない話になった。


 レイアの一件。
 彼女の事をセルに話して、彼女を作り出す元凶を探ってもらった。
 セルはすぐにそれを見つけ出した。
 彼女を作った一味のアジドを知った俺は、セルの協力でここに突入した。

 そうして目にしたのは、予想の斜め上の光景だ。

「……この子はまだ大丈夫だ」

 男の子の横でしゃがんだセルはホッとした表情で言った。
 俺もホッとすると、奥から人が飛び出してきた。

 今倒した魔法使いの様な連中と違って、荒事に慣れてる様な連中だ。
 おそらくは用心棒。

「サトウ様、ここは余に任せて奥へ――」

 セルがそう言って、彼の背後にくっついてきた部下が戦闘態勢で前に出ようとしたが。
 それよりも先に、俺が用心棒達を瞬殺した。

 都合四人、全員に最大火力の無限雷弾を連射して沈めた。
 男の子とレイアの関連性に「もしや」と思った俺、怒りがふつふつと湧いてきて、任せるのも腹正しくて連中を瞬殺した。

「……行くぞ」
「……うむ」

 セルとその部下を引き連れて施設の奥に向かってどんどん進んで行く。
 途中で更に用心棒が出てきたり、魔法使い風の男が出てきたが、全員瞬殺して先に進んだ。

 こんな量産型のその他大勢じゃない、いるはずだ、統括したり全てを知っているヤツが。
 進んで行くと、それまでにない一番大きな部屋に来た。

 部屋の中心に女が一人いた。
 大人の女、しかし生身ではない。

 一目で人工生命体と分かる見た目で、上半身だけの状態。
 それがハンガーのようなものにかけられている。

「な、なんなんだお前らは」

 それの向こうに一人の男がいた。
 格好は今までの連中と違う、ローブに金糸での刺繍がついたり装飾が施されてたりと、あきらかに上位な人間の格好だ。

 戸惑う男に一瞬で踏み込んで、喉笛を掴んで壁に落ち着ける。

「ここの責任者か」
「お前なにも――」
「責任者かって聞いている」

 力をちょっと強めた、男は苦しそうに頷いた。

「外にあったあの魔法陣はなんだ?」
「お、男の子を治療――あがっ」

 もう一度力を加えて締め上げて、ドスの効いた声で聞く。

「ナヤミレイア」
「――っ!」
「正直に話せ、さもなくば」

 空いてる手をゴキッとならして、喉笛を掴む手にもう少し力を込めた。

「わ、わかった……は、話す、話すか、ら……」

 手を少し緩めてやった。

「た、魂を取り出していたのだ」
「それは知っている。何でそんなことをした」
「取り出した魂をあれにいれるんだ……調整した人間の魂を使った方がコントロールしやすい」
「何で事を」
「……貴様今、調整した、といったか」

 セルの指摘に思わず息を飲んだ。
 調整した人間の魂……まさか。

「どういう事だ!」
「ぐはっ! き、喜怒哀楽は道具にはいらない。だから取り出した魂からそれを除いて、アレにいれるようにしてるんだ」
「喜怒哀楽……」
「……道具にするには、か。道理ではある」

 レイアの事を思い出した。
 彼女の感情が希薄なのは作られたからだって思っていたけど、そうじゃなくて、元の魂から喜怒哀楽の感情を取り除かれたからだったのか。

「取り除いた喜怒哀楽はどうした」
「不要だから、廃棄――ぐはっ!」

 力任せに男を壁にたたきつけた。
 頭をしたたかに打ち付けた男は気を失い、ずるずると崩れ落ちていった。

「セル……」
「皆まで言わなくてもよい。余も久方ぶりにはらわたが煮えくりかえっている。表に出てこない輩もまだいよう、そやつらも逃がさぬ」

 振り向いたセルは落ち着いている表情だが、目がすわっていた。
 彼に任せれば後は――と分かりつつも言わずにはいられなかった。

「二度とこんな研究が出来ないようにしてくれ」

     ☆

 研究施設を出て、サメチレンの街に戻る。
 怒りが収まらない。

 最初は研究を止めるだけのつもりだった。
 セルに協力してもらって、これ以上レイアの様な望まれない命が生まれてこないように、よしんば生まれてきても不要扱いで自決させられるような事にならないように。

 そのために、俺は突入に同行した。
 それが、こんな事になるとは。

 そんな気持ちのまま、アジド代わりの宿に戻って、待たせたレイアと合流した。

「お帰りなさい、マスター」
「……ああ」
「マスター。怒ってる……と、悲しい?」
「え?」
「マスターが怒ると、私も怒る。マスターが悲しいと、私も悲しい」
「それって……」
「マスターの気持ちが……ここに直接流れ込んでくる」

 レイアは自分の胸に手を当てて、言った。
 何となく思った、それは「ない」からだ。

 欠落した魂、喜怒哀楽がないから、空のそこに俺の感情がするっと入っていくんだ。

 他人の気持ちがわかる、なんて言葉があるが、それが最悪の形で実現したのをみている様な気分だ。

 だけど、それなら。
 空になったそこに俺の気持ちが入っていくのなら、なおのこと怒りや哀しみで満たしちゃだめだと。

 俺は気持ちを切り替えた。

「あっ……マスターの気持ちが」
「ダンジョンいくぞ。ガンガン稼いで、今夜は美味しいもの食べよう」
「はい、お伴します」

 俺の前向きな気持ちが伝染したのか、レイアの表情が少し明るくなった。
 そんなレイアを引き連れて、俺はいつもの様にダンジョンに向かった。

 気持ちを明るく、彼女に楽しいと嬉しいが伝染することを考えて。

     ☆

 佐藤亮太は人間である。
 人間であるから、「損傷」に対して「非可逆」という考えを持ってしまう。

 腕を失えば戻らない、足を失えば戻らない――魂を失えば戻らない。
 そういう考えが染みついてる、人間だ。

 しかし世界は必ずしもそうではない、破壊された、損傷したものが復元しないのかと言われれば、そんな事はない。
 ミミズやヒトデ、損傷したら元通りに再生する生き物も確かに存在する。

 そして魂もまたそうであった。

 もともと感情とは「生まれる」「芽生える」ものだ。
 一度失ったからといって戻らないという事では決してない。

(ご主人様……ありがとう)

 ナヤミレイア――改めレイア。
 亮太の強い気持ちで満たされた彼女の胸の中に小さな、暖かな感情が芽生えていた。
 それにあまりにも小さすぎて、亮太も、そして本人もまだ気づいていないが。
 それは確かに存在し、少しずつ育っていた。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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